仕込み日傘
「今後についてなんだけどね」
「今後についてなんだけどね」
「まず星流くんは家に帰ってゆっくりしててくれるかい?」
「星流くんは家に帰ってゆっくりしててくれるかい?」
「…何でさっきから私の真似をしているのかな?それ以上私を小馬鹿にすると」
ジーナの口調に恐怖心を抱いた為、鸚鵡返しを止める事を即断した。
「ごめん、いえ申し訳ございません。殺さないでください。」
「まあ今の君は殺しても死なないからね。日光が当たっているところに縛り付けておくのが1番効くのかな?」
「本当に勘弁してください。許してお姉ちゃん」
彼女が年下好きだと仮定して、そこに付け入る作戦はどうやら
「お姉…仕方ない、今回は特別に許してあげよう。良いかな?星流くんの家族や知り合いには私に協力している事を絶対に教えちゃ駄目だよ。勿論、異世界からこっちに逃げ込んだ吸血鬼をコピーして今は不死身だ、なんて事もだ。」
成功したようだった。
「今思ったんだけど帰りどうすればいい?日光キツイ」
「あー、それは盲点だったよ。ちょっと待っててくれる?」
ジーナが空中に小さな円を描くと、中から黒いバンダナをした謎の老人が顔を出した。僕は何となく老人が顔を出している面の裏側に回って見るとそこは何の変哲もない、今まで通りの空間だった。この時の出来事は上手く言葉に出来ないが、とにかく異様すぎる。
「何事かの?」
「ごめんよボー爺さん。日光を通さない傘って貰えるかな?」
「おお、ちょっと待っとれよ」とだけジーナに伝えるとボー爺さんと呼ばれた老人は何やら探し始めた。
「ボー爺さん?」
「失礼、紹介がまだだったね。あの御老人はボールディン・ボートス・ボーンドルさんだ。長いから皆はボー爺さんって呼んでるんだよ。」
病院の窓口のような穴を覗いてみると鋏、ボールペン、消しゴムetc……ジーナの世界に助けを求めなくともこちらで準備できそうなものばかり置いてあった。
「ほれ、持ってけ若僧。」
中を覗くのに夢中で、僕は下からの急なアッパーに気が付かなかった。
「痛っ…?ボー爺さんは何処から?」
「下からじゃが、ところで儂の頭に何か豆でもぶつからなかったか?」
僕の顎を豆扱いのボー爺さん。強烈なアッパーを喰らった気でいたのに、まさか当たっただけとは。
「うーん、気の所為だと思います。ボールディンさん、日傘を用意していただき有難うございます」
「ボー爺さんで良いよ、堅苦しい若僧じゃな。儂に歯があったら食べてたんじゃが」
「豆扱いの次は堅焼き煎餅扱い!?」
ツッコミを入れている間に目の前の老人が傘の持ち手を抜くところを僕は見逃さなかった。
「…はは、丈夫な刀ですね。仕込み傘ですか」
「お前さんも誠に丈夫な手じゃ。もう手を硬質化する術は教わったようじゃの」
持ち手を傘に戻すと今度は先端部分をこちらに向け
「祖父と孫のようにソフトに微笑ましく会話してるのかと思ったらとんだ勘違いをしてしまったよ。何をしてるのかな?ボー爺さん」
先端部分が切断され、骨組みがバラバラになってしまった。
「いやいや、この傘の使い方を説明してたんじゃよ。」
「持ち手を抜くと耐久性に優れた名刀『月華』おまけに先端部分は90発の鉛弾入り…これのどこが傘なのかな?30文字くらいで説明してくれるかい?」
「誤解してると思うが、護身用としても傘としても使えるんじゃよ。」
何と読点合わせて30文字ピッタリ!なんて流暢に言ってる場合ではない。空気は殺伐としているのだ。
「成程、だからと言って突然斬りつけるのは違うよね?ボー爺さん。」
「・・・そうじゃな、儂が悪かった。そこの若僧、すまんかったな。」
本当に殺伐としているのか疑問に思えてきた。2人とも30文字ピッタリにするゲームで遊んでいるのではないか?
「あのさ、ボー爺さん。この傘と同じの貰えるか?すごく気に入った」
「もう会得するとは君は凄いな。じゃあボー爺さん、傘を持ってきて」
「承知した。すぐに新品を持ってきてやるから待っててくれるかの?」
「いやもう飽きたからやめようぜ。ていうか直ぐに思いつくのすげえ」
なんて30文字ピッタリかどうか数えるのが面倒でアホみたいなやり取りを終えて、僕は移動と戦闘の際に重要なアイテム、仕込み日傘を入手した。
先程からあまり進展がないように思えるが、まあ気のせいだろう。
30文字ピッタリな言葉考えるの難しいし数えるの面倒くさかったのでこのネタもうやりません