間抜けのダークエルフ
僕が間抜けのダークエルフから聞いた情報は勝手に仲間に入れられた討伐隊には何の役にも立たないだろう。僕を除いた3人では常識レベルの話で、「エキス配ってるのはトーラスって奴だってよ」なんて言い出しても「で?」と返されて終わりである。僕はあのよく分からない討伐隊の役に立ちたかった訳ではなく、単純に状況を知りたかったのだ。
一応討伐隊の一員のはずなのに無知すぎて困っていたところだったし、少しくらいは戦線から外れて情報収集くらいしても咎められることは無いだろう…多分。
「すまんダークエルフ。急用思い出しちまった。」
「ふむ、そうか。では武器を返してもらおう」
こいつはまだ気付いていなかったのか、と吹き出してしまった。バカのふりして泳がされている可能性も考えられたので少し警戒していたが、どうやら本物のバカだったようだ。
「自分のポケット触ってみろよバカ。じゃあな」
「…ん?どんな手品使ったんだ?」
敵のはずなのに、街を騒がせた犯人のはずなのに、僕はこいつを憎めなかった。種族なんて関係なく友達になれる気がした。それくらい彼との時間は楽しくて、また黒い背中を見つけたら何か奢ってあげたいと思えた。
「駄目だな星のお兄ちゃん、なに敵を見逃そうとしてるんだよ」
突然聞こえた背後からの高い声に、僕は首を斬られ亡骸になったダークエルフを想像してしまった。
ちょっと短めです…あけおめ