第32話
遅くなりました。久しぶりの投稿です。
それと第29話の「コロシアムで命を賭ける」は変更しました。こちらの都合で急に変えてしまいすいませんm(_ _)m
『魔法極大化!』
うぅ……、相変わらず身体に負担かかるなぁこれは。まあ仕方ない、攻撃を当てるには俺にはこれしか思いつかねぇ。
闘技場の端の方でソートルアが姿を現す。恐らく大きな魔力から強い攻撃が来ると思っているのだろう。自身の周りに防御壁を張っていた。
よし、早いとこ撃って決着をつけて仕舞おう。この魔力量の維持はきつすぎる。
「くらえ!『ファイアレインッ!』」
呪文詠唱と同時に闘技場全体を覆い尽くすほどの魔法陣が空に現れていた。
これなら問題なく当たりそうだな。今回は魔法極大化で集めた魔力はほとんど効果範囲に使ったからな。これで当たんなかったらシャレになんねぇよ。
もちろん威力も出来る限り全力にした。どうせあいつの防御壁もこの前の自動防壁と同じくらいなんだろう。だったら全力でいかなければ。
そういえば、何故か魔法を放つ前に騎士らしき人たちがこちらに向かって走ってきたな。
だが今気にしてる余裕は無い。魔力の使い過ぎでフラフラするのもあるが今は対戦相手を見るのが先決だ。
そう考え魔法が発動し、相手を見た時、一瞬何が起きているのか理解できなかった。相手のソートルアは闘技場いっぱいに降り注ぐ炎の矢にやすやすと防御壁を貫かれ、そのまま自身の身体にダメージを受けていた。
なんでだ、なんでこんなに簡単に防御壁破れてんだよ。この前はこんなんじゃ破れなかっただろ。
よく周りを見ると闘技場に入って来た騎士達も大きくダメージを受けていた。そしてソートルアや騎士達もこのまま攻撃を受け続けていたら命が危ないところまできていた。
「くそっ! 止まれ、止まれよぉおお!」
必死に魔法を止めようとするが一度発動した魔法は止まらない。しかも魔法極大化でブーストされてある為か、炎の矢が降り注ぐ時間は確実に長くなっていた。そうこうしている間にも魔法は確実に相手の命を削っていく。
そして魔法が止まった後、燈雅はその場にへたり込んでしまった。目の前に広がる光景は、燈雅に現実を突きつけるには充分だった。
動かなくなった人たちを見て最初に思ったのは恐怖。漠然とした恐怖の気持ちだった。
闘技場内に新たな騎士が入って来る。中には大きな杖を持っている人もいた。恐らく治癒魔法でも得意なのだろう。倒れている人たち急いで近づき魔法をかけていた。
こちらにも騎士が近づいてきた。どうせ俺は捕まるのだろう。そうなることは容易に想像出来た。
そういえば魔法を放った際にも騎士が走って来ていたな。そうか、相手を死に至らせると判断されたら止めに入られるんだっけ。説明にもあったのに何故忘れていたのだろう。覚えていれば相手を殺すことは無かったかもしれないのに……。
「おい、そのまま抵抗せずにいろ。これからお前を城の牢屋へ連れて行く。逃げるなんて事は考えないことだ」
一人の騎士がこちらに剣先を向けながら話しかける。その奥からは縄を持った騎士が走って来ていた。
この時、自分は捕らえられるという事をはっきりと自覚した。それはまた先程とは違った恐怖だった。捕まったあとに自分はどうされてしまうのかなどをめまぐるしく考え、恐怖にかられた。
「う…わぁ……うわぁああああああっ!」
「!っこのクソガキ!……何をしている! 早くそのガキを捕まえろ!」
気付いた時には走り出していた。そこにいること自体が自分を苦しめていた様に感じた。一刻も早くその場を離れようと燈雅は全力で闘技場の外へと飛び出していった。後ろからは騎士たちが追って来ている。その騎士たちの鎧のガシャガシャとした音がまた燈雅に捕まるといった恐怖を思い出させていた。
一体どれだけ走っただろう。気付いた時には見知らぬ森の中にいた。結構森の深くにいるのだろう。周りを見渡しても目に入るのは木々だけだった。
「はっ……はははっ…」
「俺は、人を殺したのか……」
俺が人を殺した。もうこの事態に頭がついていかない。あんなに簡単に人が死ぬとは思わなかった。そもそもあの魔法で防御壁を簡単に貫けるとは思わなかった。あれも自動防御と同じくらい硬いと……。
まて、何故俺は自動防御と同じくらいだと考えた? そもそも一回戦のあいつはあれに頼って勝って来た感じに見えた。それに比べ今回の相手は透明化の方が主体で防御壁はただの手段だった。だったら防御壁に硬さがそこまでない事くらい想像できたじゃないか。
はははっ……、俺は良く考えもせず魔法を放ち、さらに相手を殺した。最悪だ、最悪じゃないか。なんで俺は、こんな事してんだよ。
よくよく思い返してみれば俺、おかしいだろ。異世界に転移して、特に不安もなく一人で城を出て、モンスターとはいえ躊躇いなく命を奪い、相手が血を流す事に何にも思わなかった。
「は……ははは………、そうか、俺はもう人としておかしかったのか」
普通の人間なら嫌だと思ったり、したくない事を躊躇わずやる。俺は普通じゃなかったのか。
「いたぞっ! その森の奥だ!」
遠くの方から声が聞こえる。おそらく俺を追ってここまで来た騎士だろう。先頭を走っている何人かと目が合った。
やめてくれ。もう嫌だ、何もしたくない。もう誰も俺に構わないでくれよ。
「頼むから………」
「もうみんな俺の事なんてほっといてくれよぉおおおおっ!!」
叫びながら騎士たちのほうを向いた時、足下に現れた魔法陣からの光に視界が真っ白になった。
今回は今まで自分が考えていた展開を大きく変えました。そのため話が急に変わって面白くない、という方にはすいません。このまま行きます。
長い間投稿してませんでしたが、読んで下さった方、ブクマしたままの方、大変嬉しいです。ありがとうございます。
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