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僕と12の王ーー13番目の召喚獣ーー  作者: ラフフ
プロローグ〜異邦の騎士と月の姫〜
8/12

カズマ5

プロローグ、ようやく終わりました。ブックマークしてくださった方、ポイント評価してくださった方、励みにさせていただいています。ありがとうございます。今年はたぶんこれで投稿は終わりです。それではよいお年を。

 封印?


 ユノの気配はただ事ではない。

 聴衆たちも熱気を帯びて、いまにも刃を掲げでもしそうだ。

 彼女らの期待を背負うように服のポケットから怪しげな筆を取り出したユノは、空中に向かって黒いインクを書きつけていく。

 人間業とは思えないような速さだ。

 さすが天使。

 ユノはぶつぶつと何かわからない単語を口にしながらそれを文字にする。

 文字は重なり、文章となり、物語のようなものを綴っていく。

 その舞いのような動作にも、何もない空間に文字が浮かぶ様子にも、思わず見惚れてしまいそうになる。


 だが、このままではまずいと、鋭敏になった本能が告げる。

 それは小動物特有の、危険を察知する能力だったのかもしれない。

 和馬はいま何が起こっているか全く理解できていなかったが、この場は危険だと判断した。

 どうする?どうする?

 周囲は天使たち――和馬の敵でいっぱいだ。


 ヒュッ。


 そのとき、後ろから頬を撫でる一筋の風が吹いた。

 こちらだ、と導くように。

 振り向く。

 窓がほんの少しだけ開いていた。

 後ろにも天使が控えていたことに気が付いてぎょっとしたが、恐れるより前に身体が動いていた。


 大理石の柱のような天使たちの足の隙間をくぐるように通り抜けていく。

 パンツを見ている暇はない。

 掴まえようとする動作をしたものもいた。

 が、いまの和馬にはそれがひどくのろく感じられた。

 難なく躱す。

 スローモーションビデオのなか一人、いや一匹だけが早送りさせられてるみたいな。


 和馬は壁を蹴り上り、窓の桟に上る。

 ユノが後ろから「逃がしません!」と毛先の黒い筆を切るように動かした。

 たぶん物語を書き終わったのだ。

 俺が呼び出された時と同じ。そんな気がした。

 黒い文字が飛んでくる。

 あれはまずい。なにかわからないがとにかくまずい。


 窓の下を見る余裕はなかった。

 和馬は空中に飛び出る。

 背後にはすぐ黒い文字が迫っていて、背中の毛先をかすめた。


「トーーーーウ」

 ヒーローが空を飛ぶアニメを思い出し、それがいまの自分の姿と重なった。


――落ちる


「うおおおおおおお」


 落ちてたまるか。

 前脚と後脚を全力で開き、空気の塊を飛膜で受ける。

 下から吹き付ける風が飛び方を知らない和馬を支えてくれている。

 頭上を見上げると、黒い塊があらぬ方向に飛んで行っていた。


 よっとと、とバランスをいくらか調整しながら、

「何なんだよこれは!」

 と誰に向かってか叫ぶ。


 心臓の鼓動が鳴りやまないまま、和馬は見たことも聞いたこともない、けれどどこか懐かしい街並みを滑空していった。


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