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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

不幸な松岡シリーズ

屈辱の質問と誘導尋問

作者: 松岡良佑
掲載日:2025/12/28

実名を出せないのは難しいですね…。

 私の名前は松岡良佑。

 こんなんでもネット小説大賞受賞経験者で漫画も連載中だ。


 そんな私は、水曜日に放送している、商業地区,都心部を意味する『Downtown』をコンビ名としている人の番組が大好きである。


 特に名探偵津田が大好きだ。

 ちなみに、この名探偵津田は1の世界の津田さんの事であり、2の世界の同姓同名の人物とは一切関係ない事を明記しておく。

 実在の人物の名前は出せないからね!(私はルールを守ります!)


 この人は凄いごいす――タイプミスしましたが、とにかく凄い!

 雪山ペンションで才能を開花し、因習村の事件を解き、リゾートホテルでは新潟の寒さを舐めない用心深さを見せ、今回ついに時空の因果関係まで絡んだ謎まで解決した。

 もう、日本が誇る名探偵といっても過言ではないだろう。


 そんな1の世界の津田さんを特集した本が、2の世界で発売されると言う!

 まさに次元を超越した活躍だ!


 その雑誌名も頑張って伝わるように、かつ、実名を上げないように注意するなら【∀И∀И】とでも書くべきか。


 名前は昔から知っている。

 本屋で側を通り過ぎたとき、表紙が目に入ったこともある。

 その出版社にとっては申し訳ないが、私にとってはその程度の知名度であり、見た瞬間から忘れていく存在だった。


 それを、まさか買い求める日が来ようとは!!

 それがまさかこんな事になろうとは――



【2025年12月26日(金)】


 今日はその本の販売日。

 近所の本屋に早速足を運ぶ。

 どこにあるかは知らないが、まぁ、店内を歩いていればその内見つかるだろう。


 ――無い。


 無いぞ?

 流石名探偵津田さんの活躍を記した本だ。

 あっという間に売り切れ完売なのか?


 流石だ――


 全部をしっかり見た分けでは無いので見逃したかもしれない。


 ただ、今日は時間も無い。

 もう間もなく入院中の母の見舞いに行かねばならないのだ。


 仕方なく本屋を後にした。


 なお、後に分かる事だが、その本屋にはしっかり【∀И∀И】は置いてあったのは余談である。

 


【2025年12月27日(土)】


 昨日の本屋は規模が中規模本屋だったから無かったのだろう。

 今日は、大規模本屋に探しに行った。


 だが、大規模本屋を闇雲に探し回っても、無駄に疲れるだけだ。

 私は人間である。

 文明の利器を使わずしてどうする!?


 私はスマホを取り出し、素早いフリック操作で【∀И∀И】を検索する。

 もちろん【∀И∀И】で検索してもヒットしないのは明記しておく。

 ちゃんとこの情報から、真の雑誌名を推察してほしい。

 名探偵津田さんの様に。


 それはともかく、検索結果がズラリと並ぶ。

 やはり女性雑誌か。

 それは何となく知っていた。


「なッ!?」


 だが、問題はそんな事ではなかった。


『セッ(これ以上は18禁になるかもしれないので伏せる)で奇麗になる』


 たまたま選んだ表紙にはそう書いてある。

 表紙の女性もセクシーだ。


 ……アダルト本だったのか?

 女性誌では無いのか?

 あれ?


 仕方なくアダルトコーナーに足を向ける私。

 何か腑に落ちないが、仕方ない。

 そうこうしている内に、該当コーナーにたどり着く。


 ……誰もいない。


 だれか居ると(恥ずかしさが分散するので)探しやすいのだが……。

 仕方ない!

 私は両頬をパチンと叩き、捜索を開始した。


 ここからは時間との勝負だ。

 長時間ここに居るのは、社会的にあまり好ましくない。

 レンタルビデオ店なら、区切られた区画だったが、本屋はそうではない。

 堂々と勇ましく、あられもない姿の女性達が並ぶエリアだ。

 長時間捜索していては、知り合いにでも見つかったら私が社会的に終わる!


 名探偵津田特集の表紙は覚えている。

 基本的に黒い表紙だった。

 俺は高速で視線を動かし目当てのモノを探すが無い。


 まさか!?

 発売2日目で平置きじゃなく縦置きで、陳列されているのか!?

 その縦置きの本を一冊ずつ探すが、当然無い。

 ここまでくると、性欲の猛獣的な姿形だ。

 背後を通過する女性の視線が背中を貫いた。


(違うんです!!)


 断じて違うと言いたいが、私も男。

 興味が無い訳ではないし……と、そんな事を言いたいのではない!


 駄目だ!

 無い!


 やっぱり女性誌だろう!?


 俺は女性が立ち並ぶエリアへ行き、立ち読みする女性たちの背後から本を探す。


 駄目だ!

 有る無いに関わらずこれは駄目だ!

 完全に変態だ!!

 絵面が絶望的に悪すぎる!!


 俺は仕方なく店員に聞いた。


「あの、えぇと、その、【∀И∀И】という本を探しているのですが……あっ!? えぇと……姉に……」


 ちなみに私に姉はいない。


 女性店員はギョッとしつつ俺を見る!

 当然だろう。

 男が女性誌を買うなどどうかしている――「あぁ、名探偵津田さんの奴ですね!」

 女性店員の顔がパッと明るくなり、俺をそのコーナーまで案内してくれた。


 察しの良い店員さんで本当に助かった。

 変態と思われずに済んだよ……。


 案内された女性誌のコーナーには、見事、平置きに【∀И∀И】積まれているではないか!!

 名探偵津田特集として!

 立ち読み女性の陰で見えなかったのだ!!


 俺は手を伸ばして本をとると、女性店員と一緒にレジに向かった。


「名探偵津田、面白いですよねー!」


「そ、そうですね! 面白いですよね!?」


「お姉さんも津田さんが好きなんですね?」


「……姉? あ!? はい!!」


 女性店員はニヤリと笑った。


 何と見事な誘導尋問よ。

 これが事件だったら俺は逮捕されていただろう。


 その後、母の見舞いに行き、意識不明の母に事の顛末を語って聞かせた。

 流れる涙は母に対する悲しみの涙なのか――

 はたまた恥ずかしい思いをした悔恨の涙なのかはわからない――


 俺はまた一つ賢くなった。

 何かを失った気もするが。

 だが、決めた!

 これを短編として発表するのが、小説家の端くれとしての矜持よ!

 辱めなど知ったことか!


 なお、その病院からの帰り道、最初の本屋に行くと、【∀И∀И】はしっかり置いてあったのは余談であり、そこで見つけておけば、今回の件が無かったのは余談である。

 タイムマシーンで昨日の俺に教えてやりたいが、俺は1の世界の住人では無いのが悔やまれる。


 何にせよ念願の本をゲットしたぜ!

 皆さん【∀И∀И】は女性誌コーナーですよ!

【∀И∀И】が女性誌なのは当たり前だって?

知らなかったんだもん!!

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