世界を救うお助けウーマン参上なり
何となく思い付いて投稿してみました。現在投稿中の『異世界召喚物語』が完結次第更新、若しくは同時に更新していきます。
今から丁度1年前の話をしよう。
街を歩いていた僕は突然、美女に声をかけられた。風変わりな容姿で、髪も染めたとは思えない程綺麗な薄緑色で、とても自然だった。
「君に声をかけたのは単なる偶然なんだよね。そこに居たから声をかけたっていうか、なんか話しかけやすそうで頼れそうだったっていうか。」
なんて目の前の美女は切り出すが、そんな事は知ったこっちゃない。さっさと用件をお聞きしたいところだった。
「はあ…日本語お上手ですね。外国からいらっしゃったんですか?」
「んーん?私は異世界からいらっしゃったのだ。世界を救うお助けウーマン参上なり。」
この人の出身国のジョークか何かだと最初は思っていた。そう、最初は。
「あっ、はい。ちょっと急いでるんでこれで。」
「まあまあ、そう冷たくしないで話を聞いてちょうだいな。実はさ、色々とやばい状況なんだ。」
典型的な塩対応をして立ち去りたかったのが本音だが、引き止められてしまった。
ここで無視して立ち去れば変な事に巻き込まれなかったんだろうか、なんて事を今でも後悔している。
「やばい状況…何か深刻な問題でも?」
「私がさっきまで住んでた世界に吸血鬼とかデュラハンやらが居るんだけどさ、それがこっちに来ちゃってるのさ。」
「成程。その話は僕が今から向かうバイトの面接とどっちが重要ですか?」
美女は即答する。
「そんなん、10対0で君のコールド負けだよ。下手したらもう血吸われてるかもよ?君を担当する面接官」
「…それで、僕に何か出来ることでもあるんでしょうか?何か出来るから僕に話しかけたのでしょう?」
またもや即答する。
「無いよ?今のままじゃ返り討ちか殺されるだけだ。だから私が力を分けてあげよう。」
勝手に話を進められても困る。僕は世界を救うヒーローなんかになる気は全く無いし、こちらの都合も考えて頂きたい。
「お断りします。申し訳ないですが他の方にその話をしてください。他の方達も断ると思いますが」
今度こそ立ち去ろうとした時、美女が笑い出す。何とも品の無い笑い方だった。
「全く、大人びてるね〜星流君は。いや、大人ぶってるのかな?」
星流。読み方はらいるだ。俗に言うキラキラネームである。何故読み方を知っているのかと言うと、美女が口にしたその名前は紛れもなく僕の本名だからだ。
「…まだ名乗った覚えは無いのですが、どういう事でしょうか?」
「そうだね、私も名乗ってないし名乗られてない。然し私は星流くんの家族の名前も知っている。」
「ふむ、つまり話しかけたのは偶然そこに居たからでは無かったと?」
美女は問われると満面の笑みを見せた。生憎、そんな笑顔で誤魔化される脳は持っていない。
「うん、必然だ。更に言うと星流くんがここに来るのを待ってた。」
「…推測ですが」
そんな気がした。
「どうぞ?」
「この近くに」
気がしたというより、見たのだ。
「うんうん、何が居る?」
「吸血鬼が居る。」
街の人が日光に照らされ灰になっていくのを。
「正解。見ててね星流くん。気が変わってくれたら嬉しいな。」
…不器用にウインクをして何処かへ行ってしまった。