表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/52

第三四話

「……計画は順調に進んでいるようだね」

「そのようです……」

「どうかしたかい?」


 街を見下ろすようにそびえ立つビルの一室で金色の髪をした美しい青年がイスに腰を下ろし、秘書と思われる女性の報告を受けている。

 青年は報告された内容が満足の行く内容だったようで小さく口元を緩ませた。

 その笑みは一見すれば見た者を虜にするほどの美しさがあるが、同時に見た者を恐怖させる冷たさも混在しており、秘書の女性は背中に冷たい物が伝ったようで声を震わせる。

 青年は彼女の反応に首を捻ると秘書の女性は何でもないと首を振った後、次の仕事があるため、青年に頭を下げて部屋を出て行く。


「……あまり、怖がらせるのもどうかと思うぞ」

「入室を許可したつもりはない」


 ドアが閉まる音と同時に黒いスーツ姿の男性が部屋の中に突然、現れる。

 男性の姿に青年は彼を咎めるような視線を向けるが男性は気にする事無く、部屋の中央に置いてある高級そうなソファーに腰を下ろし、タバコに火を点けた。


「……ここは禁煙だ」

「堅い事を言うなよ。お仲間だろ」

「……勘違いするな。俺は雇い主(飼い主)でお前はただの犬だろ」


 男性の行動に青年は冷たい声で言うと男性は彼を挑発するように笑った。

 青年は男性の事を完全に見下しているようで鼻で笑うと男性はわざとらしいため息を吐くと舌をだし、タバコの火を舌に押し付けて消す。

 男性の行動など青年は興味がないようで眉一つ動かす事はなく、その様子に男性はつまらないと言いたいのかタバコを舌の上に置くと飲み込んでしまう。


「……つまらねえな。これなら、俺があの嬢ちゃんの相手をしたかったぜ」

「それもできなかったようなゴミが余計な事を言うな。お前があいつを壊す事ができればこんなに面倒な事にはならなかったんだ」

「勘違いするなよ。あの件に関して言えば、俺の責任じゃない。あの嬢ちゃんが粗悪品だっただけだ。巫女になり切れない出来損ない。それに関して言えば、しっかりと教育できなかったそっちの落ち度だろ。責任転嫁は良くないんじゃねえか?」


 完全に自分の事を見下している青年の様子に男性はつまらないとため息を吐くと青年は男性を役立たずと言いたいのか感情を隠す事無く舌打ちをする。

 青年の様子に男性は楽しそうに口元を緩ませ、その様子が青年にとっては目障りのようで忌々しそうに顔をしかめた。


「だいたい、そっちがまともな巫女を用意できなかったから、俺が代案を出してやったんじゃねえか。力のある能力者に白虎の化身を食わせて生贄にして、それを出来損ないの巫女に食わせてしまえば良いと白虎の化身を食わせた生贄は白虎の力を開放するには充分なエサだとな」

「……代案と言ってもたいした物でもないだろう。それを用意するだけでいくらかかっていると思っている。それ以外にもこちらの動きを見せないために裏工作をしたり、あのような場所やクズを集めたり、失敗でもしたら大損だ」

「金くらいいくら使ったって良いじゃねえか。白虎の力を使えればなんだって好きなようになるんだからな。他の聖獣を復活させないように裏工作だってやりたい放題だ。それこそ、黄龍もな」


 青年は男性の提案に使わされた労力の事を考えると割に合わないと言いたげだが、男性は気にする必要などないと笑う。

 その言葉に青年は口元を小さく緩ませる。

 その表情からは彼が自分の利のためにすべてを利用しようとしているように見えるが、男性はその笑顔を見て口元をわずかに緩ませた。


「しかし、良くこの掃き溜めのような街にあのような能力使いがいたものだ。生贄ではなければコマにしてやっても良かったものの」

「掃き溜めだからこそ、あいつのような存在が集まるんですよ。俺やそれこそ、あんたみたいなゴミクズが」

「私を貴様達とゴミクズを一緒にするな。そのような事を次に口に出して見ろ。この場で首を落としてやる」


 青年の言う能力使いとは伐の事を指しており、青年は伐の能力の高さを買っているのか殺してしまうには惜しいと言う。

 しかし、その目は伐の事などその辺に落ちているゴミクズと同様に考えているようで完全に見下しているように見える。

 男性はその言葉に他人を見下している青年も自分と同様のゴミだと言い、その言葉は青年にとって我慢できなかったものだったようで男性へと鋭い視線を向けた。


「首を落とす? それは怖いな……ただ、あんたのコマで俺やあの小生意気な猫を殺す事ができるとは思えないけどな。白虎の力を制御する事も出来損ないの巫女もそうだが、巫女を生贄にしなければ白虎の力も扱えない雑魚が」

「……ぐっ」


 青年の鋭い視線になど恐怖も感じないようで男性は鼻で笑うと青年を雑魚と吐き捨て彼に向かって右手を伸ばす。

 男性は何かを握りつぶすように手を動かすと青年の顔は歪んで行き、胸を押さえて膝から崩れ落ちる。

 床に膝を付く男性を見下しながら男性は楽しそうに声を上げて笑った後、まだ、青年を殺す気はないようで手を広げた。

 それと同時に青年の胸を襲って痛みは晴れたようであり、青年はふらふらと立ち上がると男性を睨み付ける。


「そんなに怖い顔をするなよ。今のところ裏切るつもりはねえよ。あの邪魔な猫を消すにはまだお前は利用価値があるからな。後はこっちも貰っているからな」

「利用価値だと?」

「そうだろ。俺はあいつをこの世から消し去れればそれで良い。あんたが白虎の力を使って好き勝手に動こうがどうでも良い。ただ、降りかかる火の粉くらいは払うつもりだけどな。せいぜい、飼い犬に腕をかまれないようにな。ご主人様」


 青年の様子に男性は口元を緩ませると自分は青年のコマだと口では言うが、依頼主として敬意を示している様子はない。

 その様子に青年は顔をしかめながら、男性の本意を探ろうとするが男性は緩い笑みを浮かべながら、現状では裏切る気はないと言うと一瞬で青年の隣に移動して彼の肩を叩く。

 青年はその様子に驚きの表情をするが男性は気にする様子もなく、忠告だけすると足元から身体が透けて行き、姿を消してしまう。


「……化け物が、見ていろ。白虎の力を得たら、初めに殺してやる」


 見下していたはずの男性に手玉に取られた事に怒りが込みあがってきたようで青年は壁を叩きつける。

 部屋の中には大きな音が響くが青年の声に返す声は無い。


活動報告にも書きましたが、先日から肩こりが再発してしまい、パソコンに向き合うのがしんどい状況になっています。

現在は勇者の息子と魔王の娘?も同時に執筆しているためか、交互に書いている状況です。

しばらくは毎日更新は難しいと思いますがご了承よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ