表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
初恋少女  作者: 真矢裕美
39/50

新たなる目標

それから月日は流れ、オレは高校三年生になりました。

尚志は、大学の進学とタレント活動の両立を目指そうと頑張っている。

和彦は、声優の養成所への受験に向けて毎日勉強している。

彰は、ミュージシャンを目指そうといろいろなオーディションを受けている。

しかし残るオレは、未だに何を目指そうとしているか見えてこないでいた。

そんな時に寛さんから思いがけない話がきた。

「拓哉、水平塾でやるミュージカルに出てみないか?」

水平塾は、寛さんがいた声優の養成所で

舞台やミュージカルにも力を入れている養成所だ。

たしか和彦は水平塾を受験したいと言っていた。

今は、寛さんの奥さんるり子さんが所属していて、

寛さんもときどき水平塾のミュージカルに出演している。

「今回のミュージカルは若い連中を多く使いたいと話がきたんだ。

ただし、今回はドリームランドのなかからでなく、

おまえのような若い男性役者が多く必要になるそうだ」

「水平塾のミュージカルは、すごいですからね。

一般公募での出演オーディションの予定あるんですか?」

「残念ながら一般公募ではやらないんだ。誰か心当たりのあるヤツいるのか?」

「オレの友達に水平塾を受験したいと話しているヤツがいるんです。

彼の双子の妹は現在ドリームランドに入っています」

「光優香のことか?」

「はいっ」

オレは、寛さんにそう伝えた。

和彦の妹絵梨ちゃんは、今年ドリームランドに入団した。

「優香は、負けず嫌いでプロ根性を持っている。

裕美が劇団を抜けても彼女が引っ張っていくだろう。

その兄がどんなヤツか一度見てみたい。彼の名前はなんていうんだ?」

「岬和彦です。今まで寛さんに憧れていて、

水平塾で声優やミュージカルをやりたいと話していました」

「わかった。彼をタイムトラベルが始まる前に

ここに連れてきてくれないか。

来る時に履歴書を必ず書いて持ってくるように伝えてくれ」

「ありがとうございます、寛さん。

それから水平塾のミュージカル、是非やらせてください」

「水平塾での稽古は厳しい。これでおまえが勇次師匠の息子という

殻を破るきっかけになるだろう」

「はいっ、頑張ります」

オレは、今瑠璃子さんの実家である喫茶店にいた。

そこで水平塾のミュージカルの話をしていたのだ。

「寛、お話すんだ?」

「話はすんだよ。コーヒー、持ってきてくれよ。いつものブレンドでな」

「拓哉くんは?」

「オレは、カフェオレでいいです」

「あらっ?カフェオレはひろみちゃんの好きなブレンドだわ。

二人とも好みが似てきたのかしら」

「そんなんじゃないですよ」

「おまえ、なに照れているんだよ」

そうカフェオレは、ひろみの好きなブレンド。

二人でいつも一緒にいる時にコーヒーのブレンドだ。

ひろみとの交際も順調に進んでいて、オレが高校を卒業すれば結婚できる。

オレたちが結婚するのも秒読みになってきた。

そして次の日、学校でオレは水平塾でのミュージカルに

参加することを尚志たちに話した。

その話をして一番はしゃいでいたのが、なんと和彦だ。

なんて平和なヤツだろう。

「水平塾のミュージカルの出るなんてすごいじゃないか。

オレも水平塾に入りたいよ」

「その水平塾に、おまえが入れるかもしれないんだぜ」

「えっ?それほんとなの?」

「今度の水曜日、タイムトラベルが始める前に寛さんが面談するから

履歴書書いておけってさ。

彰、寮の門限すぎるかもしれないから、その時は…」

「わかっているよ。寮長の谷川へのフォローを頼むってことだろう。

それなら任せとけよ」

「ありがとう、彰。頼んだぜ」

「なにしろ、和彦の将来がかかっているんだからな。

その協力ならオレは惜しまないぜ」

それからタイムトラベルのある水曜日、

オレは和彦を連れて瑠璃子さんの喫茶店に行った。

和彦は、寛さん直々の面談に緊張している。

オレも寛さんから水平塾でのミュージカルの内容を聞くために

一緒に来たけど、ミュージカルが初めてで緊張している。

「こんばんは」

「いらっしゃい、拓哉くん」

「寛さん、いますか?」

「奥の部屋にいるわよ。寛、拓哉くんたちが来たわよ」

瑠璃子さんに呼ばれて寛さんが出てきた。

「おうっ、拓哉来たか。彼が優香の兄さんか?」

「はじめまして、岬和彦です。妹の絵梨がお世話になっています」

「堅苦しい挨拶はナシだ。面談といってもざっくばらんに

話すのが一番だから、緊張せずに自分の思うことを話したらいい。

履歴書は持ってきたか?」

「はいっ」

「うん、なるほどな。この履歴書は、水平塾の塾長へオレから直接渡しておく。

水平塾の塾長は、オレの古くからの友人なんだよ」

「寛さん、それって」

「後日、水平塾の塾長古沢武から面接の連絡が入る。

和彦くん、学校の寮に電話がかかってくるから、

寮長先生に必ず伝えておいてくれ。

面接は東京に行くことになるから

担任の先生にも説明しておくといいだろう」

「ありがとうございます、寛さん」

「よかったな、和彦」

「まだ採用になるかわからないが、

おまえたち二人が舞台に立つのも夢ではないだろう」

「寛さん、ありがとうございます」

和彦と一緒に同じ舞台に立てる。それが現実になれば、オレは嬉しい。

一緒につるんできた友達と一緒に芝居ができる。

小さな端役でもオレは頑張っていきたいとそう思った。

それからオレと和彦は家に帰ろうとしていた。

「拓哉、今日は本当にありがとう。

水平塾で本当に舞台に出られたらオレ嬉しいよ」

「そうだな。水平塾に入るのは、おまえの夢だったんだからな」

「オレ、頑張るよ」

感激屋の和彦が、ここまで喜んでくれてよかったぜ。

「和彦、寮長先生に電話をしておけよ。

寮の門限ギリギリまでつきあわせてしまって悪かったな」

「いいんだよ、そんなこと心配しないでよ。

それよりもオレ、ここに来てよかったよ。

だって寛さんのお気に入りのブレンドコーヒーが飲めたんだから」

「水平塾に合格するといいな、和彦」

「うん、必ず合格して、一緒に舞台に立てるように頑張るよ」

「和彦、待っているからな」

それから二日後に和彦からメールが来た。

「水平塾の面接の日が決まったよ。明日、東京での塾長の古沢武さんに

会ってきます。合格の結果は、みんなが揃った時に話します」

オレも和彦にメールで返事を書いた。

「頑張ってこいよ。一緒の舞台に立てるの楽しみにしているからな」

オレも水平塾でのミュージカルで、必ず自分の力をつけたい。

オヤジ浜崎勇次の息子という殻を破るためにも、オレは頑張ろうとそう思った。










評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ