読み合い
「いきなり死ねだなんて物騒な、まあ落ち着いてくれ。君、名前はなんていうんだい?」
あれ、殺されると思ったのに意外と優しい…でも待てよ、優しく扱っておいて別れ際に刺す気かもしれない。こっちも謙って慎重に動きを見よう。
「あー、すみません、仲間が怖がってたもので。僕は高橋星流といいます。あなたは?」
「星流くんか、覚えておくよ。私は邪神デビル族…といっても唯一無二の種族だがね。ホーパーという名前だ。宜しく頼むよ?」
よし、ここまで順調だ。ここからは攻撃をどう躱すかを考えよう。『邪神』の力はコピーしたばかりだから使いこなせる気がしないな…ということはアーテクトウルフで分厚くてマジックミラー状の壁を瞬時に後ろに出し、全力でボー爺のとこに駆け込む…それしかない。
「すみませんホーパーさん、会ったばかりですけど仲間が待ってるんでそろそろ帰りますね。」
「そうか、また会う機会を楽しみにしているよ。……水斬」
時間差…!?ホーパーも自分の企みはバレてると思ってたのか…間に合え。
壁は、爆音を立て大きな窪みができたが、何とか耐えきってくれたようだ。
「ハハハ、貫けないか…流石アーテクトウルフ、見事な壁だな。それに『デビル』を見越しての星流くんの単独行動。あのチビが残っていたら恐らく攻撃に気づかなかったな。」
「ええ…然し、コピーしたばかりでもここまで能力を引き出せるんですね、厄介な人間だ。」
空から降ってきたあいつは…誰だ?羽は両方黒だから邪神デビルではない。だが、ホーパーよりも強い…確実に。
「ぬっ!?お前、剣の矛先をこっちに向けたまま飛び込んでくる奴がおるかアホ!」
「悪いボー爺さん。いま邪神デビルともっとヤバい奴に追われてんだ。この…窓口?すぐ閉めてくれ」
僕が言うとボー爺さんが寿命が来たかのように顔を真っ青にして手をパー状態からグーにすると、ゆっくりと円が小さくなっていった。…壁は突破されていなかった。諦めたのか?
「ば……か……も………ん。ふう…先に言わんか!だいたい何で冷静なんじゃ。」
「悪かったって。なあボー爺、前々から気になってたんだけど、この空間なんなんだ?武器ばっか置いてあるけど」
「ここはな、BOJという組織の武器庫兼避難所じゃ。当然さっきの奴らはこの場所に辿り着くことは無いぞ。」
「BOJってまさかボー爺って事…?まあいいや、取り敢えずすぐにでもあいつらと合流したいんだけど、できるか?」
ボー爺は顔を顰めて不安そうに言った。
「できるが…お主らは一旦逃げなきゃいかんな。邪神デビルと謎の存在に目を付けられてしまった。」
「いーや、ラルネに頼んで身内の住んでるとこに結界は貼るが、逃げはしないよ。あいつの能力もコピーできたしもっと悪さしてる奴らを捕まえなきゃ」
「…そうか。すぐに移るといい。ジーナのとこに出口作るでな。」
「ああ、ありがとう。まだ死ぬなよボー爺。」
「ふん、お前こそバラバラにされるんじゃないぞ。」
ラルネの作った拠点に出た僕は事情を説明して、結界を貼ってもらった。賞賛も非難も浴びたが、最善を尽くした自分を今は誇りに思おう。
もう8月…?