中層へ
結局集まってみると
他にも相手を探している人も来ていた。
よかった、先に来て。
とにかく暫定でもデュオが成立した。
よし、コロニアに行こう、行こう。
隣でクスッと笑い声がする。
「何?そんなにコロニア探し、楽しみなの?」
リサが珍しそうに聞いてきた。
「な、何だよ。別にいいじゃないか」
「別にいいわよう? ただ、ここまで喜んでる人も珍しいなって」
「いいじゃん。喜んだって」
「いいと思うよ、そういうの。羨ましいって思う」
そうかな。幼いと言われると思ってたから、嬉しい。
授業がはじまり、降りる前の定型的な説明が始まった。
指定エリアから出ないこと、危険が迫ったら周りに知らせる事、単独行動はとらない事。
まあ、学校側としては責任があるからねえ。
ぼんやり聞いているとリョウが、すすすっと近づいてきた。
顔を前に向けたまま、小声で話してくる。
「暫定、決まったみたいだな」
「あ・・・うん、何とかなったよ」
「お前の顔は何とかなったっていう顔じゃねえぞ。ユルい」
「え?! そ、そう?!」
思わず声が大きくなった。
「ハイそこ。聞かないなら連れていかんぞ〜」
「す、すいません!」
リョウをにらむ。
「顔に出てるお前が悪い」
ニヤつくリョウ。
「ちょっと。私行けないの困るんですけど」
反対側から責めるリサ。
「ご、ごめん」
即座に謝る。
リョウはお構いなしに話しかけてくる。
「お前、好みだろ?」
「な、何が」
「とぼけてんじゃねえよ。そのままお願いしたら?」
「今日知り合ったばかりなんだけど」
「そんなの関係ないでしょ。いいから」
他人事だと思って。
「でも、こんな子いたかな。同属だから知ってるはずなんだけど」
「知らないんだ?」
「そうだな。ちょっと他聞いてみようかな」
「あ、うん。お願い」
「・・・やっぱ気に入ってんじゃん」
「!!」
もう話すのやめよ。
少し距離を取った。
リョウもこれ以上は言ってこない。
離れた分、リサに近づいてしまった。
「何コソコソ話してたのよ」
「え、あ、べ、別に別に別に」
「怪しすぎるんですけど」
顔が赤くなりそう。
ダメだ、ダメだダメだ。
「ねえ、話終わったよ、行こう」
中層には「大階段」を使って途中まで降りる。
上層と中層を繋ぐ柱に据え付けられた螺旋階段。
幅は大人が6人くらい並んでも、余るくらいの広さだ。
僕はここからの景色が嫌いではなかった。
まるで違う世界に来たかのような気持ちになる。
僕達の住む上層が天井のようになっているが、全てを覆っている訳ではない。
大小様々な隙間があり、そこから光が差し込む。
雨上がりに雲の隙間から見える陽射しのように。
下の方を見れば星々の輝きのように小さな光が見える。あれがコロニアの光だ。
あと5分程で、層間エレベーターの入り口だ。
「私あのエレベーターって苦手」
リサが肩をすくめて言う。
「なんで? あったら楽じゃない」
「そりゃあったほうがいいわよ、1キロも階段で降りたくないし。そういうことじゃなくて」
「そういうことじゃなくて?」
「あのフワッてなるあれがやなの」
「あーあれね」
層間エレベーターは大きい。
1度に50名は載せられる。
その分かわからないけど、加速と減速の時間が長く、軽く酔う人がいるくらいだ。
その事なら、納得だ。
「じゃ、気分転換に、降りてからの事を話そうよ」
「いいわよ。プランは?」
「僕達は暫定だし、少し大きめなのを狙いたい」
「吸収率ね」
「そう。リサはまだ大丈夫?」
「まあ、一応は」
「僕は大丈夫じゃないに半歩入ってる感じ。だから」
「まあ、わかったわ。少し歩くのね」
「そういう事。危険な事はしないし、そうなったら逃げるつもり」
「多少なら大丈夫だから。今日は任せる」
「ありがとう」
今日だけでなく、できれば次も次もお願いしたいが、今言う事じゃないし。
それよりコアに触れて共振してもらわないと、それ以前の話だ。
でも・・・いつ言おう。
なんだかんだ話してる間にエレベーターは中層に到着した。
「確かに話してるほうが気にならなかった」
「でしょ?」
「帰りもお願いね」
下から覗き込むように言われた。
それ、弱いからやめてもらえない?
それか、いつもやってくれないかな。
読まれましたか。
ありがとうございます。
また、目に触れるようでしたら、よろしくお願いします。