ドリームランド観劇
今日は、ドリームランドの舞台の初日だ。
ドリームランドの舞台は本公演の他にジュニア公演がある。
ひろみは、ジュニア公演で初主役を演じることになったのだ。
「拓哉とドリームランドの観劇に来るとは思わなかったぜ」
「悪かったな、尚志。ファンクラブの特権で舞台のチケットを頼んでしまって」
「いいんだよ。いつも母さんに頼んでチケット取ってもらって、
一緒に見ていたからオレは嬉しいよ。今度、お茶会に行ってみない?
お茶会も結構楽しいよ」
「お茶会は、女ばっかり行ってんだろう?遠慮しとくよ」
「そういうと思った。でもね、ひろみさんのお茶会って男のファンもいるんだよ。
タイムトラベルのリスナーが、そのままファンになったのが多いんだ」
「なるほどな、結構男のファンも多いんだな」
「なにしろ今年入団したドリームランドの新人女優は、みんな美人揃いだからな。
ひろみさんの他にも、毬藻友里香や青森瑞稀、それから安城彩香も人気あるよ。
三人とも長身の男役で入ったから、将来トップスターになるのも夢ではないな」
ドリームランドの舞台を観るのもそうだが、
ドリームランドの新人女優の名前を知っている尚志。
情報が早いのも、納得いくよ。
それからオレは、尚志と劇場に入り、今日の舞台のパンフレットを持って
ワクワクしながら開幕を待った。
そして、開幕を知らせるアナウンスが流れた。
「皆様、本日はようこそお越しくださいました。ドリームランドの飛鳥ゆうきで
ございます。ただいまより、南原道雄作演出、仮面舞踏会を開演いたします。
最後までごゆっくりご観劇くださいませ」
ドリームランドの舞台を初めて見たオレは、劇団員みんなが前向きに
一つの舞台を完成させようとしていた姿に感動していた。
主役はもちろんだが、脇で固めている役者さんの演技力には、
頭が下がる思いだった。
「拓哉、あれ見て。ひろみさんだよ」
「あっ、ほんとだ。可愛いじゃん」
「本公演では、キューピット役で出ているんだよ。天使の衣装が可愛いね」
「あぁっ、そうだな」
ひろみは、本公演ではキューピットの役を演じていた。
主役の男役飛鳥ゆうきと女役の結城奈緒子を結び付けようとして、
いろんなことをやっている。
ストーリーも楽しいもので面白かった。
また機会があったら、本公演を見たいなと思った。
「なぁ、尚志。今度舞台ある時、お供させてくれよな」
「うん、いいよ。拓哉もすっかりドリームランドの舞台に
ハマっちゃったみたいだね」
「あぁっ、そうだな」
「拓哉、次のジュニア公演まで時間があるから、
ひろみさんのいる楽屋に面会に行かない?」
「そんなことまで、できるのか?」
「母さんが、いつも連れて行ってくれるから大丈夫だよ」
さすがに、ドリームランドのファンは年齢の幅がすごい。
家族連れやお年寄り、そしてオレたちと年が変わらない女の子たちが
ドリームランドの舞台を見ているのだ。
また(タイムトラベル」にひろみが出演していることもあって、
男も舞台を観に来ていたことだ。
「拓哉、こっちだよ」
尚志が、いつもおふくろさんと見に来ている特権で楽屋に来たオレ。
尚志は、楽屋の守衛さんに面会を頼んでいた。
しばらくして、面会を許可されたオレたちは、楽屋の中に入れてくれた。
そして、楽屋の入り口に待っていたオレたちは、
舞台メイクをする前のひろみに面会ができた。
「拓哉、来てくれたの?気がつかなかった」
「あぁっ、おまえの初主役の舞台だから見に来たんだよ」
「ありがとう、嬉しいわ。拓哉が来てくれるなんて思わなったから、
びっくりしちゃった」
「本公演の役もよかったぜ。客席で見ているから頑張れよ」
「うん、ありがとう」
オレは舞台で演じているひろみの姿を見られてよかったと思った。
「拓哉、話終わったか?」
「おまえ、急にいなくなって、どこに行っていたんだよ?」
「用足しだって、言っただろう?お邪魔虫は消えたほうが
二人っきりで話せただろう?」
「おいおい、気を利かせたつもりか?」
「まぁ、そういうことになるね」
「まいったな、おまえは…」
「さすがに、ここではキスはできなかっただろう?」
「バカなこと言うなよ。そんなことしたら、出入り禁止になるだろう?」
「冗談だよ。だけどさ、ひろみさんも拓哉のどこがよかったのかな?」
「尚志、あんまりオレをおちょくるなよな」
尚志と他愛のない話をしながら、オレは二人で楽屋の外に出た。
そして再び劇場に入り、ジュニア公演の開幕を待っていた。
ジュニア公演では、ひろみは結城奈緒子が演じていた役を演じる。
初めてのヒロイン役に、ひろみがどんな演技を見せるか楽しみだった。
そしてジュニア公演の幕が開いた。
ひろみは、初めてのヒロイン役だったが、堂々とした演技を見せていた。
「拓哉、ひろみさんも初めてのじゅいあ公園でヒロイン役を堂々と
演じているんだから、本公演もきっといい役につけるよ」
「そうだな、今日は来てよかったよ。ありがとう、尚志」
「どういたしまして、長年に腐れ縁なんだから水臭いことはなしだぜ」
「そうだな。おまえとはチビの時からつるんでいるんだからな。
ひろみと付き合うことができたのも、おまえのおかげだからな」
「今では、すっかりラブラブなんだからな。
羨ましいというか、複雑な気持ちだな」
そうあの時、尚志がひろみの病気のことを知らせてくれなかったら、
オレはひろみに告白ができないままだった。
それが、ひろみに告白してから付き合ってきて
今では、お互いの心が繋がっているのがわかる。
オレは、ひろみを愛している。
このまま繋がっていたいとオレは思った。
尚志とドリームランドの公演を見た帰り、
オレの携帯にメールがきた。
メールは、ひろみからだった。
「拓哉、今日は来てくれてありがとう。とても嬉しかった。
千秋楽まで舞台頑張ります」
オレもひろみにメールですぐに返事を出した。
「お疲れさん。ジュニア公演のヒロインもよかったぜ。
今日は、一日ゆっくり休めよな」
オレは、ひろみの頑張りに何度励まされただろう。
あんなに行くのが嫌だった高校に入りたいと思ったのも、
ひろみの大学に入りたいと思う頑張りに近づきたかった。
だけど、それがひろみへの恋のきっかけだったのだから、
今では感謝している。
オレとひろみが運命の赤い糸で繋いでくれたのだから。
今ではオレとひろみは、お互いの心が繋がっている。
それが今では、とても嬉しかった。