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銀河航空  作者: ロキソニンあるよ。
1/6

高校にて

                ✈︎


 まったく、死んでからも面倒をかけるやつだ。


「逝けないよー 逝けないんだもの」


 菅野美月すがのみずきは、両足を広げながら、そーっと机の下を覗き込んだ。

 案の定、陽太ようたが、体育座りをしてこっちを見上げている。


「・・・・・・そしてたったいま夢であるいた天の川もやっぱりさっきの通りに・・・・・・」


 教室では朗読が続いていた。

 午後に入ってすぐの授業。ただでさえ眠いのにテキストは『銀河鉄道の夜』だ。

 しかし、美月は文章を追い続けなければならない。朗読の順番は次に迫っているのだ。


「ねえ、美月ぃ。逝けないったら、逝けないんだもの」

「うるさい」


 美月は、股の間にむかって叱った。もちろん周りには聞こえないように声を潜めながら。


「だいたい、アンタ、学校に来るなんてルール違反よ。さっさと家へ帰んなさいよ」

「美月ぃ・・・・・・どうしてそんなこと言うの?」


 陽太は、瞳を震わせ、みるみる顔を赤らめていく。

 まずい、泣き出してしまう!

 ツイてない時は悪いことがどうしようもなく重なることを、美月は熟知していた。

 よりにもよってこのタイミングで、前の席の子が朗読を終えて着席した。

 しんと静まり返った教室に、グズッ、グズッと鼻水をすすりあげる音が漏れ聞こえる。

 美月は、慌てて、陽太をひざ下まであるプリーツスカートの中へ隠した。

 まるでフサフサの子ダヌキを股下に挟んだような感覚と共に、内股に感じる湿っぽいその温もりは血を分けた弟の暖かさだ。


「次の人。続きを読んで」


 国語教師の鋭い視線が突き刺さる。

 立とうか立つまいか、ためらっているうちに、周囲からクラスメイトたちの緊張がひしひしと伝わってきた。


「では列を変えましょうか」


 教師が美月を飛ばして新たな朗読者を指名した。

 教室にホッとした空気が広がる。


「ほら、アンタのせいでまた変な空気になっちゃったでしょ」


 美月は、スカートの中の弟の頭をぐいぐいと押してやった。

 陽太は泣き止まない。

 底抜けの甘えん坊なのだ。

 淡々と朗読が続いていく中、風が流れてくる窓から、遠い雷鳴のような重低音が響いて来た。

 空を見上げた美月の瞳に飛行機雲が映りこむ。

                                  

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