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第二九話

「でも、噂の原因は伐だったんだから、噂話もバカにはできないと思うわよ」

「噂の化け猫が伐? なぜ?」

「そのままよ。伐が人を襲っていたから」


 雪は伐が噂の原因だと話すが、クリスは化け猫とは言われる理由が伐には見つからないと首を捻る。

 その疑問に雪は伐が人を襲っていたと答えるが、クリスは状況が把握できないようで眉間にしわを寄せた。


「……どうして、伐が人を襲う必要があるんですか?」

「食べ物もお金もないからね。人から取り上げるのが手っ取り早いと思ったんじゃないの?」

「そんな……伐はもっと頭が良いと思いますけど、どちらかと言うと頭を使ってお金をだまし取るとか詐欺師とかの方があってそうですけど」


 雪はその時の伐の精神状況がわからなかったから何とも言えないと首を横に振る。

 クリスは伐の印象から、腕力で他人を襲う事は考えられないと言いたいようで少し考えると詐欺とかで他人をだまして収入を得て居そうだと結論を出す。


「そう? 結構、あいつは力づくが多いわよ」

「そんなイメージが無いんですけど」

「まぁ、それなりに噂になるくらいの時間はあったはずだし、頭も使っていた時期はあったんじゃないかな?」

「でも、やっぱり、化け猫って言われるのは何か違うんじゃないですか?」


 雪は楽しそうに笑うがクリスの持つ伐のイメージはもっとクールなようで首を捻っている。

 彼女の様子に雪は深く考えなくても良いと思っているようで苦笑いを浮かべるとクリスはそうかもと思ったのか小さく頷くが、化け猫と呼ばれる理由がわからないため、首を捻った。


「伐は実は霊能力者なのよ」

「……そう言う冗談はもう良いです」

「どうして、本当の事を言っているのに信じてくれないかな」

「本当って信じられませんよ。普通」


 クリスの疑問に雪は真面目な表情をすると伐を霊能力者だと言う。

 しかし、クリスはその言葉をまた冗談だと思ったようで呆れ顔で首を横に振った。

 彼女の反応に雪は傷ついたと言いたいのか大袈裟に肩を落とすがクリスは信じられないと言いたいようで大きく肩を落とす。


「そうね。体験した事ないなら信じられないかも知れないけど、少なからず、この世の中にはそう言う存在ものがいるのは確かよ。大和も伐ほどじゃないけど、不思議な力を使えたし、それにまこちゃんはそう言う不思議な現象を処理する部署で働いているらしいから、ほら」

「……よく出来た合成写真ですね」


 雪は信じて欲しいと言うと証拠を出そうとしたようでスマートフォンを操作し、真が写した画像を表示して行く。

 その画像には心霊写真と言われても良い物や妖怪、物の怪の類と一般的に呼ばれている物を捕獲した物であり、クリスは信じられないため、合成写真と判断を下す。


「……信じて貰えないか」

「信じませんよ」

「信じて貰えないとこの話は終わっちゃうんだけど」


 彼女の反応に雪は残念だと言いたげに大きく肩を落とすとクリスはため息を吐く。

 雪は信じて貰えなければ伐の話はこれで終わりだと言い、クリスは信じるべきかと頭を悩ませ始める。


「し、信じます」

「信じてないわね」

「そ、そんな事はないですよ」


 雪の冗談に付き合ってでも伐の過去の事を聞く事を優先しようと判断したクリスは伐が霊能力者だと言う事を信じると頷いた。

 彼女の悩む姿が面白いようで雪はわざとらしく疑いの視線を向けるとクリスは首を大きく横に振る。


「伐、クリスちゃんが伐が霊能力者みたいな存在ものって言っても信じてくれないんだけど」

「……余計な事を言うな」

「ば、伐、身体、濡れているよ。風邪ひいちゃうよ」


 その時、タイミング悪く伐が帰宅したようで彼を見つけた雪は伐を呼ぶ。

 彼女の言葉に伐は不機嫌そうに言うとクリスは伐の身体が濡れている事に気が付き、声を上げると彼に駆け寄ろうとする。


「……お前には関係ないだろ。それより、昼夜反転しているにしてもいつまで起きているんだよ。さっさと寝ろ。雪、お前も帰れ」

「えー、私、今日は泊まる。そして、クリスちゃんと同じベッドで寝るんだ。伐が羨ましがるようないろんな事をする予定なんだけど」


 心配など要らないと伐はクリスの行動を制止すると雪に家に帰るように言う。

 クリスは拒否された事にしゅんと肩を落とすと雪は彼女の様子に苦笑いを浮かべた後に泊まるつもりだと言うとクリスの身体にイタズラをすると言い切って両手の指を滑らかに動かして見せる。


「……勝手にしろ」

「勝手にする。クリスちゃん、今夜は寝かせないわよ」

「ば、伐、助けて!?」


 相手にするのも疲れたと言いたいのか伐は眉間にしわを寄せたまま、風呂場の方に向かって歩き出す。

 雪は彼の言葉に許可が出たと判断したようで口元を緩ませながら、クリスの腕を取ると寝室に向かって引っ張って行く。

 クリスは雪が女の子を押し倒す気はないと言ってはいたが、先ほど見た指使いから身の危険しか感じないようで伐に向かい助けを求める。


「……知らねえよ。命の心配はないんだから、勝手にしろよ。新しい世界が見えるかも知れないぞ」

「そ、そんな世界見たくないよ!?」

「大丈夫よ。女の子の気持ち良いところは女の方がわかるんだから、いろいろと教えてあげるわよ。伐、覗いたらダメよ」


 彼女の助けを求める声を伐は振り返る事無く、拒否すると雪はクリスの反応が楽しいのか笑いながら彼女を寝室に連れ込んで行き、内側から鍵をかけた。


「……覗かねえよ」

「本当に?」

「覗かねえから、さっさと寝ろ」


 背中越しに聞こえる鍵が閉まる音に伐は呆れたようにため息を吐く。

 雪は伐の反応を予想していたのか、すぐに鍵を開けて廊下に顔だけ出して確認するが伐は相手をする気はないようで振り返る事はない。


「つまんないな……あ、クリスちゃん、カギを開けて」

「い、いやです。私はそっちには興味がありません!!」

「……お前ら、一応、夜中なんだからな」


 雪はつまらないと言いたげに頬を膨らませた時、クリスは雪を寝室から押し出してすぐにドアに鍵をかけた。

 背後から聞こえた音に雪はドアノブを動かすが、彼女は鍵を開ける事はなく雪は開けろとドアを叩き始める。

 その様子に伐は静かにしろと言うと風呂場に入って行く。


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