第3話
「はぁ……これからどうしよ……」
城の前では燈雅一人が座りこんでいた。辺りは夜の帳がおり、静まりかえっている。
「ちっ……駄目だ、あいつらだけは絶対許せねぇ」
王様とあの三人だけは絶対に許さん。王様に関しては言ってる事が無茶苦茶すぎる。クソだなあんな奴。あの三人もそうだ。ここは異世界で常識が通じない事くらい分かるだろ。それなのに止めもせず笑うとはな。あいつらとはもう関わりたくもねぇ。
あーイライラするっ!
ふぅ……落ち着け、深呼吸だ。スーハー……
よし、落ち着いた。と同時に困ったな。どこで寝よう。
「宿に泊まる金もないしな〜…… あっ、宿の場所すらしらねーわ………」
どこかへ行く当てもないが、このままでは駄目だと思いとりあえず動く事にする。
「まあ一応街の中だし、どこで寝ても危険はないだろう。これだけ大きな街だ。スラム街でもあるだろうし、そこで空き家でも探すか」
そんな事をつぶやいたりしながら街のはずれの方へ歩いて行った。
ーー数分後ーー
いやー、今日一日はマジ疲れたわ。実際、頭の中でまだ整理ついてないし……
なんだかんだスラムまできたけど、
「さすがに、整備されなさすぎじゃね?」
本当、すごい差だな!? 今来てみた道を振り返って見るとそこは街灯が立ち並んで、ゴミ一つすら落ちてないのに、ちょっと行ったすぐそこのスラムは行くのを躊躇う程汚い。
あの王様、勇者とか呼ぶまえに自分の国の中をどうにかしろよ!? こっちの方がよっぽど簡単な問題だろ……
「まっ、俺は世界を救わなくていいらしいから、俺には関係ねーな」
「………寝る場所探そ」
おっ、丁度いい感じの空き家はっけ〜ん!
今夜の俺の宿はあそこだ!
中を確認しよ〜
「お邪魔しまーす」
「あぁっ? なんだテメェ!?」
おっと〜、どうやら先約がいたらしい。
どうする?逃げるか?いや男なら戦うべきだっ!!
「すいませ〜ん。今日ここで寝たいんで、ここ出て行ってくださ〜い」
「ふざけた事ぬかしてんじゃねーぞっ!!」
えっ? なにポケットからナイフなんて出してんの?
俺、素手! 素手だから!! そっちも素手にして下さいよ〜。
「おらあぁぁぁっ!」
「うわっっ」
男のナイフが燈雅の目の前ギリギリを通過する。その後咄嗟に相手の腹を蹴った。
「ぐほぉおっ」
蹴った後すぐにバックステップをする。
危ねーな、顔狙ってただろ。まっ、当たり前か。さて、どう反撃する? 武器はねーしな。う〜ん……
あっ!! 魔法だ。魔法がある!!
なんだ簡単じゃ〜ん。遠くから撃ってりゃいいだけだし………
駄目だよっ!? 呪文知らねー上に発動させ方も知らんわっ!どーする?どーする?
「ガキが……なめやがってえぇぇえぇ!」
や、ば、い、 完全にキレてる。
ええーい。こうなりゃヤケクソだぁぁぁぁっ。確か属性は水と火だった筈だ!とりあえず魔力は手に!
「水球! ウォーターボール! ウォータージェット! ……………」
くそっ!何でも良いから出ろぉぉお!
『アクアボール!』
「があぁあっ」
来た!! おお、魔法が使えた! やばい、今めちゃくちゃ感動している!!
「お前……冷てぇーんだよっ!」
効いてない〜 もー誰か助けてくれぇ〜〜。こうなったら一か八か…
「魔法極大化!」
うわ、冗談半分だったのに発動したか?
身体が…重いっっ いくぞ!!!
『アクアボールッッ』
マジか…目の前に直径5mはあろうかという水球があるよ……
「な、なんだこれはあぁぁガバババ…」
水に当たった衝撃と息が出来なくて気絶か……
すごいな、通常だと手の平サイズ位だった…の……に?
やばい、クラクラしてきた……立ってらんねぇ…
気が………とお……く……………な……
燈雅はそのまま倒れ、気を失った。