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邪神デビル

「そういえばお前、名前は?」


「おい!俺を呼び出したのは誰だと聞いているだろう!」


「名乗る程の名は持っておらんよ。『覆面』でいい」


「そうか厨二病。あの鳩送り返せ」


「お前か!俺を呼び出してくれたのはお前なのか!」


さっきから声が高くて耳障りなこの鳩は何者…何鳩なんだろう。覆面が終焉の地で生き延びたとか言ってた気がするけど。


「どうした?俺が来た時に騒いでたお前、何を難しい顔をしている?」


「うーん、やっぱり弱そうだな…あ、今夜の晩飯なんだろう。鳥の唐揚げかな?フライドチキンかな?」


顔が一瞬で青ざめる鳩。何でだろう、僕はこの鳩を料理するなんて一言も言ってないのに。何を勘違いしているんだろう、妄想癖があるのかな。


「若き者よ、あまり怖がらせないでやってくれ。…おい、硬質化も止めよ」


「おお、しまった。つい狩猟本能が」


「こ、ここ、このやろう!邪神デビルの無慈悲な猛攻を凌いだ俺を舐めるなよ!」


「邪神デビル?誰だその神なのか悪魔なのかはっきりしない奴は。不死身ライルを馬鹿にしてるのか?」


「幾ら何でも不死身ライルはダサいと思うよ、鳩を狩りそうなお兄ちゃん」


安心しろイロハちゃん、僕も同じことを思ったさ。ていうか鳩が来てからずっと黙ってたねイロハちゃん。空気だったよイロハちゃん…口に出したら殺されそう。


「で、邪神デビルとかいう奴の説明を誰かお願いできるかね?」


「ざっくりと説明するね…邪神デビルは、神と悪魔のハーフだ。炎、木、氷、土、風…自然の物は何でも使う。何でもだ。」


説明を始めたのはイロハちゃんだ。らしくない事に声が震えている…けどここまでの説明だとただの地球にやさしいハーフっていう印象なんだが。


「今までは『邪神』の能力。ここからは『デビル』の能力を説明するよ。」


「ずっと声が震えてるよ?イロハ、無理に説明をする必要は無い、良いかな?…さて、説明を変わろう。」


入口から薄緑の髪色で落ち着いた雰囲気の美女、ジーナが入ってきた。


「なんだ、聞いてたのか。じゃあ頼んだよジーナ」



頷き、深呼吸をしてジーナは説明を始める。


「『デビル』の能力、それは敵を洗脳し敵同士を誰か1人残るまで闘わせて、残った1人は自害させるという酷い能力だ。単体で挑めば効果は無いけど、イロハが説明してくれた『邪神』も相当手強いからね。残念なことに私達の誰かが戦っても勝ち目は0に近いと思う。」


「あっちでボクが対峙した時は確か7秒で決着がついたかな、完敗だ。」


「言ってなかったけどよ、俺の種族もさっきまで邪神デビルに襲われかけてたんだ、覆面に助けられていなかったら今頃どうなっていたか…でも、仲間が…」


すっかり意気消沈し、暫し静寂に浸る4人と1羽。この沈黙を破るのは誰だろうか。


「不死身の力を持った僕なら…」


突然視界が逆さまになり、頭に血が昇る。視界が下に落ちるのは体験したけど逆さまは新しい。吐きそう。


「その頭で良く聞けよ?クソ野郎。不死身と無敵は違う、殺せなくても滅ぼせる。今みたいに死ねない身体を利用されて拷問を受ける可能性もある。」


あなたが雑にやったせいで頭に血が昇って話入ってこないんですけど。つまりどういう事だ、何が言いたい。


「逆さ生首。吸血鬼の力を『都合の良い不死身の身体』なんて思ってないかな?そんな考えを持った惨めな吸血鬼がジーナに気絶させられて日光が当たる場所に放り出されたのを目の当たりにしただろう?」


ああ、そうか。吸血鬼は不死身だが、その特性は弱点に成りうるのか。イロハちゃん、いや、説教してくれる人にちゃん付けはもうやめよう。イロハの言う通りだ。


「そこまでだよイロハ。不意打ちはダメだと言った筈だ。それに星流くんはもう理解しただろう、無闇な言葉責めはやめるんだ。良いかな?」


「良くない、分かったフリだ。流れ星のお兄ちゃんはきっと同じ過ちを繰り返す」


2人の論争に1人と1羽が全く話が読めないといった表情をしていた為、僕は相変わらず逆さまのまま口を出した。


「イロハ、そこまで言うなら僕が過ちを犯したり聞き逃せない失言をしてしまったら今みたいに首を切り落として説教してくれよ。勿論、敵と闘ってる最中でもだぞ?…あ、出血量は極力抑えてください。」


「星流くんも無駄な制約を設ける必要は無いよ。そう何回も首を落とされたら心が壊れてしまう。やれやれ、収拾がつかないな…皆疲れただろうし今日はひとまず解散だ。良いかな?」


僕の首に頭を嵌めるジーナに2人と1羽は頷くと険悪ムードが続いたからか、そそくさと出ていってしまった。


※回想※


「突風」


彼の能力に押し戻されながらも、ボクは果敢に挑む。左翼は白く、右翼は黒い邪神デビルに、神と悪魔のハーフに。


「君は恐らく逸材という奴だ。芽を摘むには若すぎる、帰りたまえ」


「残念ながらお断りしようかな、ボクは邪神デビルの退治を要求された。」


手を硬質化させ臨戦態勢を取ったその時、ボクは力の差に絶望することになる。戦力差なんて言葉では図れない、次元が違う力の差。


「…言葉が甘かったか?今の貴様は取るに足らん。それ以上来るというのならば私は自らの能力で太陽を落とし、貴様とのちっぽけな闘いを世界諸共終わらせる」


神の慈悲と悪魔の無慈悲。両方を併せ持った邪神デビルは控えめに言って最強だ。まさに手も足も出ない、出したら死ぬ。


「まあまた会おうぞ、逸材。再会の時、それが明日であったとしても全力で相手をしてやろう。」


「全力で闘ったら世界が滅亡するだろ」


なんて年齢相応に文句を言いながら、ボクは屈辱を胸に家路についた。


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