親子
エレベーターから某アニメの某オープニングの某猫のような体勢で降りてきた鳥人は顔を真っ青にして彼女らを糾弾する。
「俺を潰す気かこの人…鳥殺し!それに見世物じゃねえぞこの野郎、下から見物してんじゃねえ!それと、あの、ばーか!」
「おや、人操ってた時の余裕そうな口調はどうしたんだい?語彙力も低下してるよ、ニワトリ頭」
「ふん、我が漆黒の塔にもっと恐れ戦け。…まあ余興はここまでとして、目的は何なのだ?ブラックチキンヒューマンよ」
鳥人が口を開こうとしたその時、エレベーターと周りを囲んでいた壁が何の前触れもなく消えた。
「やはり人間を使っても役には立たぬな。寧ろただ仕事が増えるだけのようだ…全く、面倒な事この上ない。」
狼のような顔をした半獣族がいつの間にか鳥人の後ろに立っているのを2人は目にした。覆面は目を見開き、「父上…」と小さな声で呟く。信じられないといった表情が覆面の上からでも読み取れるようだった。
ジーナはというと空中に円を描きボー爺とこちらの世界を繋げ、
「ボー爺?金なら後でいくらでも払うからさ、1番強い武器をくれ」
「……奴は、トーレスか…うむ、致し方なかろう。」
そんなやり取りをすると、ボー爺は引き戸のタンスをあれでもないこれでもないと漁り、ジーナに鞘に入った刀を渡した。
「これは宝刀『翔楼』…あーあ、ローン80年くらいかな〜……」
隣で聞いていたラルネが驚きのあまり跳ね上がってしまったのを見てボー爺も反射的に身体が動き、腰を痛めてしまったようだ。
「痛づ!!…不覚。ジーナよ、勝算はあるのか?『翔楼』があるとはいえ今のお主では到底敵う相手では…」
「まあ超巨大戦艦に乗ったつもりで任せときなよボー爺。それじゃまたね〜」
現世とボー爺の世界の境界を指先で触ると、円がどんどん小さくなっていき、すぐに消滅した。
ジーナは宝刀『翔楼』を抜きながら、ラルネに指示を出した。
「さて、戦いづらいだろうけど援護宜しくね?スコットモンドちゃん」
「無論、過ちを犯している者に手加減などする気は無い。…あとその呼び方は禁止させてもらおうか!」
ラルネが鉄のような壁をジグザグに出し、ジーナは生成された壁を素早く蹴って半獣族の方へ進んでいく。
「宝刀の切れ味、あんたで試そうか」
「まあそう怖い顔をするな。娘が世話になっている礼くらいは言わせてくれてもいいだろう?」
トーレスは最高クラスの宝刀で斬りかかられているにも拘らず、顔色一つ変えず軽く飛び上がった。
「周りを正面以外の全ての角度から囲んでおいたのだが…逃げられたか。」
「貴様も実の父親を殺そうとするんじゃないよ。ほれ、これでも喰らっておけ…ってしまった、避けろラルネ!それ喰らったら死ぬぞ!」
軽く飛ばすつもりだったのだろう小さな黒い玉は、ピッチャーもびっくりの200キロほどの速さでラルネの額へと向かっていった。
「…避けれない?防御も間に合わな…嘘、私、お父さんにころさ」
ガキンと鈍い音がして、赤い血がゆっくりと地面に落ちた。