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ユータの憂鬱

僕はユータ。

ルサ属のユータ。


ノルダ総合学院の2年になったばかり。

みんな、もう学年の半分くらいはデュオの相手を見つけているのに、僕はまだ、全然アテがない。


デュオは胸に埋め込まれいるコアの色が成人として認められる(ブルーア)になるまでに組む、ペアの事だ。

そしてブルーアになる為には、デュオで「コロニア」を見つけて、(アニモ)を吸収する必要がある。

実は相手を見つけるのはそんなに難しくない。

少しでもお互いのコア同士が共振すればそれでオッケーなんだ。


だけど、僕のような「コロニアハンター」になりたいと思う人は、その現象にこだわる。

大きな音が鳴るほどの共鳴とならないと、ハンターとしての先がないからだ。


しかしそんな相手はなかなかいない。何千人にひとりいるか、いないか。

もし、そうなったら生涯の相手といっても言い過ぎじゃないくらいの人になる。

実際、そんなラブストーリーも映画なんかでは、人気ジャンルだ。


だからじゃないけど、なかなか決まらない。

もう、最近まで手当たり次第でやってたから、変な噂がたってしまってる。

ああ、参ったなあ・・・。


大きめの白い雲が漂う、そんな陽気な日。

そんな事を考えながら、僕はお昼休みに校内のベンチでぼーっとしている。


「お、ユータ。"運命空振り男”・・・だっけ? なあ、お前そろそろヤバいと思うけど?まだそんな相手探してんのか?」

「うるさいなあ。まだいる、はずなんだよ」

そう信じてる。


話しかけてきたのはリョウ、ケン属のリョウだ。

背が高く、鼻筋がすっと通った、彫りの深いイケメン。

余裕ぶってるリョウも、先月決まったばかり。

ただ、こいつの場合は選び放題で遅れたタイプ。

リョウの相手はミズネ属のナナミ。丸顔で目が大きく、可愛い感じの子だ。メガネがよく似合う。

リョウの後ろにいて、長めの尻尾をクルクルさせている。

ナナミが横から入ってきた。


「ユータ、本当に大丈夫?」

「うーん。ちょっとマズいかな」

「ちゃんとさ、声かけたり、お願いしてる?」

「うーん、最近はあんまり」

実は噂が先行してやりにくい。

一度可愛い子にテンパッて、運命の人に、って言ってしまった。

結果は共振もせず。

そこから色々と噂がたってしまって、敬遠されることもしばしば。


「あんまり追い詰めるなよ」

一応、フォローしてくれるリョウ。

「でもこのままじゃさあ」

一応、心配してくれるナナミ。


ナナミは家が近所で、ちょっと前から知ってた分、話しやすい。幼馴染要素はない。

普通はないんだ、そういうの。


自分が焦り気味なのも、わかってるんだ。

まだ時間もあるけど、「放逐」されるのは嫌だ。


僕たちは生まれてすぐに、胸にコアを埋め込まれる。

まだよく習ってないけど、これがない時代に人類は一度おかしくなりかけたらしい。

学校にいる間、コアの色はほとんどが(ブランカ)だ。

卒業間近で大体成人の基準となるブルーアになる。


そして、これで僕のアニモバロメータがわかる。


僕のバロメータは今0.83。最近標準より下になってきた。

放逐は自我を保てなくなる0.74を切ったらなんだけど、あまり考えないようにしてる。

ただ、早く決めないと僕の数値がいつ急に下がり始めるか分からない。


これまでは色々な人と暫定デュオを組ませてもらっていんたんだけど、暫定は吸収率が悪く、維持がやっと。

バロメータを増やしていくには、正式なデュオを組まないと駄目なんだ。

コアが共振した上で「気持ちが通ってないと」ってやつ。


学校側も何段かの救済措置があるみたいなんだけど、そうなると、「僕はデュオの相手がいませんでした」と宣言することと同じ。

とても恥ずかしい。

そんなの死んでもいやだ。


「本当、心配です」

アメリが話しかけてきた。

ギザ属特有の長い耳をペタン、と垂らして顔を覗かせてる。大人しい感じの、物静かで愛嬌があって、ああ、本当、守りたくなる。

実はこの子が、僕を振った相手だ。


以前にお願いしたとき、なんとか聞こえるくらいの音が鳴った。

僕は焦っていたのもあって、即お願いしたんだけど、結果はノー、理由は既に決まっていたからだ。

だったら僕のお願いを受けないでほしかったよ。

かなり強引にお願いした僕も悪かったけど。


既にデュオが決まっていた場合、横から取るような真似はタブーとなっている。

間にはいった人のコアが劣化する場合があるらしい。


「ありがとう。大丈夫だよ」

大丈夫じゃないのははアメリのせいだよ、とは口が裂けても言えない。


「ユータには借りがあるしなぁ」

イクロが話しかけてくる。

やめろ。それ以上言うな。

イクロは僕が玉砕してる事を知ってる。

もう立ち直ってるけど、思い出すとつらい。


「なんだよ借りって」

「なんでもないんだよ、リョウ」

「何隠してんのよ」

「ユータ君、なんでも力になります」

力になってくれなかったじゃないかアメリ。とも、言えない。


「まあ、俺とユータの秘密だよ。俺に出来る事があったらなんでも言ってくれな」

ラトコ属のイクロは僕から見ても、頼り甲斐のあるナイスガイだ。

アメリが受け入れたのもわかる。


「もう、先行くよ」

立ち上がる。


「おう、また後でな」

リョウが手を振った。


次の授業は中層にあるコロニア探しだ。

毎週、かならず降りる。


コロニアってのは、僕たちに必要なアニモが蓄積されている結晶の集合体のこと。中層以下で見つかるけど・・・本当は危険な場所なんだ。


それは、インセクトと呼ばれる硬い殻をもつ生物が集まっているから。

この辺は学校でも駆除していることもあり、大きなインセクトは現れない。

僕にとっては、この危険を冒してでもハンターになりたい理由があった。


アニモをまだ吸収していないコロニアは様々な色、明るさで輝く。

僕はこの吸収前の手付かずの美しさに取り憑かれていた。

いろんな場所を探索して、いろんなコロニアを見たい。

本当は楽しみでしょうがなかったのに・・・この前までお願いしていた暫定デュオの相手は、先週決まったって連絡があった。

また相手を探す、これだけでも憂鬱だ。


とぼとぼと集合場所に向かった。

相手のいない人は、時間より早く来て、暫定デュオを決める。


ついてみると・・・誰もいない。


「え?! 僕ひとり?」

思わず声に出しちゃった。

どうしよう。1人?もう誰もいないの?

まさかそんなことって。


「えっと、ちゃんといるけど・・・」

集合場所の端っこから声が聞こえた。


「えっ」

振り向いてみると、そこには長く輝く白銀の髪を持つ女の子がいた。褐色の肌、華奢に見えるが芯のある体つき。

太めの長い尻尾。ラトコ属かな。

ハンター向きだ。でも、それよりも。

とても、吸い込まれるような澄んだ目をしている。

なんだか面白くなさそうな顔をしてるけど・・・笑顔がみたいな。

もっと話をしたい。見つめていたい。

あ、話題、話題。


「えっと、あの、そのう」

自分でも落第点だよこれ。


そんな言葉をよそに、ふーっと、ひと呼吸聞こえた後

「誰も来ないかと思った。安心したぁ」

「き、君、ひとりなの?」

「ひとりじゃだめ?なんかいけない?」

少し怒った感じ。

でも覗き込むような表情が見られてドキドキしてる。


「あのよかったら、暫定で組みませんか?」

何故敬語だ。

「はい、お願いします。ってお互い選べないけどね」

僕は誰が来ても、もう他を選ぶつもりないけど。


「僕はユータ。名前教えてもらえる?」

「私はリサ。もう少し自信もったらどう?」

笑いながらリサは言った。

やっぱり、予想していた以上に、いい笑顔だ。


リサは少し戸惑った顔をしたが、よろしく、と準備をし始める。


「準備しなよ、遅れるよ」

僕は笑った顔のままで、しばらく立っていた事に赤面する。

変なうすら笑いをしてたんじゃないかと後で後悔したのは、悶えるほど思い出したくない事実だ。


でも・・・この子とデュオを組みたい。

今、僕は素直にそう思ってる。

最後まで読んでいただいたのでしょうか。

ありがとうございます。


途中、関係のない短編を書いたりするのは気分転換です。途中、間が空いたらスランプ中です。


でも、気持ちが折れない限り、終わらせたいとおもってます。

よろしくお願いいたします。

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