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僕と12の王ーー13番目の召喚獣ーー  作者: ラフフ
プロローグ〜異邦の騎士と月の姫〜
4/12

Juno2

魔法陣が盛大な光を放ち、教室を超えて辺り一面を眩く照らす。

 目を瞑っていたユノの瞼ごしにもわかる。雷が目の前に走ったかのように強烈な閃光だった。


「きゃあ」


 思わず情けない声がでた。が、周りのみんなはユノよりも狼狽えていたのでその声は聞こえていないようだった。

 光は一段と強くなる。

 誰も目を開けられない。


 そこからは音も聞こえなくなった。

 光がすべてを飲みこんでしまった。

 静寂。


 耳が痛くなるくらいの長い無音が続いた。

 今まで召喚獣は何度も呼び出しきた経験のあるユノもこんな体験は初めてだった。

 ほんの少しだけ、恐怖する。

 どれくらい時間が経ったのかも定かではない。

 ユノはようやく光量が減ったかと思う頃、そろそろと慎重に目を開けた。


 召喚陣のなかには一匹の獣がうつぶせに倒れていた。

 寝てるのかもしれない。

 どちらなのかわからないが、とにかく召喚は成功したのだという喜びが束の間ユノの心臓を跳ねさせる。

 だが、ユノはすぐに違和感に気が付いた。


 そこから這出た獣をよく見る。


 ――少年だった。


 私と同じくらいの年の、魔力も感じない、ただの黒髪の少年。

 人の姿を模した召喚獣はいないことはない。だけど、服など着ている完全な人型はユノも聞いたことがなかったし、なにより召喚獣の特徴である鎖が『彼』にはついていなかった。

 まるで獣としてではなく、通り名のとおり「騎士」として召喚されたかのようだ。

 そういえば服装もこの国の鎧とは随分違うが、何となく異国の騎士が着そうな全身が黒くカッチリとした様相。

 肩と襟のところは身を守るためいかにも丈夫そうで、前ボタンは金色の模様が入ったもので高貴さを感じられるし、靴は素材もわからないがとにかくピカピカと油を塗られたかのように手入れが行き届いていた。


 礼装?

 彼の恰好はそのまま社交界にも出られそうだった。


「うう・・・」


 苦しそうな声が彼の喉から漏れ出た。

 思わずユノは身構える。

『彼』を操るための手綱がユノの手にない。

 服など観察している場合などではなかった。

 召喚された獣にも関わらず、制御するための『鎖』がないなど召喚の際にもっともしてはいけない初歩的なミスだ。


 どうして?


 召喚の古代語を間違えたのか。

 そもそも「目的を果たすために」召喚された彼が『口上』も述べず、倒れたままなのもおかしい。

 召喚獣ならば早々に術者に対して「願い」伝える『口上』を述べ、利害を一致させる必要がある。お互いの利害が一致しなければ己の魔力の無駄な消費を防ぐために異界に帰るのが常道だった。

 魔力は感じない。服まで着ている人型。召喚獣として願いも言わず倒れたまま。

 おかしいことばかりだ。

 召喚獣として、『彼』は異質すぎる。


「これが『異邦の騎士』?」

 ユノの後ろで再びざわめきが大きくなっていく。

「魔力を感じないわ?」

「鎖もない」

特性(アルカナ)は?・・・服なんて着ていますわ」

「まさかユノさまが失敗?」


 うるさい、全部わかってる。

 ユノは思わず怒鳴りそうになったが、雑音に混じった一言でぐっとこらえることができた。


 特性・・・!

 そうだ、彼は一体何の特性を帯びた獣として召喚されたの?

炎獣(イフリート)』も『水獣(セイレーン)』もそれぞれのアルカナである物質を身に纏い、一目でどういった性質の能力を持つのかわかった。

 だが、彼は・・・

 黒髪に黒服。

 黒は不吉の暗示。もしかして『死』のアルカナ?


死獣(メメント)


 その考えが浮かんだ瞬間、ぶるっとユノに悪寒が走る。

 異邦の騎士は、かの伝説の化け物のことだったのだろうか。そうしてみればあの長い古代語の呪文にも納得がいく。

 死を司る獣の王。その姿をみたものはなく、敵にしても味方にしても恐れられるような凶兆の象徴が、鎖もなしにこの世界に解き放たれるなど、あってはならない。


「君は・・・」


 起き上がろうとする『彼』がユノの顔を見て、なにか呟いた。

 声が小さく聞き取れない。

 ぶるぶると生まれたての小鹿のように手足を踏んばって起き上がろうとする姿は何とも頼りなく見えた。


「これが本当に死獣の王?」


 一時の安堵にも似た気持ちとともに疑念が湧き上がる。いやそれよりも彼は・・・

「彼は・・・本当に『異邦の騎士』なの?」


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