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吸血鬼VS

何処かへ行ってしまったというよりは、視界から消えてしまったのだ。


「こっちだよ、星流くん。君もおいで」


声のした方を見ると、真四角な建物があった。生まれてからずっと住んでいるこの街に見知らぬ真四角な建物があるなんて事は有り得ないのだが、まあ異世界から美女が来るなんて事の方がよっぽど有り得ないから気にしないことにしよう。


「どこ見てんの、そこ1階。私と馬鹿吸血鬼が居るのは3階だ。」


何やら息が荒い。例の吸血鬼と闘っている途中だろうか。


「入口が無いようですが、どうすれば?」


「入口も無ければ階段もエレベーターもエスカレーターも無いよ。さっさと飛びな?」


この女は人間の跳躍力を知らないのか?と、僕は呆れる。あんな高さ、棒高跳びの選手でも届かなさそうだ。


「ああそっか、こっちの人間はそんなに高く跳べないんだっけ。それなら早速君に力を分けなきゃね。」


「力とは?」


「そうだね、私と君が敵と闘える分をギリギリ残すと…跳躍力、攻撃力、防御力半分こ。あとは特別にコピー力、つまりややこしいけど相手の力を使えるようになる力も与えようか。」


私と君が、とはどういう事だ。僕は化け物と闘う気は無いし闘いたくも無い。本音を言うと怖すぎるやだ死にたくない。


「まあそんな青ざめた顔しないでよく聞いてよ、私の強大な力を半分こするんだ。そっちからじゃ見えないだろうけど私は此奴の攻撃を全く受けていないよ?」


吸血鬼が必死に、我武者羅に、ひたすら攻撃を仕掛けている様子が一瞬見えた。


「だったら1人で倒せば良いでしょう?もうちょっと他人をやる気にさせる方法を学んできてくださいよ、異世界の方。」


吸血鬼は噛み付くを繰り出した!…うまく決まらない。


「参ったな、私は馬鹿だからそんな言葉捻り出せないよ。…だから大変心苦しいんだけど、仕方ないからあれをやるしかないか」


見る見るうちに美女の体が縮んでいき見た事がある姿、否。毎日見ている家族の姿へと変わっていった。


「お兄ちゃん…華琉亜、華琉亜…噛まれちゃう…ねえ!お兄ちゃん!助けてよ!」


華琉亜。読み方はかるあだ。正真正銘僕の妹の名前である。俗に言うキラキラネームだ。


「華琉亜!…今助ける!」


あの性格が悪い美女の演技だと気付いていた。吸血鬼に襲われている超絶可愛い妹は偽物で、流している涙も偽物だ。だが、


「中身が違くても見かけは家族だ。知らない奴は助けないが知り合いと家族は助ける!家族全員が危険な状態だったら妹は最優先に助ける!」


憎き美女は僕の事を知り尽くしていたのだ。僕が家族思いでシスコンだと言うことも、何もかも。


「お兄ちゃん…今から力を使えるようにしてあげるね。華琉亜が右手をお兄ちゃんに向けたらすぐジャンプして」


3階と地上とでかなり距離がある為、僕達はかなり大きな声で会話をしていた。近所から苦情が来たら即土下座して謝ろう。


「自慢の可愛い妹は力を与えるとか言わねえよクソ女、さっさと寄越せ!」


頷き、彼女は手をこちらへ向けた。


「強大な力を分けるために兄妹愛を利用させてもらったけれど、随分口調が荒くなったね?私はその方が好きかな」


僕は3階の高さまで骨折を覚悟で跳び、超可愛い妹の姿をした美女の元へ着地した。


「黙れよ性悪女。さっさと終わらせようや」


「終わらせないよ?今から始めるんだ」


前方から不快な笑い声が聞こえてくる。隣に居る品の無い笑い方の女と何がとは言わないが実に良い勝負だ。


「お前は何のつもりなのかな?こんな人間に力を与えるとは。ハンデか?この私が貧弱だからハンデをくれたというのか?やれやれ全く、馬鹿にしてくれる」


「勝つ為だよ。ああ、君にじゃなくて君の次に闘う奴にね」


美女の挑発的な言動に吸血鬼は反応しない。無視しているのではなく、聞こえていない。


「…気絶してる?いつの間に」


「おお、よく気付いたね星流くん。お兄ちゃんって呼んだ方が良かったかな?」


「要らん要らん。ところでコピーってのはどうすりゃ良いのかな?」


「私がさっきやったように手を向ければできるけど、そいつは何かと不便だからコピーしない方が良いよ。」


美女はいつの間にか元の姿に戻っており、気絶している吸血鬼を外へ投げ捨てた。


「意識が無い奴を3階から投げ捨てるとか正気かこの女…流石に死んだだろ」


「ノーノー、吸血鬼は死なないよ。死ねないの方が正しいかな?その代わり日光に弱い。起きたら動く事さえままならないだろう。」


「急に外国人っぽさ出してくるなよ。他にデメリットは?」


「うーん…これと言って無いかな。だが日中の移動は困難を極めるし、外で敵と遭遇してしまったら力を半分あげてしまった私はか弱い美女、そして君は役立たずだ。Bad End」


「成程ね…あれ、うんこって言った?」


「……」


美女に叩かれそうになりながら僕は外で気絶している吸血鬼を見下ろす。日光に弱いと言ってもあまり影響は見られないようだ。


「あ、そうだ。まだ聞いてなかったけど名前は?」


「なんだか質問ばっかりだね。まあ力を分け合った仲だし教えてあげよう。私の名前はジーナだよ。宜しくね」


「中出しとか言うなよジーナダヨ・ヨロシクネさん。コピーした力は…なんて言えばいいんだ。リセットする事はできるのか?」


「敢えてその下ネタとボケにはツッコミを入れないでおこうか。外す事は可能だよ。コピーした対象に再度手を向ければOKだ。」


それだけ分かればもう何も怖くない。早速気絶中の吸血鬼に手をかざそう。


「…これでもう吸血鬼になったのかな?あまり実感無いけど」


「試しに屋根でも開けてみようか。良いかな?身体に異変を感じたらすぐに吸血鬼の力を外すんだよ。」


美女、改めジーナが人差し指を立てると真四角な屋根が突然消えて僕達は日光に照らされた。徐々に開いていくのではなく、言葉通り突然消えたのだ。


「熱…アツモリッ!問題ない、耐えれる。」


「うん、最近話題のワードが聞こえた気がするけど大丈夫そうだね。まだ本体がそこに転がっているうちに吸血鬼について説明するよ?日光に当たれば当たるほどその身体の暑さ、熱さが続く。さっきも言ったと思うけれど外で敵に遭遇したら御終いだ。まあ解除する気が無いならできるだけ日陰に居ることをお勧めしよう」


「然し、太陽さんに焼かれてるみたいな熱さだなこりゃ…というか屋根付けてくれない?」


ジーナは申し訳なさそうに人差し指を立てた。


「ごめんね、すっかり忘れていたよ。まあ耐性が付いたってことで許しておくれ。」


「ねえジーナ、もうひとつ実験しようか」



背後から何者かに、透き通った声を持った何者かによって首を落とされた。


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