【一寸法師2】
打出の小槌で成人男性としての立派な身体を手に入れた一寸法師は、今まで自分を苦しめ続けてきた憎き鬼達を、逆に打出の小槌で小さくし、それを踏みつけては、追い掛け回しては、気の向くままに遊んでいた。
そして、そんな事も落ち着いた、この日…。
一寸法師という以前の自分の体の大きさを表現して付けられた名前では、色々と不都合が生じると判断し、役所に名前変更の手続きを願い出ようと自宅を後にした。
「あ!こんにちわ」
「…うぃっす」
「イッスンさん!今日は何処かへお出掛けですか?」
「ああ。ちょっと役所に行って来ようと思っている。名前を変えたいんだ。もう、一寸法師じゃねーんだし、名前もこのままじゃいかんだろー」
「ええーー!?名前変えちゃうんですか!?イッスンさんはイッスンさんのままがいいですってー!」
「…なんだとー?」
一寸法師は腰にブラ下げた打出の小槌をわざとらしく右手に掴んだ。
「あ!いや!いえいえ!すみません、名前変えた方が良いですよね!僕もそう思います!」
一寸法師は1度右手に持った打出の小槌を腰のベルトに入れ直した。
体が大きくなり、鬼から打出の小槌を奪った後、一寸法師はその打出の小槌を使い、気に入らない人間や、以前自分をバカにしていた人間達を、片っ端から小さくし、その後も自分に意見をいう人間に対しては容赦なく打出の小槌を使っていた。
極端に小さくする必要もなく、身長を5センチだけ縮ませるといった細かいテクニックにも磨きを掛け、村人の1人が大事なデートがあると分かると、そいつの身長を10センチばかり下げ、みっともないものにする等、イタズラとしても使い、直接は言わなくとも、みんな影では嫌っていた。
(ウィーン)と、役所の扉が開かれ、受付けでの手続きをしようとした時「番号札をお取りください」と、多少の言い回しを不快に感じ、一寸法師は打出の小槌を右手に持って「おおきくなーれ!おおきくなーれ!おおきく!おおきく!なりやがれー!!!」と言い、ソイツの頭をボンボン叩くと、受付け女性は一気に身長が伸び上がり、屋根をツッポギ、雲から顔を出していた。
「わぁーはっはっはっ!早く名前を変えやがれーー!」
5分後…役所から出て来たばかりの打出の小槌を持った男の右手には、印刷されたばかりの自分の身分証明があった。
そこには[一寸法師]と名前を表記する部分が慌てて訂正されたかの様にマジックペンで、ビーっと、横線2本が書かれてあった。
更に、その上には[サカギバラ・シンタロウ]といった新たな名前も大きく表記されていた。
めでたし。めでたし。
(はい!おしまい)
いぇい☆




