第9話 Side勇者
「あいつらは、今どんな感じだ?」
「はっ! 只今は城の騎士達と一緒に剣技や、魔法使いと魔法の鍛錬に励んでおります!」
「うむ、分かった。もう下がって良いぞ」
「はっ!」
今、城の中ではこの様な会話が広げられていた。
「中々勇者の訓練は順調な様じゃな」
「はい、そうでございますね」
王の発言に神官が答える。
「出来るだけ強くなって欲しいものだ。我の計画には強い者は幾らでも欲しいからな」
「まあ、今回が駄目だったら次の勇者を呼べばいいだけだか……、金がかかるからな。それは極力避けたい」
「それでは、今の勇者には尚更強くなって欲しいものですね」
「全くだ」
勿論、この会話を勇者の三人が聞くことはなかった。
ーー訓練場ーー
『ホーリーレインッ!』
訓練場の中心に無数の光の矢が降り注ぐ。
「凄いですっ! 勇者様! 魔法を教えられてわずか二日で出来てしまうなんて!」
「そうですか? みんなこの位で出来るんじゃ無いんですか?」
「そんな事ないです! このペースで魔法を使えるようになるなんて! 眷属のお二方も使えるようになって素晴らしいです!」
「嬉し〜い! ありがとう!」
「ありがとうございます」
魔法を教えて貰っている師匠に褒められ三人とも嬉しそうにしている。
なお、教えて貰っている人が女性とあって、塔矢はまんざらでもない様子だ。
「基本魔法はもう使えるんです。中級クラスを覚えましょうよ!」
「私もそうした〜い! 中級練習しよ!」
塔矢の発言に透美が賛同する。
「申し訳ありません、勇者様……。基本より上のランクの魔法は、その魔法を直接見なくてはなりません。それに、見たとしてもその魔法の消費MPの10倍は無いと覚えられないんです」
「ちなみに、中級の消費MPは?」
「50です……」
「50ですか……。確かに今の俺たちでは無理ですね……」
「ではしょうがないですね。諦めましょう」
「そうだな、じゃあ今はレベル上げに集中するか」
そのまま三人は訓練場を出て、騎士達が剣技を練習している修練場へ向かった。
ーー数時間後、夜ーー
夜、三人は塔矢の一室に集まり、最近の事などを話し合っていた。
「……だからさ〜、そこで横にサッと避けて一太刀浴びせたわけよ」
しかし、そのほとんどが塔矢の自慢話である。
「ねぇねぇ! そういえばさ、あいつどうなったのかな!」
「あいつぅ? あぁ、燈雅の事か? そこらへんで行き倒れにでもなってんじゃないか?」
「だってあいつ、勇者じゃ無いんだろう? だったら弱過ぎて野良犬にでもやられてんだろ」
「そうだね。弱いのあいつにぴったりだもんね!」
「ははっ! そうだな!」
「ねぇ、貴方達はあいつが死んでも何も思わないの?」
2人が燈雅を馬鹿にしている時、純華が口を開いた。
「いきなりどうした?
まあ、死んだら死んだで後味悪いけどよぉ……、基本俺には関係無いし別になんともないかな」
「私もそんな感じだよ〜」
「ううん、ごめんね。変な事聞いて……。
いざという時が気になっただけよ」
「そうか……。そうだ! 聞いてくれよ! 今日、剣技の練習中にさぁ………………」
「うんっうんっ!」
この時、全く空気を読まずに話し始めた塔矢は、純華が話を聞いていなかった事に気付いていなかった。




