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〇〇〇ハ〇〇ド∞ 完結

町に蔓延るアンデッドもどき…であって欲しい彼らを囲んで被害を抑えながら、僕は目的地に辿り着いた。どうやらずっと前に閉店したスーパーのようだ。


「おーい、誰か居ますかー?帰りたいから早く出てきてくださーい」


「…よく来たな」


声を聞き、振り向いた瞬間、僕は声を失った。そこに居たのは、


「あ、イロハじゃないよ。イロハの兄、双子」


彼は真顔でダブルピースをしてみせた。…しかしこの不器用さ、間違いなくイロハの兄だろう。『自分はイロハだ』と偽って精神攻撃を仕掛けることも出来ただろうに。


「…で、イロハ兄弟の双子の兄がなんでこんな事を?」


「嫌々なんだけどさ、邪神デビルの命令で君のところに行こうと思ったんだけどすごい分厚い結界があってね、だからこの町にした。」


「つまり、罪のない人達を巻き添えにしたって事か?」


「うん、怒るならここまで結界を貼らなかった自分に怒ってね。まあそしたら別の町に行くけど」


「…質問2つ目だ、イロハの兄ちゃん。この『デビル』に似た能力はお前のか?」


「そう、僕ちんの能力。『デビル』は闘わせるけど『ワンダー』は意識を奪って徘徊させるだけだ。どっちも2人以上じゃなきゃ効果はないね」


ちん…そこじゃなくて、なんだ、なんで喋る。余裕なのか?コピー人間なんて一捻りだと?…それともただのバカなのか?


「…3つ目だ。徘徊させるだけなら建物が燃えてたのは何故だ?」


「人が居なきゃ『ワンダー』を使う意味はないからね。確認のためだよ。」


まさかとは思ったが、つまりそういうことなのか。


「4つ目、個人的に知りたいんだが、お前の名前ってなんだ?アロハだったら面白いな、お前の親ギャグセン高いぞ」


「アロハじゃないよ。イロハは偽名だからね。あいつの本当の名前はカルロッタ、僕ちんの名前はオルレーブ」


「そうか、初耳だ。確かに異世界人なのにイロハなんて名前なわけないよな。…最後だ、質問5つ目」


僕は5の数字を表すように自然に手を広げ、『ワンダー』をコピーする。


「なぜここへ誘き寄せたんだ?もっと快適な所もあるだろ」


質問などせずとも答えは知っている。オルレーブがこんなところで待ち構えているのも、あのテディベアを持った少女も、全て計画のうちだったんだ。



この町に、僕を閉じ込めるためにーーーー



「分かりきった表情で何を聞いているんだ。…やれ」


頭上からオルレーブの部下が剣をこちらに向けて急降下してくる…イロハ、いや、カルロッタもそうだったが、この兄弟はまだ幼いからかやり方がどこか子供っぽい。


「『邪神・熱風』…自分達が蒔いた種だ。ちゃんと拾っとけよ」


剣に気を取られて体型を気にしていなかったが、よく見たら小太りの部下達が熱風に耐えきれずバタバタと倒れていく。熱と風の融合は初めて、というか来た時に水を使ったきりだったが、あのダサい羽の奴が使うだけあって汎用性抜群らしい。


「なぜ使えるんだ?それは邪神デビルの能力。お前が使えるはずが…」


「知らされてないのか、お前結構下っ端なんじゃ…色々答えてくれた礼ね。この左手を開いて相手に向けると能力をコピーできるんだよ。」


説明しながら久しぶりに登場した右手の鋼色の硬質化手刀に風を纏わせた。


「…なんなんだ、見たことも無い、硬質化に能力付与?」


「そっか、敵に見せるのはお前が初めてだな。…質問6だ。これで切ったらどうなると思う?降参するなら今だぞ。」


「ふざけるな!」


凄まじいスピードで首を狙ってくるが、出会い頭に撥ねられた経験のおかげで難なく受け止めることが出来た。カルロッタさんどこまでこの展開見抜いてるんですか


「邪神デビルにこき使われていただけなんだ。」


「……」


戦意喪失した様子のオルレーブを床に座らせ、僕は隣に座った。


「兄の僕ちんは村が邪神デビルに襲われた時、真っ先に立ち向かわなければならなかった。しかし呆気なく負けた。そして捕まったんだ。」


「まあ、その能力じゃな」


「……よくこんなシリアスな状況で辛辣な事を…『ワンダー』は『デビル』の対抗策なのに…」


本気で落ち込んでしまった…ここは大人なりに謝らなければ。しかし、敵意剥き出しの状態からでもこんなに仲良くなれるものなのか。


「悪かったって、冗談だよ冗談。冗談だから、じょう」


「もういいよ…つ、続けるよ。僕ちんが攫われたあと、弟も挑んだ。負けたけど、素質を見込まれて逃がしてもらえたんだ。」


「邪神デビルの横にお前は居たのか?あとそろそろちんやめない?」


「居なかったよ。邪神デビルが帰ってきてから話をされたんだ。お前の弟は逸材だ、必ず我の脅威となるだろう、ってね。」


「それからは離れ離れ…組織的にはお互い敵対同士って状態か。」


「うん…僕、カルロッタに会いたい……」


泣き出してしまった。これはチャ…じゃなくて可哀想だ。カルロッタには悪いが交渉の材料にさせてもらおう。


「じゃあクソダサ邪神に肩入れしてないでこっちに来いよ、会わせてやるから」


「本当に?カルロッタと仲間なの?」


「ああ、だからここの結界と『ワンダー』解いてくれ。僕の町は家族達を危険に晒すわけにいかないから解かないが」


「ありがとう…本当に」


泣き止んだところでオルレーブは何かを思い出したように目を見開く。


「ん、どうしたんだ?」


「あの女の子…正しくはテディベアなんだけど、あの中に小型爆弾が入ってるんだ。僕の裏切りがバレた瞬間爆発する。」


「…まだ気付かれてないな?じゃあお前は横になって、死んだフリだ。早くしろ」


オルレーブが焦って寝そべる間に、僕はジーナに電話をかける。


「いつ登録したんだ…ジーナ、よく聞いてくれな。」


「なにー?倒したの~?」


「まず、その女の子に聞かれない場所に移動して、話はそれからだ。」


後ろからなにかチラチラ視線を感じる。バレたら終わりなのになんて緊張感のない…まったく。


「おいオルレーブ、お前は死んだ、良いな?」


「うん」


「バカ、返事するな…ちゃんと死んでろ。」





「よし、大丈夫だよ~」


「女の子が持ってるテディベアだが、小型爆弾が入ってるんだ。起爆条件はここにいる敵の裏切ったのがバレた瞬間」


「了解、うまくテディベアを受け取るよ。そっちに投げるからちゃんと全方位守れるようにしてよ?」


「ああ、頼む」





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




「ねえ、遊理ちゃん?」


「なあに?ジーナお姉さん」


「会った時から思ってたんだけど、そのテディベア可愛いよね、ちょっと参考にしたいから見せてくれる?私も作ってるんだ」


「いいよ!お姉さんのも後で見せてね?」


「ありがとう…ごめんね、ちゃんと後で」


「?」


「同じの作ってあげるか…ら!」


「ああー!!!!!クマちゃん!!!!」




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




「来た…オルレーブ、合図したら起きて左に全力ダッシュな」



町や住人、ジーナや遊理に微塵も被害が出ないように、かつオルレーブにも被害が出ない絶妙な位置…つまり、文字通り僕の目の前だ。誰かが犠牲にならなければ、小型爆弾なんて大層なもの、止められないのだ。


「オルレーブ、どれくらいの速さで走れる?」


「あのショッピングモールまで3秒くらい」


「充分…今だ行け!」


「ん?何だぁあいつ、逃げやがったのか?ま、いっかあ、役立たねえし…諸共消してやる」


結界の外から空に浮かぶ能力でうたた寝しながら監視していた監視員は、幸運にも結界が解かれたことにも飛んでいたテディベアに気付いておらず、オルレーブが逃げたと判断して起爆した。


「なんつって、至近距離で喰らうとかそんな命知らずなこと出来るか。『邪神・突風』…からの壁、あと手錠と足枷のプレゼントだよ、ハゲ監視員さん」


風に乗ったテディベアはハゲの監視員にジャストヒット、テディベアと共にハゲの監視員は消え去った。



『ワンダー』が解けた町の人達は何も覚えておらず、助けてくれたお礼にとお金を貰いそうになったが、この件に関しては完全に巻き込んでしまった形なので、受け取るわけには行かなかった。



オルレーブ、石本遊理、ジーナ、僕で本拠地に帰る途中、僕にだけ幻聴が聞こえた。









「ハゲじゃない、スキンヘッドと言え」と。家に帰ったら、お祓いをしに行こう。






だんだんと場面を分ける「ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」の使い方を覚えて来ました

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