自分から死ぬとはこうなるか
少……自殺志願者の少年
赤……血濡れた赤髪少女・少田焼鋤
前回からの続き物です
少「っっぶねぇ!! 痛えじゃねえか!!」
少年の首は確かに地面に落ちた、体とつながったまま。
間一髪、すれすれぎりぎりにナイフをかわしたのだ。
赤「痛いのは避けたからだろう? 死ぬならそのぐらいの痛みは痛みなんかではないと思うぞ」
少「そりゃ、おっお前がそんなもので殺そうとするからだろうが!!」
赤「でも痛い殺し方ではないぞ? 一瞬だ、スパッと泣き別れだからな、痛みを感じる暇はない」
少「いやいや、そのスパって泣き別れた後、意識のある数舜、アドレナリン分泌から徐々に解放されていく時の痛みあるっだろ絶対に!!」
赤「絶対? 死んだこともないのにそんな事言えないだろう?」
少「それ、ブーメランだかんな?」
赤「君だってその縄で首を絞めて死ぬ気だろう? それだって苦しいぞ、それと何が違う?」
少「はん! これは楽に死ねるって友達が言っていたからそんな事は無いぜ!」
赤「その友達というのは小学六年生の頃に知り合い、中学に上がったら声すらかけてもらえずに得痛く裏切られた沼津 健君の事かい? そんな奴の事をなんで信じられる?」
少「うるさい! お前にタケちゃんの何が分かる!?」
赤「わかるよ、逆に沼津君がきみに声をかけなかった理由、それをきみ自身は知っているのかな? うん?」
少「そ、それはきっと新しい環境に新しいやつがたくさんいたからで……」
赤「それときみに声をかけない事は全く関係ない、正解はきみの背景が孤児だからだ、彼はきみを差別したんだよ、それもきみと出会った小学生のころからね」
少「なっなんだ、と?」
悲惨な人生に追い打ちをかける事実、哀れな少年を月明かりが照らす。
少「う、うそ、だろ、信じられるかよそんな事!?」
赤「ならきみとタケちゃんとやらの友情の日々を思い返してみろ、おのずと見えてくるはずだ」
言われて少年は思い返す、そして思い当たってしまう、残酷な事実に。
赤「ほら、わたしの言った通りだろう?」
少「ほんとだ、タケちゃんは、いや、沼津のクソ野郎! 俺をだましてあざ笑っていた!!」
赤「その友人が言っていた自殺方法を信じていいのか?」
少「まったく信じられねえ、あのクソ野郎、そういえばあの野郎が俺に楽な死に方を教えること自体おかしいじゃねえか!!」
赤「その通り、やっと気づいたね、ならわたしに殺されてくれるかな?」
少「わかった、お願いする」
赤「よし、聞いたぞ、また聞いてしまったぞ、ちくしょう、いくぞ」
またも振り上げられる焼鋤のナイフ、銀閃、一直線に少年の首へ。しかしその顔は苦しみに満ち満ちてのイヤイヤのモノが少しこもっていた。
少「ちょっとまてまて、そんな顔されると困る、俺は全く関係ない人間だとしても苦しんでいたらこっちも苦しみを味わっちまうちっぽけな人間だからな」
赤「それをやさしさと言えない所に少年の悲惨な人生が見えてわたしはなんだか悲しくなってしまったよ」
真っ赤な少女の頬に涙一筋。
少「悲しむなよ、俺の人生を赤の他人が勝手に悲しんでんじゃねえよ」
赤「あ、あの、実はだね」
少「とりあえず何故かポケットに入ってたハンカチをやる、それで涙を拭いてからだ」
赤「やっぱりきみは優しいよ」
少年の手から少女の手に渡るやさしさ、少年の顔から血が垂れて赤いやさしさだった。
赤「それでね、実は、今からわたしはきみに嫌悪されなければいけないかもしれなくて恐怖に打ち震えているんだけどどうだろう」
少「俺を殺すんだ、いまさら何を言っても嫌わねえ、お前は人の為に泣けるいい奴だからな」
赤「わたしがいい人なわけないよ、それに人のためじゃない、きみのためだから泣くんだ」
少「は? どういう事だ!?」
赤「わたしの名前、さっき聞いただろう? 君の名前は何と言ったかな?」
少「俺? 俺の名前は少田生燃……苗字が偶然にもおんなじだがそれがどうした?」
赤「わからないのも無理はない、か……きみに言おう、わたしはきみのお姉さんなんだ!」
少「……はぇ?」
今明かされる衝撃の事実、少年と少女は生き別れの家族だったのだ。
赤「わたしは生まれ、きみがその後に生まれたんだ、だけど家族旅行の日にホテルできみは父さんと母さんと共に立てこもり犯の人質になった、わたしはその時大浴場でお風呂に入っていたから何もなかったがきみは立てこもり犯にさらわれ、その後に行方不明になっていたんだ、そしてわたしがきみを見つけたのは去年だった、わたしはその時には自殺者を殺す今の組織に身を置いていて、次に自殺しそうな人間を探している時だった、街でそんな人間を探しているとわたしはきみを見かけた、いかにも自殺しそうな目つきをしていたね」
少「まあ、その時には自殺も人生設計図の選択肢に入れてたからな」
赤「それできみの事を調べて、なんとなくわたしと顔が似ているな、と思って失礼ながらきみが寝ている間に薬を打って、しかるべき機関に連れて行き検査をしたんだ、そしたらわたしと血縁関係だと分かってね、父さんと母さんはもう死んでいるしわたしには甥も姪もいない父さんにも母さんにも兄弟はないから、さらわれた弟だって気づいてね」
少「ほう、成程、それで俺の様子をずっと観察していてだから自殺するタイミングも死知っていたのか、納得だな」
赤「あれ納得だけ?怒っていないのかい? わたしがきみを見つけた時にすぐに声をかけて助けようとしなかった事を」
少「いんや、まったく、お前の事情もあるだろうし、今まで生きてきてつらかったのは世界が冷たいからだろうけど結局は全部俺の生き方のせいだからな、あっ! お前、じゃなくて姉ちゃんって呼んだ方がいいか?」
赤「それはきみの自由にしてくれ、わたしはきみの姉面できる人間じゃないからな」
少「そうか、で、姉ちゃんは俺が死ぬのが嫌、だけど俺は自殺しようとしているからそんなに悲しそうなのか」
赤「悲しそうじゃないぞ、ぜ、ぜんぜんそうん、ぞんな、そんな事ないんだからな!」
言っている割に顔はびしょぬれ、某子供向けアニメの顔がパンの奴だったら力が出ないだろう。
少「悲しがってるじゃないか、俺としては初対面だけど、姉ちゃんは血が繋がってるからなんとなくわかる、それに、俺は決めたぞ」
赤「へ? 何を決めたんだ?」
少「死ぬのをやめるってな」
赤「へ、ほ、は、ほんとに? 何で?」
少「俺はこの世界に一人ぼっちで、誰にも何とも思われていないと思ってた、だけど、一人じゃなかった、姉ちゃんがいて、俺を思ってくれてて、それなら自殺なんてできないじゃねえか」
赤「それで本当にいいのか? これまでも、そしてこれからもつらい人生が続くかもしれないんだよ?」
少「大丈夫、姉ちゃんがいると思えば何の問題もないさ」
赤「そう、そうか、嬉しいぞ少年……いや、生燃、わたしは今まで生きてきた中できみが生きていた事が一番うれしかったがそれ以上にきみが自殺をやめてくれたことが嬉しい」
少「そんなにか? 大げさだよ」
赤「嬉しいさ、きみを殺せない事がとても、きみの決意がとても」
少「ははは、大げさだって、あははは!」
赤「笑うな、本気なんだぞ! ……ふふ」
暗闇と月の光の混じる真夜中、近所迷惑なんて気にしない笑い声が響きわたった。
しかし、それで目覚めてしまった人々はあまりに幸せそうな笑い声に心が温まり、またぐっすり眠れたそうな。
赤「はは、ふぅ~、さて行こうか生燃、わたしの借りているマンションで兄弟水入らずしようぜ」
少「いいのか! ありがとう姉ちゃん! 家なんて何年ぶりだったかな~」
ひとしきり笑い幸せそうな家族二人、手をつないで帰る。
今日、孤独な少年は死んだ、そしてかけがえのない家族と共に新しい生燃となったのだ。
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