接触
転校生が来て、早くも1週間が経った。
最初は興味本位で話しかける奴が多かったが、彼女がそっけない態度しかとらないため、だんだんと人が近寄らず最後には俺と同じように一人で本を読んでいる。
いや、俺と一緒というのは違うな。
環境こそ同じようなものの彼女は何でもずば抜けてできていた。
運動、勉強、料理。彼女に勝てるやつが本当にこの学校にいるのかと思うくらいの優秀者だった。
何をせずとも勝ち組であり続けるあんなやつに俺たち凡人の気持ちが届くことはないのかもしれない。
まぁ、あれだな。天才ゆえの孤独ってやつだな、たぶん。
心の中でざまぁみろと嘲笑っていたのを見透かされたわけではないと思うが、突然どこかから睨み付けられるような視線を感じた。
背中を震わせ辺りを見回してみるも誰も俺の方なんか見ず仲良くなった奴らと談笑する姿だけが確認できた。
…気の所為だったのか?
俺は勘違いだと思うことにしてふたたび本に視線を戻そうとした。
が、それを阻む者がいた。
「なぁ、ちょっといいか?」
俺は妨害されて嫌な気持ちを隠そうともせず、答えた。
「…なんですか?」
「おぉ、怖い怖い。少しは顔に出さないようにしろって」
体全体を抱くようにして震える仕草をしている。
なんで知りもしないクラスメイトにそんなこと言われなくちゃいけないんだ。
それに、反応の仕方もムカつく。
ますます気分を害しさらに顔をムスッとさせる。
「いや、ホント悪かったって。俺、神野紅って言うんだ。お前は?」
いや、聞いてねぇよ。
と心の中で一言文句を言う。
しかし、相手が名乗ってしまった以上ここで名乗らないと釈然としないので渋々名乗ることにした。
「……加羅北涼」
「涼って言うのか!これからよろしくな!!」
よろしくする気なんかねぇっての。
「さっそくお前の力を貸してほしいんだが…」
深刻そうな声を出す神野紅。
「春休みの宿題見せてくんねぇか!」
「やだ」
「即答!?」
俺、こういう奴一番嫌いだわ。
「見せて!」
「やだ。なんでお前なんかに見せないといけないんだ」
「俺たち友達だろ!?」
「んなわけあるか!」
「えぇ!?だって自己紹介しあったじゃん!」
「そんだけで友達になれるか!?」
「とにかく見せてくれ!」
「嫌だ!」
「じゃあ、私とは友達になってくれるかしら?」
「だから嫌だって言って……え?」
今、私って言ったか?
俺は声のした方を恐る恐るといった風にゆっくりと顔を向けた。
そこにはいるはずのない転校生━━西原静乃が微笑んで立っていた。
クラスも自ら声をかけに行った転校生の行動に驚き、俺と転校生を交互に見合っていた。
しかし、この中で一番驚いているのは俺だ。
な、なんなんだコイツ?
一体全体どうして俺なんかが話しかけられているのか考えてもわからない。
あぁ、神よ。俺にどうしろというのですか。
俺は心の中で必死に問いかけていた。