月
満月を見ている。
明るい月をただ、見ている。
手を伸ばしてみた。
手が届くわけがない。そう思っていたが、簡単に取れた。
なんとなく美味しそうに見えたので、少しだけかじってみた。
ビスケットのように固かったが、少し甘く美味しかった。
ふと、夜空を見上げて考えた。
月が欠けていることに気付かれたら、怒られるかもしれない。
私だけの月じゃない。みんなの月だから。
私だけ、こっそり月をかじったことがばれたら怒られるかもしれない。
少しだけかじった月を、元の場所に戻した。
明日になって、もし誰にも怒られなかったら、また月をかじりたい。
そう思いながら、布団に潜り込んだ。
次の日、また次の日と月をかじってみたけれど、誰にも怒られなかった。
でも、このままじゃ月がなくなってしまう。あと、ちょっとかじったら月はなくなってしまう。
困ったけれど、私は月を持っていない。誰も月は持ってないだろう。
明日起きたら、お店に行って月を探してみよう。
そう思いながら、布団に潜り込んだ。
お店の人に、月はないかと尋ねてみた。お店に月は、ないと言われた。
お店に月はなかったけれど、月に見えるビスケットがあった。
今日、月を食べてしまったら、このビスケットを置いておこう。
きっと、誰にも気付かれない。
ただ、月を見ていて食べられるんじゃないかと。
ビスケットか、クッキーなのか、かじってみたら意外と美味しいのではないかなどと、訳の分からないことを考えたので、書いてみた次第です。




