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初恋少女  作者: 真矢裕美
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キャンパスライフ

ひろみの英語の授業は、オレのクラスや他の進学クラスでも評価がよかった。

ひろみの授業は、オレたちの英語担当の吉村の授業よりわかりやすい。

「英語の挨拶から身近に接していきたい」

というひろみの方針が生徒たちに伝わってきて好評だった。

「ひろみさんの授業楽しいね」

「そうだな、吉村の授業より面白いからな。あいつは結構教え方うまいよ」

「だけどさ、拓哉が英語の号令かけるとは思わなかったな」

「それを言うなよ。彰がいつも号令やっていたから

オレには回ってこないと思ったのにな」

「おまえ、オレだけに号令やらせようと思ったら大間違いだぜ。

しかし、オレたちは1か月間は吉村の授業から解放されるし、

来月の英語のテストは、ひろみさんの授業を聞いていれば、

和彦も少しは点数を稼げるだろうぜ」

「それだけは勘弁してよ。オレ、英語だけは苦手なんだからさ」

「彰、今度の英語のテスト絶対に負けないからな」

「オレだって負けないぜ。2点でも3点でも差をつけてやるからな」

オレと彰は、今では負けたくないライバルになっていた。

1年の時から二人でクラス委員をするようになってから、

2年の時も3年の今でも二人でやってきて、

先生からは他のクラスより団結力が強いと評判になっていた。

今日は、ひろみの英語の授業の日。

オレを含めてクラスのみんなは、英語の授業が楽しみになっている。

ひろみが教室に入り、彰が英語で号令をかけた。

英語の号令も今では慣れてきたオレ。

ひろみの教え方も板についてきたようだ。

「さて来月にある英語のテストですが、テストは赤い文型本から出す

ということなので、よく勉強しておいてください」

この英語のテストは毎年恒例で一番イヤなやつなんだけど、

今回はひろみが簡単に文型本を中心に授業を

進めてくれたのでやりやすかった。

そして英語のテストの日がきた。

どうやらヤマをはっていたのが当たっていたみたいで

簡単に答えが書けた。

「彰、どうだった?」

「まぁまぁだな」

こうして英語の授業のテストが終わり、

いよいよ答案が返ってくる日が来た。

「この前の英語のテストの答案を返していきます。

出席番号順に取りに来てください」

4人の中で出席番号の早いオレ、彰、尚志、そして和彦と

それぞれ答案をもらった。

和彦は、今までより良い点とったのか大喜びしていた。

「それでは模範解答をしていきますが、

その前にクラスの平均点と最高点を発表します」

「おいっ、拓哉。何点だった?」

「まだ内緒、ひろみが発表してからだ」

「今言ったら楽しみなくなるからか?」

「そういうこと」

「このクラスの平均点は70点でした。

そのなかで95点の人が2人いました」

クラスの仲間がザワザワしている。

誰が最高点だろうかと期待しているのだろう。

オレは今回かなり良かったと思っている。

しかし、最高点が95はすごいよな。

えっ?ちょっと待てよ。オレのテストの点数は95点だぜ。

あともう一人は誰だ?

「最高点の95点は、城島くんと飛島くんです」

えっ?彰と同点だったんだ、オレ。

「やったな、彰」

「おまえもな」

「次は絶対に勝つからな」

「オレも負けないぜ」

彰とは今では好敵手となって

勉強もクラスでの委員の活動も負けたくないと思っている。

いつも一歩先を見て冷静に判断する彰に少しでも近づきたいと思っていた。

ひろみの授業が終わり、尚志と和彦はそれぞれの答案を見て話をしていた。

「尚志、テストどうだった?」

「オレは85点だった。和彦は?」

「オレも85点だったよ」

「和彦にしたら珍しいよな、彰」

「そうだな、あいつ英語は60点を越えたことなかったからな。

クラスでの平均点もだいたい60点で、

和彦はいつも平均点スレスレだったからな」

「あいつにしたら、85点はすごいよな」

「そうだな」

感激屋の和彦は、よほど嬉しかったんだろうか。

自分のテストの答案をオレや彰に見せびらかして大喜びしていた。

それからまもなくして、ひろみの教育実習も最後の日になった。

この1か月間よく頑張ったよな、ひろみ。

これでまたもとの関係に戻れるし、肩の荷も下りただろうな、きっと。

ひろみの最後の授業が終わった日のこと、

オレは放課後忘れ物があって教室に行った。

教室に行ってみると、ひろみが教室の窓から校庭を眺めていた。

「ひろみ、やっと終わったな。1か月なんか早かったな」

「うん、あたしが担当したクラスの中で一番思い出に残っているのが、

拓哉のクラスだった。拓哉のクラスで教えている時が一番楽しかった」

「それはオレもクラスの連中も同じだと思うぜ。

吉村の授業は文型中心でなかなかわからなかったのに、

おまえは身近に接して句会話中心に変えて授業を教えていった。

あんなに英語が身が手だった和彦が、英語を好きになってしまうくらいに

変わったんだからな。これで、おまえの肩の荷も下りて

オレもホッとしているよ」

「拓哉の学校での生活も見ることができたし、

あとは吉村先生からの評価を待つだけね」

「あとは神のみぞ知るってやつだな。

やれるだけのことやったから十分だろ」

「うん」

「もう戻っていいよな、恋人同士に」

「うん」

「ひろみ」

「拓哉」

オレがひろみを抱こうとした時、教室のドアから物音がした。

「ちょっと待っていろよ」とオレは教室のドアを勢いよく開けた。

なんと、ドアの外に尚志と和彦そして彰がいたからだ。

「拓哉、ひどいじゃないか!」

と怒る和彦にオレは、

「覗き見しようとするヤツが悪いんだよ」と怒鳴った。

「ずいぶん長い忘れ物だな」

という尚志。

「忘れ物は、ひろみさんと会う口実だな」

という彰。

「なんだよ!おまえら揃って覗き見なんて趣味悪いじゃないか!」

「言い出したのは和彦と尚志で、オレはやめておけって言ったけどな。

やっぱり案の定、人の恋路を邪魔するヤツは

馬に蹴られて死んでしまえって当たっていたな」

「まいったな、おまえらは」

この4人だから許せること。

4人でプラスの仲間で、これからも

そしていつまでも、この仲間で一緒にいたいとオレは思った。



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