生まれて初めて
まだ手が痛む僕は、何故か新幹線に乗っていた。…いやいきなりすぎて意味わからんぞ。
「あ、起きたかい?星流くん。」
「ふ、目覚めたか不死鳥よ。今日は楽しもうぞ?」
あー、ジーナだけならまだマシだったけど性別不明の覆面厨二病も居るのか。騒がしそうっていうか絶対騒がしいなこの旅。
「あの、非常に恐縮ですが状況説明を求めたいんですけれども」
「朝5時 起きなかった 連れてきた 以上」
「朝5時 起きなかった 連れてきた 以上」
ステレオでプライバシー侵害の報告ありがとうございます…僕はどんな反応をしたら宜しいでしょうか…
「…お前らの世界ってあれなの?近所のお婆ちゃんの他人の家のドア開けて『回覧板置いとくよー!』みたいなやつよりプライバシー守られてないの?連れて行きたい人が来なかったら家まで行って強引に連れてくるの?小中学校の無理矢理連れてきて不登校を矯正させようとするタチ悪い教師かよ。逆効果だわ。トラウマになってもっと行きたくなくなるわ」
前の2人にも周りにも引かれている気がするというか話が逸れてるので少し沈黙しようと思う。因みに僕にそんな過去はないので安心して欲しい。
「落ち着いたかな?流石にプライベートでは寝てる人を担いで窓から降りたり着地に失敗して落としたりはしないよ。今日は重要な任務だから止むを得ず…ね。」
「待てジーナ。聞き捨てならない言葉が2つ聞こえた気がするんだけど、何?着地に失敗して落と、え?」
ジーナが喋ってる時覆面厨二病が過剰に反応したから、多分内緒にする事にしていたんだろう。僕が聞き返しても思い出さずにジュースを飲んでいる…この女はかなりの天然らしい。
「さ、さささ、さあ!見えてきたぞ寿司長…不死鳥よ!通天閣だ!」
ん?待って?そういえば行き先聞いてなかったけど、寿司長…じゃなくて通天閣てことは大阪か。割と遠くに来たな…。
「化け物がここで悪さをしてるみたいなんだよね〜。あ、星流くん、もうちょっとしたら降りるよ?」
「ん?降りるってまだ駅は…まさか。止めろよ?警察に追われるぞ?お前らはあっちの世界に逃げれるから良いだろうけど俺はこっちの住人なんだから下手したら逮捕されるだろ」
「ふふふ、臆するか不死鳥よ。案ずるな、こちらの弱き人間共は新幹線から落ちたら死んだと思って遺体捜索に入るだろう。」
「まあ確かに、一理どころか百理あるけどさー、無駄に探させる罪悪感もあるし何より、もし知り合いが旅行に来てたらやばいでしょ?だからさ」
厨二病を諭し終えようとしていたその時、ジーナが「大丈夫だよ、星流くん。私達を信じておくれ」とペットボトルを持ったまま窓から飛び出していってしまった。
「…出遅れてしまうな、いざゆかん!」と続いて飛び出していく厨二病。何故覆面が取れなかったのかは知る由もない。
「あ、何やってんだお前ら!今助けるぞ!ぐわあ!」と、演技を入れつつ結局反対していた星流もちゃんと傘を持って飛び出していった。
その後、新幹線内がパニック状態になった事は言うまでもないだろう。
「さて、場所知らないけど通天閣通りまで逃げるか!」
僕、高橋星流は今日、生まれて初めて犯罪を犯してしまった。化け物を倒す為なのでまあ仕方ないだろう、多分。