精神科医・霧藤愁成のうんちく
【デジャヴュ・既視感】……『夢わたり』第一章・3
実際は一度も体験したことがないのに、すでにどこかで体験したことのように感じること。
ある行動を元に記憶が呼び覚まされるような感覚。
【肉体は脳に支配される】……『夢わたり』第六章・2
脳がそうだと感じれば、肉体は反応する。
動悸、発汗それ以上のことさえ、脳が感じればそれが肉体に現れる。
事故で手を切断した人が、あるはずのない手の痛みを訴えることがあるという例えに基づく。
これは脳がまだ手がなくなったという肉体の現実に反応できず、手が痛いという指令を送ることで、無いはずの手を痛いと感じるという例。
「脳が認識すれば、無いはずの感覚すら肉体が感じる中、脳の活動である夢を見る行為とは、あなたが思っているより危険ということです。特にあなたのように夢と現実を曖昧にしている人はね」
【明晰夢-Lucid Dream-】……『夢わたり』第六章・3
夢の中で自分が夢を見ているという、認識をもって見る夢のこと。
【ナルコレプシー・過眠症】……『夢わたり』第九章・5
場所や状況、時間を選ばずに突然眠りに落ちる病気。
常磐は簡単に『眠り病』と呼んでいる。
ただし、鈴の症状はナルコレプシーの症状と異なる部分も多い。
【痛みの記憶・脳と感覚】……『夢わたり』第十章・3
人は痛みを経験し、苦痛を記憶、学習することで、それを回避しようという能力が備わる。
実験として、常磐は霧藤に手に火のついていない煙草を押し当てられた。
「常磐さんは僕が煙草に火を点けたのを見て、立ち上る煙を見て、臭いをかいで、僕が持っているのは火の点いた煙草だと認識した」
「常磐さんは、僕が火の点いた煙草を机の下に隠すなんて、考えてもみなかった。だから、火のついた煙草を押し付けられたと思い込んだ脳が、手が熱いと勘違いをしたんです」
【エゴ】……『其の弐』第二章・2
ラテン語で自我、自己意識のことで、哲学や精神分析学における原理。
エゴイズム、エゴイストなどの略として使われる。
「でも、人にエゴは付き物ですから。エゴを悪いものだと思うことはないです。人の数だけ思考があり、それを主張したり、他人のそれに同調したり、反発したりして人間関係は成り立っている」
「僕自身、エゴの固まりのような人間ですからね」
【名指し効果】……『其の弐』第五章・2
協力者、手助けが欲しい場合には、その人物を呼びながら頼むと効果的。
それまでは他人事だったことが、名前によって繋がりを生じ、自分が何かをしなければいけないのだと感じるようになる。
灯のストーカー作戦にて西山に使用。
【睡眠の重要性】……『其の参』第一章・2
睡眠は食事よりも、生物が生きるのに大事な要素かもしれないという話。
睡眠を与えないラットと食事を与えないラット。
睡眠を与えられなかったラットの方が、食事を与えられなかったラットより早く死亡したという実験に基づく。
ただし、この実験はラットを寝かさない過程で、突付いたりショックを与えたことによるストレスが、原因になってる可能性がある。
【日本語の寝るの意味】……『其の参』第二章・3
睡眠・性行為・死。
「一つはもちろん“睡眠”。もう一つは“性行為”」
「……あと一つは?」
「永遠の眠り。つまり“死”を意味する」
【ショートスリーパー】……『其の参』第三章・2
人の夜行化が進行し増えた、毎日の睡眠が三時間ほどでも健康を保っていられる人たちのこと。
日々の睡眠時間を徐々に減らしていき、体を短い睡眠に慣れさせる事で可能とされている。
【マイクロスリープ】……『其の参』第三章・2
睡眠を完全に無くすことは実質不可能。
脳が自身で防衛本能として、最低限の生命維持を計るため、勝手にスイッチを切り、数秒から数十秒の休息を体に取らせること。
【眠らないハエ】……『其の参』第三章・2
遺伝子の操作によって作ることに成功した睡眠をとらないハエのこと。
その代わり普通のハエより短命。
「しかし、この眠らないハエは、眠らず活動し続ける代わり、どのハエもすべて短命に終わった」
「まるで、眠りの分を命で補うように」
【カタプレキシー】……『其の参』第八章・2
ナルコレプシー患者に多い脱力発作。
激しく感情が昂ぶると、全身の筋肉の緊張が突然失われる。
鈴はそのまま眠りに落ちることがほとんど。
【恋愛は脳の錯覚】……『其の参』第十章・1
誰かのために何かをすることで、それをしている自分は、おそらくその人物が好きなのだろうと思い始める。
見返りから相手からの愛情を求めるようになるというのが、行動から始まる恋愛という話。
人を好きになると、その人に会うことで脳内からフェノールエチルアミンと言う脳内物質が出る。
逆にこの物質が出ているときに、出会った人間のことは好きになる確率も高い。
さらに、この物質によって得られる快楽は、麻薬の何倍にもなる。
身体はこの物質を欲しがって、その人に会いたい、恋しいと思うようになる。
フェノールエチルアミンは強力な快楽をもたらすもので、分泌し続けると危険なため、脳内の分泌もやがては収まる。
この分泌が収まるまでに深めた絆によって、恋は愛着という名の、なくなると寂しいと感じる情に変わる。(=愛情)
【欠伸の同調】……『其の四』第一章・3
欠伸の伝染は、人の感情移入する力、共感能力によって発生するという説。
欠伸の伝染という現象は四歳以下の子供、また自閉症の子供には見られない。
他者を認識するということは、自己認識能力が確立していることを意味する。四歳以下というと、まだその能力は未熟。自閉症の症状の一つにも、共感能力の欠如というものがある。
よって、他者を認識する、共感する力が、この欠伸の伝染に関わっているのではないかという説のこと。
酸素濃度の低い同じ環境にいるからという説もあるが、映像でも欠伸は移ることが分かっているため、まだ詳しくは判明していない。