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第28話 Side勇者&魔族

 ーー ムーンウェルト国 城内 ーー



「はあぁぁぁあっ!」


 城内の修練場に、声と剣戟の音が響く。戦い合っているのは勇者塔矢と、この国の騎士団トップのハイアードだった。共に実力は拮抗しているように見えるが、確実に、じわりじわりとハイアードは押されていた


「くっ……!」


 このままではまずいと思い、一旦距離をとるため後ろへ下がる。だがそれを予想通りだとばかりに塔矢は的確に追撃してきた。

右手の甲に剣先をくらい、痛みに剣を握る力が弱まる。そしてすぐに剣を叩き落とされ首筋に刃を当てられた。


「……ふぅ、まいった。俺の負けだ」

「ようやくハイアードさんに勝てるようになりましたよ。最初の頃は負けてばっかだったのに、ご指導ありがとうございました」

「そうだな。俺が勝ってた頃が懐かしいよ。まあ俺が教えられる事はもう無いよ」


 互いに剣を収めながら修練場の出入口に向かう。そこには塔矢の仲間、真柴透美がいた。


「お疲れ〜。塔矢、ハイアードさんに勝てるようになったんだね! 凄いよ!」

「ありがとう。まあギリギリって感じだけど自分が強くなったって自信はあるよ」


 相変わらず塔矢と透美は仲が良い。

ほぼ常にと言ってもいいほど城内を一緒にいるところを見かける。


「そういえば純華はどうしたんだ? 一緒にいないかったのか?」


 ハイアードは声をかける。最近、純華は塔矢達といることが少ないため不思議に思ったのだろう。


「純華は……最近何か変なんだよ。誘っても来ないことも多いし。これでも結構心配してるんだ」

「ここに来る前にも声かけたんだよ? でも魔法の練習するからって訓練場に行っちゃった」

「そうか。わかった」


 ハイアードはこの時、純華に何か異変が起きてると思い、王へと報告しに行った。





 ーー 訓練場 ーー




「はぁ…はぁ…はぁ……」


 訓練場にいたのは純華一人だった。相当息を切らしているがそれは仕方ないだろう。なぜならつい先程まで、まるで別の事から意識を逸らそうとするかのように魔法を行使していたからだ。


 何かがおかしい。少し前から純華は、塔矢と透美の二人を見てそう思った。それにその違和感は日に日に増していき、不安になっていった。


 そしてその違和感を決定づけるような事態が起きた。塔矢が何の躊躇いも無く人を刺したのだ。それも相手は、同じくして異世界に呼ばれた神谷燈雅だったのだ。


 私は頭が混乱した。今まで日本で暮らしてきた人間がやすやすと人を刺す。それだけでなく、隣にいた透美ですら何も無かったかの様に塔矢の応援をしているのだ。これから先も二人が変わっていくと思うと、怖くなり一緒にいるのが辛くなった。


 そして今にいたる。何かをしていないと二人が人を刺すところを思い出してしまい、怖くなってしまうようだ。


「なんで……私だけ。いつも通り普通でいられるのかな……」


 普段は言わないような弱音を口にする。そしておもむろにステータスを開いた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

カシワギ ジュンカ


lv 24


HP  637/637

MP   24/505

STR  193

VIT   234

INT   639

MEN  216


【スキル】

・基本魔法 〈治癒〉〈風〉〈火〉・解析

・中級魔法 〈治癒〉


【称号】

・勇者の眷属  ・状態異常管理者

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 自分が普通でいられる理由は薄々分かっていた。称号の状態異常管理者のためだろう。効果に状態異常無効が有ったからだ。それでも何時、どのタイミングでやられているのかは分からなかった。


 気がつくと外はもう日が落ち始めていた。

そろそろ夕飯の時間なので訓練場を出て食堂へと向かう。途中で塔矢達と会い、話をしながら歩くがその間も二人からの違和感は(ぬぐ)えなかった。






 ーー 魔国ゼルタ 極夜城 ーー



 今、城の中の一室では幹部達を揃い会議が開かれていた。


「ではラグナト王よ、我々魔族は人間国、獣人国への侵略を止めるという事だな?」

「ああ、そうなる。これからは兵力の強化とルクセス派の魔族達の制圧がメインとなる」

「なっ!? 今のままでは我々での制圧は無理だ! よりにもよってルクセスに着いて行ったのは主力の二人なのだぞ!」


 ラグナトの発言に幹部の一人が声をあげる。それもそうだろう、いまこの場にいるはずの幹部は五人中三人しかいない。


「何も今すぐの話ではない。まずは兵力の方から

だ。それより、ルクセス達の動きはどうだ?」

「今はそれほどの動きはないかと。それとどうやら主な拠点は魔王城を使っているようです」

「魔王城か……以前に使っていたところか」


 ラグナトの言葉に一番近くにいた者が答える。だがその顔には若干の焦りが見て取れた。


「どうした。何か懸念することでもあるのか?」

「はい……ルクセスは一時期魔王をしていたために、魔王城の…その……召喚が使えるんです」


 この発言に場はざわめく。どうやら皆はルクセスが召喚を使えないものだと思っていたらしい。


「なるほど……召喚か。確かにこちらに不利な状況になる可能性もある。だがあの召喚は完璧ではな

い。確かこの世界から一人を呼び寄せ力を与えるものだったはずだ。それにまだ魔法陣が無事に残っているとは考えにくい。新たに書き直すのにも時間がかかるだろう」

「はい、けれどもあちらに加担する者が召喚される可能性もあります。十分な対策を練るべきです」


 このように今魔界では、ルクセス達を止めるための動きがなされていた。




 ーー 魔王城 ーー



 魔王城の玉座の間にルクセスが入って来て腰をかける。その様子は明らかに疲れていた。


「ふぅ、ひとまず城の整備は終わったな。おいっ! 下級魔族!」

「はっ、お呼びですか。ルクセス王」


 ルクセスの声に、どこからともなく人がやってくる。


「整備が終わったんだ、下級魔族を集め戦闘訓練を行え。それを下級魔族共に伝えろ」

「かしこまりました」


 ルクセスは下級魔族達に指示を出すとまたすぐに立ち上がり、玉座の後ろへ向かう。そして後ろにある壁に手をつき呪文の詠唱を始めた。


『絶対なる加護、揺るぎない精神、全てを合わせ持つ魔神の使者を召喚するために、この道を選ぶ』


 すると壁に魔法陣のようなものが描かれ、地下へと続く階段が現れた。


 ルクセスは地下へと降りてゆく。徐々に暗さを増していくのと反比例するかのように魔力濃度が上がっていく。しばらく進むと小さな小部屋に辿りついた。小部屋の中は壁、床、天井とびっしりと魔法陣が描かれていた。


「この部屋があるってことは、まだ召喚は行えるな。ただ魔法陣が消えかかっている。書き直さなければな」


 ルクセスはゆっくりと笑みを浮かべこの部屋を立ち去った。

水曜あたりにこれまでの登場人物、国などをざっと説明したのを出そうかと思ってます。

あくまでざっとです。不思議な点や間違いがあったさいはすいません。

教えて頂けると助かります。


いつも読んでくださってる皆さんあたありがとうございます!

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