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初恋少女  作者: 真矢裕美
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告白

それは、突然の出来事から始まった。

オレは、学校で授業の準備をしていた。

そんな時だった。

尚志が走って教室に入ってきたのは…。

「拓哉、拓哉」

尚志の表情を見て、何か慌てているようだ。

一体、何があったのだろうか?

息を切らして走ってきた尚志に、

「おうっ、尚志どうしたんだよ?宿題ならやっているぜ」

とオレは言った。

すると尚志は怒って、

「宿題のことはどうでもいいんだよ!オレが言いたいのは、別のことだよ!」

とオレに言ったのだ。

この時、状況を理解していなかったオレは、

「別のことって、どういう意味だよ?」

と尚志に聞いていた。

すると尚志は、

「朝霧裕美さんのことだよ」

と言ったのだ。

びっくりしたオレは、

「えっ?裕美さんがどうかしたのか?」

と尚志に聞き返していた。

すると尚志は、

「どこまで鈍いんだよ!おまえ、裕美さんのことどう思っているんだよ?」

とオレに聞いてきたのだから驚いた。

そんなことは、親友のおまえでも言えるわけがないだろう?

それをあえて言えってのかよ?

だけど尚志の目はごまかせない。

こいつがマジで聞いてくるときは何かあった時だ。

尚志の勢いに観念したオレは、尚志に自分の胸の内をすべて話した。

ラジオが始まってから、裕美さんに恋をしていたことを…。

そしたら尚志は、こう言った。

「やっぱり、そうだったんだ。あんなに嫌がっていた高校受験を、

自分からやりたいって言っていたから、もしかしたらって思ったんだ」

「今まで黙っていた悪かったな、尚志」

「いいんだよ、おまえの本当の気持ちが聞きたかったから」

それから尚志が落ち着いた時にオレは、尚志に言った。

「ところで尚志、裕美さんに何かあったのか?」

「あっ、そうだ。拓哉が裕美さんに惚れているのわかったから話すよ。

実は、裕美さんが病気で倒れたんだ」

尚志の言葉に驚いたオレは、

「なんだって?裕美さんが倒れたって、本当か?」

と尚志に聞き返していた。

すると尚志は、

「本当だよ。実は今日は裕美さんのお茶会の日で母さんと妹と

三人で一緒に行く予定だったんだよ。

そしたら、母さんから電話があってお茶会が中止になったって

知らせてくれたんだ」

と話したのだ。

裕美さんが病気?

オレには、信じられなかった。

それどころか裕美さんに会いたい。

会ってそばにいたい、

そんな気持ちでいっぱいになっていた。

「拓哉、おまえ裕美さんに会いたいと思っているんだろう?

もしそうなら放課後にでもいいから裕美さんの見舞いに行ってこいよ。

ここが、裕美さんの入院している病院の住所と電話番号だよ」

そう言って尚志は、オレに裕美さんの入院先の病院の場所の

書いたメモを渡してくれた。

病院のメモをもらったオレは、

「サンキュ、尚志。放課後になったら病院に行ってみるよ。

ところで、裕美さんの入院は長くなるのか?」

と尚志に訪ねた。

すると尚志は、

「入院は、一週間くらいになるって、母さんが言っていたよ。

拓哉、裕美さんにおまえの想いが伝わるといいな。

頑張って告白しろよな」

と言ってオレを励ましてくれたのだ。

尚志の励ましにオレは、

「そうだな。やれるだけやってみるよ」

と答えていた。

オレは、裕美さんに告白しようと思った。

今までの想いを、全部裕美さんに話そうとオレは思った。

オレは放課後、裕美さんが入院している病院を訪ねた。

結構大きな大学病院で、裕美さんは神経内科の病棟で入院していた。

看護婦さんに病室を聞こうと思ったが、実はオレ裕美さんの本名を知らないのだ。

途方に暮れていたオレのところに、女の人が病室の廊下を歩いてきた。

女の人は、オレに気付くと親しみをこめて言った。

「あなたが城島拓哉くんね。はじめまして、ひろみの母です。

朝霧裕美は『ドリームランド』での芸名で、娘の本名は石川ひろみと言います」

石川ひろみ。

それが裕美さんの本名だったんだ。

オレに声をかけてきたのは裕美さん、いやひろみさんのお母さんだったのだ。

オレは、ひろみさんのお母さんと一緒にひろみさんの病室に行った。

お母さんは、ひろみさんの病室に着くまでの間、オレにいろいろ話してくれた。

「ひろみが劇団に入団するとき、最初は反対していたんですよ。

もともと体が丈夫じゃないから。だけど、お父さんが社会勉強のつもりで

やらせたらいいって言って劇団の入団を許したんですよ」

そうだったんだ。

裕美さんは、劇団では学年委員を引き受けていて、

劇団の舞台稽古の最中に倒れたというのだ。

そしてオレは、お母さんの案内で裕美さんの病室に着いた。

「どうぞ、ここです」

お母さんは、病室のドアを開けた。

「あのっ、これ。裕美さんのお見舞いに持ってきたんですが…」

と言ってオレは、裕美さんのお見舞いに持ってきた花束を

裕美さんのお母さんに渡した。

お母さんは、

「まぁ、これはひろみが大好きな花なんですよ。さっそくお花を飾りましょうね。

私は、お花を飾りますから、ひろみをお願いしますね」

と喜んでくれた。

お母さんは、オレを病室に通すと、すぐに花を飾りに出て行った。

裕美さんは、今ベッドで眠っていた。

腕に点滴をしている、

それを見たオレは、なんだか痛々しい感じがしてならなかった。

「拓哉くん?」

裕美さんが目を覚ました。

「あっ、裕美さん。気がついたの?」

「来てくれたの?」

裕美さんは、オレの突然の見舞いに驚いていた。

そんな裕美さんに

「うん、オレの親友が裕美さんのファンクラブに入っているんだ。

だから今日のお茶会が中止になって残念がっていたよ。

それでさ、オレに入院している病院を教えてくれたんだよ」

とオレは答えていた。

「そうなんだ、でも拓哉くんに病気の時の私を見せたくなかったな」

と裕美さんは、淋しそうな顔をしていた。

オレは、今でも泣き出しそうな裕美さんに、

「オレは、そんなこと思ってない。ここに来るまで不安だった。

裕美さんに会いたくてたまらなかった。

裕美さんに会って話したいことがあったんだよ」

とオレは、力説していた。

「なぁに?」

と裕美さんの問いかけにオレは、

「ラジオのスタジオだと言えないから、今ここで話す」

と言った。

オレは、今自分の気持ちを打ち明けようとしている。胸がドキドキしていた。

オレは、一呼吸おいてから、裕美さんに言った。

「オレが今から話すこと静かに聞いていて、裕美さん」

「うん、いいよ」

そしてオレは、勇気を出して言った。

「オレ、裕美さんのことずっと好きだったんだ」と…。

「拓哉くん」

裕美さんは、驚いて何か言おうとしているのがわかっている。

でもオレは、

「待って、今話さないとオレの気持ち伝わらない気がするんだ」

とあえて裕美さんの言葉を遮った。

裕美さんが言おうとしたのを遮ったオレは、言葉を続けた。

「オレ、初めて裕美さんに会った時、すっごくドキドキしていた。

今でもそうなんだよ。オレ、いつも裕美さんの笑顔見ると安心していた。

高校に行きたいって思ったのだって、寛さんに言われたからじゃない。

裕美さんの頑張りに近づきたかったんだよ。だから一番大嫌いな勉強にも

必死になれたんだよ。だけど、それが恋だって気がついたのは、最近に

なってから。それまで親友の尚志にさえ話すことができなくて苦しかった。

裕美さんが病気になったって尚志から聞いた時は、びっくりして早く会いたいって

それだけしか考えられなかった」

オレの言いたいことは、すべて話した、

もう悔いはない。オレは、そう思った。








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