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TOGETHER  作者: SINO
三章 ノーセレクト
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解決に向けて

 本館のあちらこちらで、警官がスタッフから事情を聞いている。その中でも、主に受け付けに人が集中していたのは、犯人が押し入るには、正面入り口しかなかったからだろう。

 健もまた、呼び止められたが、無視して三階まで上がると、まっすぐ司令室に向かった。

 ドアは開け放してあり、鑑識員が床にうずくまっている。

 ただ、犯人の慕いはもう、運び去られていた。

 最初に駆けつけてきた警官の一人が彼を見つけて、私服の捜査員に、何やら耳打ちをしている。

 その捜査員が、近づいてきた。

「えっと、白木さん、でしたね」

「そうです」

と、部屋を見回したが、剣崎司令の姿がない。

 捜査員が言った。

「剣崎さんをお探しですか? 隣で事情を伺っているところです」

「ありがとう」

 廊下側から隣に行こうとした彼を、また捜査員が呼び止めた。

「その……あなたからもお話を伺いたいのですが?」

「申し訳ありませんが、時間がとれません。キャップからのお話だけではいけませんか?」

「できれば、あなたにも……」

 それが、捜査の基本だということは、健も充分に理解しているのだ。

 仕方なく、彼は捜査員を促して、隣の部屋に入っていった。

 そこでも、司令が別の捜査員と話をしていた。

「ケン? どうしたのだね?」

 話も途中に、司令が声を掛ける。

 健は、二人の捜査員を相手にしていた司令に、耳打ちをした。

「できれば人払いをお願いします。マモルのことで……」

 その名を聞いた途端、司令の表情が変わり、慌てぎみに話を中断すると捜査員たちを一度、部屋から退出させた。

 気が急いているのか、吃りながら健をソファに促して、自分もまた、腰を下ろす。

 健は、今朝方には大まかなことしか言わなかった詳細を話し始めた。

 実の治療の方法までは話せなかったが、彼が護に暗示をかけることが出来たこと、それによっておこることの何を、健が懸念していたかを伝えたのだ。

 恐らく、玲は剣崎司令に話していたはずだ。下手に護の記憶を抑え込めば実のことまで封じてしまう、と。

 だから、今まで何もできなかった。

 実だから、過去の記憶を封じることなく、接触ができなかった意識だけを押さえることができたのだと纏めたときの剣崎司令の表情は、きっと、何年も浮かべることができなかったはずの、最高の喜びが浮かんでいた。

 強い力で健の両手を掴み、そこに拝むように顔を乗せる。

「ようやく、だ。……本当に……君に任せて、よかった……」

「オレは何もしていませんよ。全部、ミノルのお陰です」

「そう。……ミノルがいてくれたからだ。だが、やはり君がマモルの本心を見抜いてくれた……。それがありがたい」

 そこまで恐縮されては、健も困惑するしかなく、優しく司令の手をほどくと、改めて表情を引き締めた。

「今日は彼を休ませます。ミノルにも無理はさせたくない。タカヒロには連絡を入れたんですが、向こうの事件での調査を頼まれているんで、資料室をお借りできますか?」

 即座に仕事に切り替えた健とは違い、司令は余韻を引きずっていたが、それでも、僅かに頷くと、腰をあげた。

 廊下側の壁にかかっている電話を取り上げ、資料室に連絡をいれる。

 やはり、野々村はまだ戻っていないらしい。サブチーフである水木里美に、資料室を使うことを伝えて、戻ってきた。

「それから、今朝のことでオレからも事情を聞きたいそうなんですが」

「協力してもらえるかね?」

「仕方がないでしょう。ただし、少しだけですよ。あとは任せます」

 健にとっては、犯人を引き渡したあとだ。これ以上の興味があるはずがなく、気が進まないまでも義務を果たすためだけに腰をあげた。



 地方の警察署では設備が完璧とはいえない、ということで、事件に携わっている捜査員の半分を伴って、地域の本部のコンピュータールームに押し掛けている隆宏は、健に調査の一部を任せると、改めて自分も防犯カメラのチェックに戻った。

 隣に座っていた絵里が声をかける。

「人物の認証が完璧とはいえないわよ? ここの設備じゃ……」

「わかっているよ。それでも、何もしないよりはマシだからね」

 彼らの目的は、まだ漠然としている。事件自体が、西口側と東口側で起こっているため、両方の道筋沿いの、残っている限りのカメラの映像から、被害者たちの姿を見つけることと、両側で共通して見られる人物がいないかどうかを確認しているのだ。

 昨日、健が戻ったあとで、絵里は本格的に捜査員たちを説得した。喧嘩腰であったことは彼女も捜査員たちも同じではあったが、それでも、隆宏の、弱腰の説得よりはよほど効果があったと言ってもいい。

 夜になって、高志と夕子には交差点での人の往来量を調べてもらっていたが、その間、隆宏と絵里は、二手に分かれて、防犯カメラの位置を確認することに専念した。

 その調査の間に、隆宏はようやく、調査方向を見いだしたのだ。

 キーワードが自転車であることは確実だ。その上、被害者がすべて、危険運転をしていた、となれば、金銭目的でも無差別でもない。

 被害者側に共通点はなくとも、必ず犯人側に、自転車に関する恨みがある。

 その確信した上で、カメラの記録を調べているのだ。

 そして、もう一方では、高志たちには残りの捜査員を任せ、改めて被害者たちの周辺事情を調べてもらっている。

 あとは、健に任せた調査が加われば、長く手がかりすら掴めなかったすべての事件の解決に近づけるだろう。

 目を凝らして集中しはじめた彼の目の前に、絵里の、微かに厳しく光る瞳が迫った。

「あまり根を詰めないでね。まだコンタクトが馴染まないでしょう。疲れたら休むのよ?」

 言葉こそ全く違うのだが、隆宏の脳裏に一瞬、実の姿が浮かんだ。

 驚いて彼女を見返したが、すぐに苦笑に変わる。

 まるで、女性版の実のような気遣いだな、と思いながら、隆宏は頷いた。



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