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第四三話

「……」


 白と黒の光がはじけた先には一匹の巨大な虎が現れる。

 その身体は普通の虎とは違い、白い色をしており、現れた虎が呼び出された白虎だと言う事は一目でわかる。

 目の前の白虎は伐とライオネルへと視線を向けるとライオネルは威圧されたのか後ずさりをしてしまい、壁際まで到着してしまった。

 そんななか、伐は白虎の圧力に屈する事無く、けだるそうに欠伸をしている。


「……おい」

「何だよ。威勢の割にずいぶんと腰が引けているじゃねえか」


 白虎を前にしても変わらない伐の不遜な態度にライオネルは声を震わせながら彼を呼ぶ。

 伐は欠伸をしながら、ライオネルの態度を小バカにするように言うと同時に彼の足元からは黒い靄が立ち上がり始める。


「……歪みに堕ちた者よ。なぜ、我の前に立つ?」

「意味を問われたら、成り行きとしか言いようがねえな」


 伐の足元から立ち上がる黒い靄に白虎は口を開く。

 それは聖獣として、伐のような人の道から外れた者を滅ぼすべき者だと判断したようである。

 白虎の問いに伐はけだるそうに欠伸をするとくわえ煙草を手に取り、タバコの先を白虎に向けた。

 タバコの炎は青白い炎を上げると黒い靄は白虎に向かって飛び、青白い炎は黒い靄に燃え移り、白虎を襲う。

 

「……このような物が効くとでも思ったか?」

「いや、むしろ、この程度の攻撃が効いたら逆に驚くね」


 青白い炎が白虎に届こうとした時、白虎は咆哮を上げる。

 その咆哮は青白い炎だけではなく、伐の足元に立ち上がっていた黒い靄を吹き飛ばしてしまう。

 白虎はつまらない攻撃だと言いたいようであるが、黒い靄が消し飛ばされた当の本人である伐は楽しそうに口元を緩ませた。


「我から零れ落ちた力の相手をしていたようだが、我にかなうとでも思っているのか?」

「かなうかどうかは知らねえな。それに別にあんたを滅ぼす理由は俺にはねえしな。聖獣を消し去っても現世に残しておいても面倒な事はこの上ねえからな。こっちとしてはさっさと帰ってくれた方が楽で良い」

「帰った方が良いとは言うが、それは堕ちた者(お前達)にとって我が邪魔だと言う事だろう。その言葉に頷けるとでも思っているのか?」


 伐の不遜な態度に白虎は視線を鋭くして言う。

 その視線に怯む事なく、伐はため息を吐くとタバコをくわえ直し、タバコの火はわずかに火力を上げる。

 伐も白虎の相手をするのはデメリットしかないと考えているようで特に用は無いから、帰って欲しいと追い払うように手を払った。

 しかし、聖獣である白虎には伐のような歪みに堕ちた人間は滅さなければいけない存在であり、彼の言葉に頷く気はないようである。


「頷く必要はねえよ……強制退場して貰うからよ」

「……歪みが聖獣である我にかなうと思っているのか?」

「聖獣なら、聖獣らしく心綺麗な人間の相手をしていろよ。過程はどうであれ、生贄使って呼び出されているんだ。歪みだろうと神だろうとそんなもんは矮小な存在(人間)にとっては俺もお前も変わらねえよ」


 白虎が自ら帰ってくれない事に伐はけだるそうにため息を吐くと白虎の足元の床が歪み、白虎の身体は宙に浮いた。

 歪んだ床は巨大な人の顔になり、巨大な顔は大口を開けると白虎を飲み込もうとする。

 白虎は咆哮を上げると巨大な顔は消し飛び、自分を追い払おうとする伐を見下すように言う。

 高圧的な白虎の様子に伐は聖獣と言ってはいる物の、邪な人間の思惑で現世に現れた白虎には言われたくないと言いたいのか挑発するように言い放った。

 その言葉に白虎は宙を蹴ると伐に向かって一直線に向かって行く。


「……ほう」

「神なんだから、神聖な炎とかで俺みたいな邪悪な物を焼き払った方が良いんじゃねえのか? あ? 白虎は炎が苦手だったか?」


 白虎の身体が伐に身体に接触しようとするが、伐の前には目に見えない壁が存在しており、白虎の身体は空中で止まる。

 伐の前に防御壁がある事には白虎は気が付いていたようであるが、伐程度が作り出す防御壁など簡単に砕けると考えていたようで自分の攻撃を止めた事に感心したような声を上げた。

 その声に伐は白虎をあざ笑うかのように言うと伐と白虎を囲むように炎が立ち上がる。


「矮小な物程度の炎で我を燃やし尽くせるとでも思っているのか?」

「……別に思っていねえよ。それに最初から言っているだろ。聖獣のあんたが消滅しちまうといろいろと面倒なんだ」


 白虎は伐が扱う炎など何とも思っていないと言いたいのか、後方に一度、飛ぶと再び、伐に向かって飛ぶ。

 その突撃を伐の防御壁は再び、防ぐが白虎の攻撃はかなりの衝撃だったようで彼の前の空間にはガラスにひびが入ったようなキズが浮かび上がった。

 防御壁に広がって行く傷を見て、白虎は再度、後方に飛ぶと三度、伐に向かって突進する。

 次の突撃に防御壁は耐え切れそうにはないが、伐は特に気にする様子もなく、けだるそうに欠伸をすると防御壁は傷の中心から砕け、防御壁の破片は白虎に向かって飛んで行く。

 襲い掛かる破片を交わす事無く、白虎は伐に向かって一直線に突撃をする。

 白虎を襲った破片はその身体を傷つける事無く、砕け散ってしまう。

 これで守る物が無くなったと考えたのか白虎は鋭い爪を伐に向かって振り下ろす。

 振り下ろされた爪は伐の身体を真っ二つに切り裂くが、伐は切り裂かれようがけだるそうに欠伸をしている。


「……虚像か?」

「神なんだから、視覚に頼るなよ」


 白虎の爪には手ごたえなど何もなかったようで引き裂いた物が実体のない物だと気づく。

 そんな白虎の背後に伐は突然現れるとあざ笑うかのように言う。

 彼の言葉と同時に先ほど砕け散って床に落ちた防御壁の破片は空中に舞い上がると巨大な氷の刃になり、白虎を全方位から狙うようにその刃を向けた。


「もう一度言う。相手をするのが面倒だから、帰ってくれねえか。本番前にあんまり力を使いたくねえんだよ」

「本番前だと?」

「……ああ、わざわざ、こんな面倒な事を画策したバカとな。相手をするのも面倒だったから、放って置いたが今回の事は気に入らないんでな」


 伐の声に白虎は振り返る事無く聞く。

 その声に伐はけだるそうに返事をするが白虎の相手をするよりも倒すべき存在がすると言いたいようであり、彼の身体からは殺気のような物が放たれている。


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