クロと猟奇殺人事件
ーある夜の公園ー
これがクロとシロの出会いであるー
少年は喋る猫と友達になった。
一人と一匹はベンチに座って身を寄せ合っている。
寒空の下、白い息が少年から漏れる。
「猫さんはなんでここにいるの?」
少年は首を不思議そうに傾げて聞いた。
猫は少年を見て笑いながら答えた。
「ひひひ、僕はね君の心の中にいるのさ
つまりは君について来たって事だよ。」
少年は難しい顔をして一瞬考えて、そして猫と握手をした。
「じゃあ、これから僕たちは一緒だね。」
これがクロとシロの出会いであるー
「昨夜未明、秋元拓也さん21歳が皮だけの状態で発見されました。連日起きている連続猟奇殺人と関連があると見て警察はーー」
テレビから流れているニュースは連日、皮だけ殺人で持ちきりだ。
俺、荒井 クロは昨日高校生になったばかりの15歳だ。ただ人には話せない秘密がある。
それは、妖怪の生まれ変わりって事だ。
生まれ変わりって言っても、俺の魂に住み着いているって方が正しいかもしれない。
テレビを見ながら焼きたてのパンにマーガリンを塗る。それを「食べたいです!」って顔で見つめてくる白猫がいる。奴が俺の魂に住み着いている妖怪通称シロだ。奴の存在に気づいたのは小学三年生の冬、家出をした時だった。それからは毎日一緒にいる。
パンをちぎり口にほうばると、シロは今にも襲い掛かりそうな気迫を送って来たのでちぎって投げた。
投げたパンの切れ端を、動物の曲芸出てきそうなジャンプでキャッチして美味しそうに食べ始めた。
パンを飲み込んだシロは思い出したように言った。
「そういえば、その猟奇殺人よぉ〜僕たちみたいに
生まれ変わりの奴の仕業な気がするなぁ〜」
そういえば俺たちみたいな人と会った事がない。
俺は猟奇殺人事件に少し興味を持った。
しかし、今はまず学校だ。登校初日に遅刻はまずい。
時計を見ると8時を過ぎていた。
「まずい、シロ、行くぞ!」
パンを無理やり詰め込み、牛乳で流し込んで
慌てて家を出た。