マイフレンド
そして、オレたちクラス全員が授業をボイコットしてから
一週間が過ぎようとしていた。
そして学校では職員会議が行われ、オレたちの授業のボイコットは
吉村先生の行動への抗議だということを小川先生から校長先生から
他の先生方に説明していた。
さすがに吉村先生もオレたち2年5組が授業をボイコットするとは
考えられなかっただろう。
そして吉村先生は、小川先生が止めに言った言葉にショックを受けたようだ。
それは、ひろみが話してくれた政治新聞の勧誘事件だった。
「この前、ある卒業生から先生が進路指導の時に政治新聞の勧誘をしていたと
伺いましたが、本当ですか?答え次第では私も生徒たちのボイコットを
容認する腹づもりでいます。よくお考えになって返答してください」
「確かに小川先生のおっしゃるとおりです。
去年まで進路指導に生徒に政治新聞を取るように強制しました。
しかし、ある生徒の保護者からの抗議で今は勧誘を辞めました」
「わかりました。今後、私のクラスで嫌がらせは行わないと
この場ではっきり言っていただけますね?」
「わかりました。小川先生、ご迷惑かけました」
そして小川先生から彰のいる学生寮に電話がかかってきた。
そして戦いに勝ったことを告げられたのだ。
それから彰は、クラスの寮生に連絡を取り、
そしてオレを含めた通学生にも連絡をした。
そしてクラス全員が彰のいる学生寮に集まった時に、みんなに言った。
「みんな、オレたちが勝ったぞ!吉村が今までの悪行を洗い浚い吐いて
1年間の停職処分に決まったぞ」
「やった!今日は祝杯だ。バンザーイ!」
「今日は今から会費を集めてカラオケ大会だ。
今からカラオケルームに行くが、酒と煙草は厳禁だからな」
「なんだよ、それじゃつまんねぇじゃねぇか。
たまには羽目外してもいいじゃないのか?
授業を全員でボイコットしたんだから」
「中島、あまり羽目を外すと今度は退学処分になるぞ」
「わかったよ、しょうがねぇな」
戦いが終わったオレたちは、クラス全員で駅前のカラオケルームへ行った。
みんなが、それぞれ好きな曲を選んで楽しんでいた。
戦いに勝った喜びと仲間との団結力を強くできたことが
オレは何よりも嬉しかった。
「おいっ、次は誰だ?」
「料理が来たぞ」
みんなが好きな料理を注文して食べたり、歌いたい曲を歌って楽しんでいた。
勝利の祝杯というわけではないが、今のみんなをバラバラにすることを
防ぐことがオレには嬉しかった。
「おいっ、次の曲は誰だ?」
「あっ、オレだ」
「おっ、拓哉だ。行け!」
「いいぞ、サブ委員長」
カラオケの曲がオレの番になったので、オレは選曲していた歌を歌っていた。
そしてこんなに楽しいひと時は久しぶりだった。
そしてオレたちは、明日から学校に行けることを小川先生から告げられて、
オレたちクラス全員の処分は事実上お咎めなしとなったのだ。
これから新しくクラス全員でスタートできる。
オレは、戦いに勝った安堵感とクラス全員が一致団結したことが嬉しかった。
ところが、そこまではよかったのだ。
家に帰ってきた時、おふくろが仁王立ちで玄関で待っていたのだ。
「拓哉、お父さんが話があるから行きなさい。学校から1週間も休んでいますが、
どうしたんですかって連絡があったのよ。
お父さんは登校拒否なんて考えられない。何か訳があるんだろうと
言っているのよ。どうして学校に行かないのか、きちんと話をしなさい。
わかったわね、拓哉」
やばい、オヤジに授業のボイコットがばれた。
それからオレは、オヤジに学校に行かなかった理由をすべて話した。
学校で先生からの嫌がらせがひどく、このままではクラス全員が
バラバラになると思い、学校に出なかったのだと話した。
するとオヤジは、こう言った。
「学校でのいじめは陰湿になっとるさかいな。今では先生が生徒をいじめるから
質が悪いもんや。最近のニュースにな、学校で先生からいじめを受けて首を括って
亡くなった生徒の話があったんや。生徒をからかいやすいからと言って、
先生がいじめをやるというのは許されんことや。
だいたい、今の教育現場は事なかれ主義なっとるさかいな。
人間、誰だって間違いはある。せやけど、悪いことは悪いと言えんようになったら
世の中おしまいや。せやから、おまえの行動は間違ってないとワシは思うとる。
拓哉、ようやったやないか」
「オヤジ、オレのことしからないの?」
「なんで、おまえをしからなあかんのや?
おまえは、やましいことをしたんやないから堂々としとったらええやないか。
おまえは、人間には許せることと許さないことがあるって言うのを
わからせたんや。それでええやないか」
オヤジから叱られると思ったオレは、なんだか拍子抜けしてしまった。
だけど、オヤジはわかってくれていたんだ。
人間には許されることと許せないことがあるってことを…。
そう思ったらホッとしていた。
戦いに勝って、明日から気持ちを新たに頑張れる。
新しいクラスとして、みんなで団結して頑張っていこうとオレはそう思った。
そして翌日、オレは尚志と一緒に学校に行った。
「拓哉、よかったね。みんなが学校に来れるようになって」
「そうだな。クラス全員がお咎めなしになったんだからな。小川に感謝だな」
「拓哉、これで新しいクラスつくれるね。みんなが団結して
一つのことを成し遂げたんだから」
「そうだね。これから彰と二人でクラスを纏めていかないといけないな」
「拓哉なら大丈夫だよ。彰と二人でクラスをしっかり纏めていけるよ。
実際、この1週間のボイコットでクラス全員が一致団結したんだから」
この1週間のボイコットがきっかけでクラス全員が一致団結することができた。
一人の力で成し遂げられないことがクラス全員で抵抗したことが大きな偉業を
成し遂げられたんだから。
高校2年は、まだ始まったばかりだ。
この1年に何があるかわからないが、今のオレたちのクラスには
向かうところ敵なしだ。
必ず、最後までクラスの仲間との団結力を強くして見せるとオレはそう思った。




