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第三五話

「これで全員だな」

「そうだね。とりあえず、まだ行方不明な人間はいるけど……関係はなさそうだよね」


 依頼されていた失踪していた少女達の確保が終わったようで伐はタバコを吹かしながら言う。

 伐からの連絡を受けて部下を連れてきた真は部下達が失踪者達を確保しているのを背にして失踪者のリストを眺めて返事をする。

 失踪者リストにはまだ数名の名前があるため、伐の態度に真は確保できていない失踪者のリストを伐の前に出す。


「ねえな。今回の被害者は浚われる前は処女(未経験者)だろ。リストに残っている女どもはその辺で遊びまわっている尻軽だ。その辺は居そうな場所を後で連絡してやるよ」

「確かに被害者のカウンセリングをした事をまとめると未経験者(その通り)だったんだけど……一応は外に情報を漏らしたつもりはないんだけど、それをどうして、ノラ猫くんが知っているのかな?」

「どうでも良いだろ。それに生贄ってのは昔から処女をささげるって相場が決まっているだろ……昔から処女厨ってのはいるんだな」


 リストに興味などないようで伐はタバコを吹かしているが、まだ見つかっていない失踪者達の情報もつかんでいるようでけだるそうに頭をかいた。

 この街で伐の情報収集能力には敵わないと言いたいのか真はため息を吐くものの、伐が今回の失踪者騒ぎが終了したと判断した理由を聞く。

 白虎の化身が召喚されている事もあり、伐はリストの人間をすべて回収し終えた事が始まりだと思っているのか眉間にしわを寄せるが、それ以上に気になった事があるようで彼は眉間のしわを深くするとぽつりと言葉を漏らす。


「確かに良く聞く話だけど……ノラ猫くんにかかると神様や宗教も一気に品位が下がるね」

「仕方ねえだろ。俺はその対極に位置するんだからな。それにその辺で幅を利かせているインチキ宗教家だって処女厨だろ」

「確かにそう言う話も多いね……そう言えば、ノラ猫くんも未経験者は好きだよね。白猫ちゃんの初めても欲しかった?」


 つぶやきは真の耳にもしっかりと届いており、彼は小さく肩を落とす。

 真の言葉に伐は興味がなさそうに自分は歪みだと言うと真は彼をからかう言葉を思いついたようで小さく口元を緩ませた。

 彼の口から出てくる言葉は下衆と言うに相応しい言葉であり、伐は呆れているのか冷めた目で真を見る。


「欲しくなかったの?」

「……それはそれだろ。別に気にする気もねえし、どうでも良い問題だろ。どちらかと言えば十歳以下がストライクゾーンのお前の方が危険だろ」


 伐の視線が冷たかろうが真は彼をからかうのを止める気が無いようで楽しそうに口元を緩ませて伐の顔を覗き込んだ。

 目の前に出てきた真の顔を見て、伐はけだるそうにため息を吐く。

 彼自身は処女、非処女など興味がないようであり、処女信仰と考えると真の方が問題あるのではないかと言う。

 真は警察ではその特殊な性癖を隠しているようで、伐の言葉が聞こえてしまった彼の部下達は認める気はないようで悪質な冗談だと言って彼らから離れて仕事を行っている。


「おかしな事を言わないでよね。僕にも外面ってヤツがあるんだから」

「……外面じゃなくて、少しは真っ当な道を進めよ」

「それをノラ猫くんに言われるとは思ってなかったね。僕はノラ猫くんと違って手あたり次第って事はしないよ。後、僕だって別に処女、非処女は問わないよ」

「お前の好みの年齢で経験者だとそれはそれで問題あるだろ」


 部下達に距離を取られた事に真は傷ついたと言いたいのかわざとらしいくらい大袈裟に肩を落とす。

 伐でも真の性癖は理解できないようで眉間にしわを寄せて言うが、女関係のだらしない伐には言われたくないと真は大袈裟にため息を吐いた。

 しかし、彼の言葉の危険さはさらに上がっており、部下達は距離を取ってはいたものの聞き耳は立てていたようで伐と真から部下達はさらに距離を開ける。


「ほら、ノラ猫くんがおかしな事を言うから、僕の株が急下降だよ」

「……元々の株価が最底値だろ」


 部下達が離れて行った様子に真は伐へと非難するような視線を向けるが伐は真の視線より、短くなってきたタバコの方が気になったようでタバコを手に取ると近くにあった灰皿へと押し当てて火を消す。

 火が消えたのを確認すると懐から新しいタバコを取り出して火を点けて、煙を肺一杯に吸い込んだ。


「吸い過ぎは良くないよ」

「俺の健康状況を気にしたって仕方ねえだろ」

「悪くなるかはわからないけど、外観上は人間(僕達)と一緒なんだから」


 タバコを吸う伐の様子に真は少しタバコを控えるように言うが、伐は自分が人間ではない事もあり、健康状況よりは趣味趣向を優先すると言い切った。

 その言葉に真は苦笑いを浮かべた後、何かあるのか表情を引き締める。


「何だよ?」

「結局、今回の件は白猫ちゃんと関係あると思う?」

「そんなもん、聞いてどうするんだよ?」

「やっぱり、面倒な事になっているんだね」


 怪訝そうな表情で聞く伐に真は今回の失踪事件とクリスの事件の関係性を聞く。

 その言葉に伐はやる気のなさそうな声で答えるとタバコの煙を天井に向かって吐いた。

 彼の様子に真は状況が悪くなっていると考えたようで眉間に深いしわを寄せる。


「……なんで、そうなるんだよ?」

「そりゃあ、ノラ猫くん……猫とも付き合いが長いからね。考えている事はある程度はわかるよ」


 真の反応に伐は怪訝そうな表情をするが、真には真なりにこの街で生きていたようで伐や大和の性格を熟知していると言いたいのかため息を吐く。

 その言葉に伐は面倒だと言いたいのかけだるそうに頭をかくとこれ以上、真の相手をする気はないのか部屋を出て行こうと歩き始める。


「ノラ猫くん、頑張ってね。君が居なくなると面倒事を押し付ける相手が居なくなって大変だから、それに白猫ちゃんはからかうのは楽しいし、もう少し、白猫ちゃんで遊びたいからね」

「……せめて『で』じゃなくて『と』にしてやれよ」

「それじゃあ、お仕事の続きでもしようかな」


 真は伐の背中に向かい、軽口ではあるが彼の身を心配するように声をかけた。

 その言葉に伐は振り返る事無く手を振ると部屋を出て行き、真はこれから危険な事に足を突っ込むにも変わらない伐の態度に小さくため息を吐くと自分の仕事に戻って行く。


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