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第31話

「そういえばさ、宿業の証って結局何なんだ?」


 まったりと自分のステータスを眺めながら燈雅が質問する。


「えーとね、何て言えばいいのかしら。……普通に見える称号やスキルがあるでしょ? あれはこれから先も条件を満たせば手に入るけど、……宿業の証は生まれながらのものだと考えていいわ」

「なるほど」


 非常に分かりやすい説明だった。生まれながらかぁ〜、振り返ってみても(ろく)な事がなかったからな。証には期待出来そうにないな。


「おっと、解析が終わったみたいだ」

「何が出た? 見せてくれない?」

「ちょっと待ってくれ。先ずは自分で確認したい」


 さて、何が出るか。レッツオープン!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


〈〈宿業の証〉〉


・万族に嫌われる者

 ほぼ全ての種族の人や生き物に嫌われる者。人によって嫌われ度は様々であり、中には全く影響を受けない者もいる。


 効果

・敵対している相手の嫌われ度に応じて全ステータス上昇。上昇幅は1%〜50%


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 ……ちょっと待ってください? 万族に嫌われる者? いやいやいや、心当たりはあるけど流石にやめてほしいわ、これは。ショックが隠しきれないぞ。


「……顔面蒼白なところを見ると、そんなに良い証じゃなかったかしら?」


 そう言ってミレーヌとラグ爺がステータス画面を覗き込む。そして内容を理解したのか、ミレーヌは一言も喋らず固まった。


「ほっほっ、宿業の証は大体のものがその人の長所を表すものだと聞くが、ここまで極端に悪いものは見た事が無いのう」


 長所? 長所ってなんだよ。おかしいだろ!こんなの短所のうちにも入んねーよ! 問答無用で嫌われるとかもはや人かどうかも疑うわっ!


「あーうん、その……効果は中々良いものだと思うわよ?」

「そうじゃの、使い方次第ではかなり強そうじゃ

の」


「慰めなんていらねぇええええっ!」

…………

………

……

.






「落ち着いたかの?」

「ああ、だいぶ落ち着いたよ。取り乱して悪かったな」

「気にしなくていいわよ。面白いもの見れたし」


 はぁ、何度見ても説明は変わんないよな〜。すげぇショック……。まぁ前向きに行こう。敵対している相手って事は大抵は嫌われてるはずだ、ステータス上昇には期待できるな。


「さて、私は見たいもの見れたし帰るわね」

「おう、じゃあな」

「次に会えるのはコロシアムの中がいいわね」

「勘弁してくれよ」


 そう言ってミレーヌは宿から出て行った。本気(マジ)な話、勝負するのは極力避けたい。なんか色々と得体が知れないからな、絶対俺より強いだろ。痛いのは嫌いだ。


「あ……ミレーヌの証も聞いとけば良かったな。マグ爺の証は何なの?」

「……言わないぞ」

「はっ? 何でだよ」

「宿業の証はの、自分でステータス開示をしない限り他人に見られる事は無いんじゃ。それに中には強力なものもある為に、人に証を見せるなんて事をする人は普通はいないのぅ」

「いや、もっと早く言えよ! それさ!」


 嘘だろぉ、マジか。確かにあれ知られたら意識次第で俺のステータス上昇防げるじゃん。困るわぁ、本当に困る。それにもし、コロシアムでミレーヌと当たったら俺不利じゃん。ミレーヌの証、知らないし。


「ほっほっ、証が拡散しない事を願うばかりじゃのう」

「そうだな、ミレーヌがどこにいるかも分からんから口止めも出来ないしなぁ」


 まあ、頼めたとしても口止め出来るかは微妙だけどな。事と次第によっては脅されるなんて事もありそうだ。くそぉ、俺の中の美人なミレーヌのイメージが崩れていく……。


「……よし、俺は部屋に行って明日の試合でも考えてるわ。多分明日まで出てこないわ」


 そうマグ爺に言って自分の部屋に戻る。さて、気分でも入れ替えて、明日の試合を勝つための算段でもつけますか。……本音を言えば、これ以上ミレーヌの事を考えないようにしようとしてる。本当に悪人でない事を願いたい。












 さーて、今日は闘技大会三日目です。流石に三日目ともなると選手の控え室も人が減りますね。第三回戦の相手は誰でしょう。出来れば勝ちやすい相手がいいな。怪我したくないし。



「それでは本日の第一試合を始めます! トウガ・カミタニ選手はこちらに来てください!」


 いや、うん。だからね? 大きい声で呼ぶの止めてくれる? 周りからの視線が痛い。

 

 説明を聞いた限りではルールは同じだった。特に変更もなし。情報収集もしてない(出来ない)ので相手も知らない。まあ、大丈夫でしょう。昨日は結局、相手に勝ついい案は思いつかなかったが何とかなるだろ。


 色々と考えながらコロシアムの中に入る。と、同時にお馴染みのブーイング。もうブーイングには慣れました。こうゆうのはね、捉え方を変えるんですよ。これだけブーイングされるって事はそれだけ注目されてるって事だ。一種の主役ですよ、主役。………どちらかというと悪役(ヒール)だな。


『コロシアム第三回戦は〜〜〜トウガ・カミタニ対ソートルアだぁあ!! 果たして! 見る限り嫌われているトウガは、今まで一言も言葉を発しない無口の少女、ソートルアに勝てるのかぁあ!?』


 おお、会場の盛り上がりが凄い。なるほどね、確かに見た感じは魔術師というより剣士だな。持ってる得物はレイピアかな? うっかり心臓を一突きなんて事は避けたい。


『それではコロシアム第三回戦………始めぇええ!!』


 先ずは先手必勝! って、あれ? 相手がいません。どこに消えたか分からないが、ひとまず壁まで下がる。これなら視界にだけ気を配ればいい。


 コロシアム全体を見回している時、突然目の前にソートルアが現れ、レイピアを突き立ててくる。


「くっ!」


 ほぼ反射的に避ける事ができた。レイピアが頬を擦り、血が垂れる。


 いや、ちょっとこれやばい。レイピア、後ろの壁に半分くらいまで突き刺さってます。完全に殺しに来てんな。どうやって倒すか。


 とにかく、今は相手から離れる。しかし、どうやったかは分からんがあれはまずい。透明化出来るうえに絶対身体強化はいってるわ。じゃなきゃあの体格であの突きは出来ない。


「厄介すぎるだろ、透明化とか反則だわ」


 もう本当この一言に尽きる。頼むから透明化に弱点でもあってくれよ。


 そんな事を思っていると相手の姿が消える。くそっ、どうすれば勝てるか思いつかねえ。俺に今出来る事はそう無いしなぁ。


 また相手が目の前に現れ二度目の突きを放つ。だが今回はさっきより若干遠かったため安全に避けれた。でもさ、ちょっとやめてよ。それ避けるの全力だから考えがまとまんないだろ。


 また距離をとった時、一つ勝つ方法を思いつく。透明で当てらんないなら、コロシアムの中全体を攻撃すればいい。……久々にあれ使うか。疲れるけど勝つためには仕方がない。


『魔法極大化!!』


 燈雅の周りには膨大な魔力が集まって来た。

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