不法侵入者
お久しぶりです。普通に更新するの忘れてましたすみません刺さないで
『高橋家』と書かれた表札がある家のドアを開ける。何故インターフォンも鳴らさず入ったかというと、正真正銘僕と僕の家族が住んでいる家だからだ。
「おかえり、お兄ちゃん」
「ただいま。吸血鬼に襲われりしてないか?妹よ」
「どういうこと?何か夢でも見たのかな」
「何でもない」
天使のような笑顔で出迎えてくれた内の1人は華琉亜。ジーナが僕をやる気にさせるために変身した時に紹介したので詳細な紹介は割愛させていただこう。
「よう兄ちゃん。遅かったな」
「ただいま…あれ、何方ですか?」
「お前の弟だ!姓は高橋名は雄也。小学3年生!覚えておけ!」
御本人からの紹介の通り高橋雄也、僕の弟だ。何故弟だけ普通の名前なのかというと、ノリでキラキラネームを付ける気満々だった両親の目を盗んで僕が名前を決めたからだ。
「良し、散れ散れ。晩飯が出来たら呼んでちょうだいね」
『はーい』とステレオで返事をすると2人はリビングへと走り去ってしまった。
僕は自室へ向かう。階段を登り、いつも通りドアを開けたらいつも通りの空間が広がっていて、いつも通り過ごせるはずだったのに。
「僕さっきので疲れたからもう休みたいんだけどさ、何でお前が居るんだよ。」
「おかえり星流くん。あとひとつだけ試したいことがあるから終わったらゆっくり休んで?」
これ以上何を試すというのだろうか。体の耐久性は急に首を切り落とすショタサイコパスのおかげで証明できたし…
ていうか不法侵入してるから110に通報しようかな。
「君の戦闘する所をまだ見てないからさ、私と手合わせして欲しいんだよね。手合わせって言っても星流くんが一方的に斬りかかって私は防御か躱すだけだけどね。」
「それマジで言ってる?僕とお前は力を半分に分けたんだろ、だから力の差はない筈だし『私は防御か躱す事しかしないけどね。』って余裕こいてる場合じゃないと思うんだが」
「じゃ、ルール説明いくよー」と、折角気にかけてるのに無視して話を進める不法侵入者。もう知らん。
「あっ、そうそう。ルールじゃないんだけど、この部屋は覆面ちゃんによって私たち以外からは見れないし入れなくなってるから宜しくね」
「はいはい、続けて」
「星流くんは武器の使用OK。その傘で私を撃ってもその刀で斬っても誰も咎めない。私は防御か躱すことしか出来ない…以上」
何故ジーナが不利になるルールばかり設けたのか僕には到底理解できなかった。先程触れた通り、僕とジーナの力関係はフィフティーフィフティー。互角の状態でハンデを付けてしまったらジーナが負けることくらい分かっているだろうし、本当にこの女は考えが読めない。
「じゃ、行くぞ。力を貰ってるんだから誠意を込めて全力でな」
容赦なく仕込み日傘を手に取り刀を、名刀"月華"を抜き出すと相対するジーナも左手を硬質化させた。防御するには心許ないように思えるが準備は整ったようだ。
「名刀月華…居合。」
「さあ、おいで?」
優しく微笑み防御の構えをするジーナには悪いが僕は斬るつもりは無い、ただ通り過ぎるだけだ。
「…太刀筋が見えない?いや、斬らずに背後を取り打撃…!」
「無斬の鉄鎚…即興で名前考えたッ!」
「素晴らしかったよ。完全に不意をつかれた」
「痛っ…」
決着はどのようについたかと言うと、僕は硬質化できない左手で殴り、彼女は硬質化できる左手で防御した。つまり、
「優しい子だね。私が反応出来なくても大して痛くないように硬質化できない左手で攻撃するなんて」
「お前がその硬い手で防御したせいで骨折したけどな?」
僕の殴り負けだ。
「さて、」と満足げに背伸びをして窓の外を見つめる背中は何処か悲しげで、幸せそうで、切なげだった。
「楽しめたし私はもう帰るね。明日はちょっと遠出するから早めに寝るんだよ?」
「あのすいません、遠出は構わないんだけどこの折れた手を治せる力とか持ってない?」
「そのうち治るでしょ、じゃあまた明日ね〜」
不法侵入者はか弱い住人の手の骨を折り、治療することもなく窓から逃げていった。