学園天国
学校の名物行事は、文化祭と体育祭が定番の祭りだ。
今オレと彰は、その進行に頭を悩ませていた。
「文化祭は、クラスの中で何か模擬店をやれって会議で言っていたが、
何かアイデアあるか?」
「そうだな。模擬店だから焼きそばとか、たこ焼きが定番だよな」
「しかし、どうせやるなら定番のものじゃなく、インパクトの強いヤツがいいと
思うんだけど、どうだ?」
「それならカレーはどうだ?文化祭の前日に野菜類をある程度仕込んでおいて、
翌日に食堂のおばちゃんにご飯を炊くのを頼んでつくらせてもらうのはどうだ?」
「そうだな。しかし、今のだと手間がかかってしまうな。
どうせなら、クラスの連中に当日の朝早くに野菜類を切って持ってきて
つくるのが一番だろうな。肉類は、前日買ってきたものを食堂のおばちゃんに
頼んで冷蔵庫に入れてもらうように頼んでみるのがいいな」
「そうだな。一度これで意見を聞いてみて、クラスの連中が賛同すれば、
今の意見を進めてみようぜ」
そうしてだいたいの案がまとまったのは、夜の9時だった。
「拓哉、悪かったな。遅くまでつきあわせてしまったな」
「しかたないよ。これから文化祭やら体育祭で忙しくなるから。
あとはクラスから出す応援委員を推薦しないといけないな。
ひとつ片づくとまた問題が出る。まったく頭が痛いぜ」
「これから忙しくなってくるが、お互いに頑張っていこうぜ」
そして翌日、彰は昨日のクラス委員会で決まったことを報告していた。
「昨日のクラス委員会でクラスごとに模擬店をやることになったが、
うちのクラスではカレーでいこうかと考えている。
これは、あくまで提案だから他に何か希望のものがあれば、
どんどん意見を出してくれ」
彰から促されて一人の生徒が、
「焼肉はダメですか?」と聞いてきた。
当然、この意見は却下。クラスは、しばらく爆笑モードに入っていました。
「さて雑談は終わり。本題に戻るぞ。仮にカレーをつくる場合は、米10キロの
米袋を二つ炊き上げるわけだが、コメの炊き加減は、食堂のおばちゃんに教えて
もらってオレたちが炊く。カレーは、一人四人分の野菜を切ったものを当日持参
してきて、カレーをつくっていく。予定では、ビーフカレー、ポークカレー、
シーフードカレーとチキンカレーの四食をつくる予定だ」
「委員長」
「どうした、中島」
「肉類の管理はどうするか決めているんですか?」
「肉類は、オレの寮の食堂の冷蔵庫を借りる予定だ」
「どうせならさ他にも寮生がいるんだから、それぞれ担当を決めて
肉類の管理させろよ。委員長やサブ委員長だけに責任押し付けたりしないで、
みんなで楽しくやろうぜ」
中島の思いがけない言葉が出て、オレは嬉しかった。
中島のことを聞いて拍手したのは、和彦と尚志だった。
今まで不良グループにいて、クラスの仲間に迷惑かけていたヤツが、
クラスのために手伝いたいという気持ちになったのが、オレには嬉しかった。
「それじゃ、今中島から出たカレーの肉類の管理を
寮生に一任するという意見に賛成の者は手を挙げてくれ」
クラスの連中が、全員が手を挙げたので、オレたちのクラスの模擬店が決まった。
「よし、これで満場一致でうちのクラスの模擬店はカレーに決定する。
カレーの肉類と魚介類を、寮の冷蔵庫を借りるから、寮長先生と寮の食堂の
おばちゃんにきちんと報告するようにしてくれ。
肉類の買い物は、前日に駅前のスーパーで買って、寮生は四つのグループに分けて
冷蔵庫に入れておてくれ。あと米のほうは、20キロを2日分だから40キロは
いるんで、力自慢のヤツに手伝ってほしいんだけどな」
肉類の管理が解決すると次は米の問題だ。
なにしろ、文化祭2日分の米を用意しないといけないのだからな。
何か、いい方法はないだろうか?
すると、先生からある提案をしてきた。
「飛島、米ならオレが調達しよう。オレのカミさんの実家が米をつくっている。
30キロの米が2つあればちょうどいいだろう」
「先生、ありがとうございます」
先生からの米の差し入れに、クラスみんなが大喜びした。
「米の調達の代わりにおまえら、ちゃんと自分の野菜持ってこいよ。
でなければ、おまえらの食べる分はないからな」
そして学園祭の前日、カレーをつくる鍋4つ。それを温めるガス代を5台を
クラスの模擬店の場所に設置された。
「おいっ、朝霧裕美が来ているぞ」
「彼女、女子部の卒業生だからな。学校で会えるなんて夢みたいだぜ」
校庭のまわりがザワザワしてきたのを見たら、
ひろみが友達で歌手の渡部久美子と一緒に来ていたのだ。
「ひろみ、来ていたのか?」
「うん、女子部の卒業生で模擬店やるの。だけど模擬店のメニューが
抹茶とぜんざいなんだ。これって毎年の定番なんだって。
女子部の卒業生の伝統だからしかたないのかな?」
「その伝統のせいで、ひろみの提案したフルーツケーキとハーブティーが
却下になったのよ。せっかくフルーツケーキをつくるのに買った果物を
どうしようかって考えていたら、男子部の校舎に来ちゃったわけよ」
「なぁ、ひろみ。今のアイデア、オレのクラスで使わせてくれないか?」
「えっ?どうするの?」
何かわからないけど、ひらめいたことができた。
ひろみの考えていたアイデアで何かできるかもしれない。
オレは、久美子さんから果物の入った袋をもらって何が入っているか調べた。
その袋には、バナナ、リンゴ、イチゴ、パイナップルの缶詰と桃の缶詰、
そしてキウイフルーツが入っていた。
「誰か、手の空いているヤツいるか?」
「お呼びですか?サブ委員長」
オレが返事のあった場所を振り返ったら、中島がそこにいたのだ。
「中島、今すぐオレンジジュースを20本買ってきてくれ。
100%果汁のものが一番いいだろう。一人じゃ持ち切れないから、
他に手の空いているヤツを連れて行け。ただし領収書を忘れるなよ」
「わかったよ、行ってくるぜ」
「ちょっと待て、中島。拓哉のことだから何かとんでもないこと
考えているかもしれないぜ」
「彰、そっちの仕事は片づいたのか?」
「だいたいのところはな。だから、おまえが中島に言った買い物に
オレもつき合うよ」
「委員長、ありがとう」
「明日と明後日の2日間、オレたちの模擬店が一番よかったって
みんなに言わせてやろうぜ」
彰は、中島と他に手の空いているヤツを連れて買い物に行ってくれた。
彰のポリシーは、自分から率先して行動する。
その行動力は先生からもクラスの連中からも一目置かれている。
彰、おまえはオレよりずっと大人だよ。
「よかった。これで用意しておいた果物が無駄にならなくて助かったわ。
ありがとう、拓哉」
「どういたしまして」
「ところで拓哉、これだけ沢山のフルーツとオレンジジュースで何をつくるの?」
和彦が気になってオレに聞いてきた。
「それは、明日のお楽しみだ。ひろみ、100円均一で使い捨ての
カップ用意できるか?」
「それなら小さなカップを用意しておくわ。あとフルーツが食べれるように
小さなスプーンを用意すればいいわね」
「オッケー、それで十分だ。あとはヨーグルトを用意すれば
カレーのデザートにちょうどいいだろう」
オレが思いついたのは、フルーツヨーグルトだ。
ひろみがカレーをつくる時に必ずフルーツヨーグルトが出たのを思い出したのだ。
これで明日の文化祭を待つばかりになった。
「拓哉、頼まれた物買ってきたぜ」
「彰、中島、ありがとう」
「オレはクラスのために当たり前のことをしただけだ。
みんな、今夜は前夜祭だ。今夜は思う存分はじけようぜ」
そう、今夜は前夜祭。日が暮れてまもなく
キャンプファイヤーが焚かれようとしていた。




