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禁断の海2

「海、舐めてた!! 超なめてた!!」

「まさか海に入って腰まで浸かった瞬間、人化が解けるとは思わなかったよね~」


 海に入った瞬間、海水の冷たさにびっくりしたボクは慌てて海から上がろうとした。

 その時、心身に多大な負荷がかかったらしく、人化が解けて妖狐の姿になってしまった。

 さすがのボクもびっくりだ。


「まさか海に入ったことがないのが災いするとは思わなかったね~。そう言う私も小さいころに同じことがあったから人のこと言えないけどね」


 ボクの「ひゃぁっ!?」という悲鳴を聞いて真っ先に駆けつけてきたのは狐塚さんだった。

 それからずれてしまった水着のお尻の部分を確認しつつ、「これは上がったら即席で穴をあけたほうが良さそうだね」とだけ言い、ボクに付き添いお父さんたちの元へと戻ってきた。


 お父さんは笑いながら「ははは、大変だったね。でもゆかりちゃんの言う通り誰もが通る道だからね」とだけ言い、お母さんは「あらあら、すぐに作り直さないといけないわね~」と言い、ニコニコしながら即席の更衣室をその場に作り始めた。

 

 それを見た狐塚さんは「もう、それなら最初から教えてあげればよかったんです!」とボクの代わりに怒ってくれたのだった。


「ありがとね、狐塚さん」

「いえいえ。それはそうと、名前で呼んでくれていいんですよ? なんだか余所余所しく感じてしまうので」


 ボクに付き添う狐塚さんは、やや照れたようにボクにそう言ってくる。

 そう言えば、前の呼び方が定着したままだったっけ……。


「えっと、ゆかりちゃん?」

「はい、昴ちゃん!」


 ボクがそう呼ぶと、ゆかりちゃんはとても嬉しそうに微笑んでくれた。

 やっぱりゆかりちゃんは優しい。


「ゆかりちゃん、みんなと遊んできていいよ? ボクはこの通り、下半身にタオル巻いて寝ころんでるだけだからさ」

「いえいえ。もし風で捲れちゃったらこまるでしょ? だから私も傍に居てあげようかなって思ったんです」


 今のところ風が当たらないようにお母さんが即席の衝立のような物を用意してくれている。

 なのでタオルがめくれるようなことにはならないのだけど、それでも心配なようでゆかりちゃんはボクの側から離れようとはしなかった。


「ある程度乾いたら、尻尾に保護液塗らないととだめだからね? ぬらりひょんさんのお店で取り扱ってたのは買ってるよね?」


 ゆかりちゃんが心配そうに覗きこみながらボクにそうアドバイスをしてくれた。

 すっかり忘れてたけど、カバンの中に入っていたはず。


「えっと、たしかカバンに……「取ってくるね」。あ、うん。ありがとう」


 ボクがそう言うと、すぐにゆかりちゃんは動き出し、ボクのカバンからケア用品一式を取り出し持ってきてくれた。

 日焼け止めから塩で傷まないようにする保護液、尻尾用リンスなどなど。


「あっ。これ、ぬらりひょんさんがこっそり売ってた新商品のケア用品だ。これを使うと尻尾を海水に浸けても痛まなくなるらしいよ? 事前に使っておけば事後に使う必要はないとかって」

「そうなの!?」

 

 知らなかった……。

 尻尾用のケア用品は全部後で使うものだとばかり思いこんでいた。


「ほら、ここにも書いてある」


『海水やその他、毛が痛む恐れのある場所に行く前に使うことで、毛を『八時間』ダメージから守ってくれます。事前に使わず事後に使った場合、一日に受けたダメージをゆっくり回復していきます。おやすみ前などに使用されると朝にはすっきり回復していることでしょう。なお、本製品は事前に使われることをおすすめします』


「本当だ……。説明書読まないせいかまったく気が付かなかった……」


 買うだけ買ってカバンの中に突っ込んでおいたボクは、そこに書いてある説明を一切読んでいなかった。

 なので、こんなことが書かれているとは全く知らなかった。


「どうせ尻尾出すことはないって、高を括ってたんじゃないの? ちゃんとケア用品最初に使わないからこうなるんだよ? ほら、そろそろいいはずだからお尻出して」

「えぇ!?」

「えぇ!? じゃないよ~。お尻出してくれないと根元から塗れないでしょ? 自分じゃ上手く出来ないだろうからやってあげる」

「ちょっ、まって!!」

「待たない。メルさん、周りから見えないようにお願いしますね」

「任せて。丁寧に塗ってあげてね」

「はい!」


 ゆかりちゃんはそう言うと、ボクの下半身に巻かれているタオルを取り外し始めた。

 周囲は見えないように保護されているので、中では何が行われているかは見えないだろう。

 とはいえ、こっちからは外が見えるわけで、正直恥ずかしいどころの騒ぎじゃない。


「小柄な昴ちゃんだけあって、お尻小さいね」

「うぅ~。外気に晒されてスースーする……」

「あはは。まぁ外でお尻丸出しにする状況ってどう考えてもないよね~」

「縁ちゃんのビキニ、波に攫われて流されちゃえばいいのに……」

「それは冗談にならないよ!?」


 ゆかりちゃんは丁寧な手つきで尻尾の乾燥具合を確かめている。

 時々タオルを押し当てたりしているので完全に抜けきってはいないんだろうけど……。

 それでも尻尾を触られるのはこそばゆいので、なんだか困るけどね。


「まぁこれくらいならいいのかな? うん。本当は薬液に浸す方がいいんだろうけど……。宿にも薬湯あるみたいだからそれを使うしかないね。でもよかったね。まだ午前中で」

「薬湯か~。ここにも尻尾湯ってあるのかな?」


 今日はちょっと豪華な和風の宿に泊まることになっている。

 妖種の利用者も多いらしく、宿前の浜辺では、たくさんの妖種が海を楽しんでいる。


「ここの宿はぬらりひょんが経営しているんだよ。女将はぬらりひょんの娘さんだね。妖種のための宿ではあるけど、人間も楽しめる宿として人気なんだよ。妖種体験コーナーなどもあって、人間の利用者の評判も良いんだ」

「そうなの? お父さん。ぬらりひょんさん結構やり手だったんだね」


 ボクの知っているぬらりひょんさんは街で『ぬら総合雑貨店』を経営してるというくらいだ。

 店に行くと、必ずと言って良いほど店内を徘徊している姿を見ることができる。

 まさかこの辺りで宿の経営に手を出しているとは思わなかったけどね。


「まぁその話はあとでゆっくりしてあげるから、今は海を楽しみなさい」

「詠春様もそう言ってることだし、さくっとやっちゃうよ? 覚悟は良い?」

「えっ? 覚悟って?」

「こういうことだよ」

「うひゃん!?」


 ゆかりちゃんはそう言うと、ぬるっとした液体をボクのお尻に垂らしてきた。

 突然の冷たさにボクは変な声が出てしまう。


「驚いてないで、枕代わりのタオルに顔埋めておいて。全体に塗るから変な声が漏れても困るでしょ?」

「あわわ。うん、わかった……」


 ゆかりちゃんの忠告を聞き、ボクはすぐに枕にしているタオルに顔を埋める。

 その直後、お尻全体にぬるぬるした液体を手で塗り広げられ、徐々に尻尾の付け根へを近づいていくのを感じた。


「うひゃん!? まって。落ち着いてゆかりちゃん!!」

「待てないよ~? にしても小ぶりなお尻なのにすべすべしていて触り心地が非常に良い……。なにこれ」

「感触楽しまないでよ!! 早く終えてほしいんですけど!?」

「しっかりなじませないとだめだからもう少しかかるよ~」

「おっ、お父さん! 俺ちょっと席をはずしますね!!」

「そうかい? なら私も一緒に行こうかな。賢人一人だと寂しいだろう。ついでだしみんなの分のかき氷でも買ってこようか」


 慌てた様子の賢人お兄ちゃんはそう言うとボクたちの側から離れて行く。

 それを追うようにして、お父さんもゆっくりとついていったようだ。


「賢人には刺激が強かったのかしら? 男の子だものね~」


 お母さんはのほほんとした口調でそう言う。


「あはは。賢人さんには悪いことしたかな? でもこのままやっちゃうよ~。ほれほれ~!」

「ひゃん!? 尻尾の付け根はお尻以上にだめだからぁ!!」

「もうちょっと声抑えないと丸聞こえになっちゃうかもしれないよ~?」

「うぅ~。ひゃぅっ。はぅっ」

「ほれほれ~」

「お、おち、落ち着いて、ゆかりちゃん! ひゃぁん!?」


 終始ボクはゆかりちゃんに翻弄され続けてしまった。

 お尻に塗られ、尻尾の付け根をさわさわと優しくなでられいじられ、尻尾の奥の地肌もいじり倒される始末。

 そうこうしているうちに、ボクはだんだんと力が抜け自分がよくわからい状態になっていた。

 最終的にされるがままになっていて、自力では立てなかったけどね……。


 ちなみに、声はシートの周囲には漏れないようになっていたらしく、変な声を周囲に聞かれることはなかった。 

  

投稿遅れてます!!


ちょっとスケジュールみなしながら定期投稿していきたいので、調整し直します。

話数が増えるとやることが多いですね。

特に読みづらくなったり何やってるか不明になる部分が増えてると思います。

整理しないと破たんするので、気を付けます。

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