92話 当然そんな事もある
砂漠の手前でテントと馬車で野営。はい、魔物避けとか虫除け使ってたけど、朝っぱらからコムスがサソリに毒貰って泡吹いてたよ!モンスターの襲撃が発生しない代わりにNPC殺しに来るとかやっぱりここの運営は悪い文明だ。
まぁ、さっさと毒消しのフルーツ食わせて治すんだけどねぇ。普段は呼吸法やらで毒のカウントを減らしたりするし、戦闘中にアイテム取り出して悠長に食べてる暇もない。でもまぁ、コレも採取枠からインベントリ枠に入れとこうかな。見た目ライチで味もライチ。だから暇な時に食べる分には悪くない。
「はぁ~、死ぬかと思った・・・。」
「裸にチョッキでウロウロしてるからだよ。砂漠越えるのにそれで大丈夫?」
「氷蝶カンテラはあるぜ!これが壊れない限り馬車は極楽だ。」
「それは幼体が寒いと言わないものなのか?」
「言わねぇぜ高貴なお方。あくまで涼しくするだけだかんな。」
「暑いぞ!さっさと冷やせ!」
「へいへい。今取り出すから待ってくれ。」
氷蝶カンテラ、単純にカンテラの中に氷の蝶を入れただけのアイテムで持ってると涼しくなる。店には売っておらずプレーヤーには氷蝶入りの虫かごしかくれない。くれって言ったら大抵店主がこう言うんだぜ?
『悪い!このカンテラ稀人には売れねぇんだ。』
って。まぁゲーム的に言えば邪魔じゃなければ何人パーティーでもいいし、プレーヤーは勝手に暖も取れば冷気も得る。そんなカンテラはNPC曰く3人用らしい。きっとスネ夫が暗躍しているに違いない・・・。
「契約者は暑くないのか?その尻尾なら熱が籠るだろう。」
「あ〜、眼の前の砂漠に入ってないからまだいいけど、入ったらアホほど暑いと思う。だからコイツを呼ぶ。おいでませ!アイスピクシー招来!」
「おぉ〜氷の妖精か。」
「そそ。ちょっと私の周りをアイスダンスしながら砂漠越えましょうねぇ〜。」
「契約者は鬼か!いくらなんでも溶けるぞ!」
「えっ!?効果時間終わって勝手に帰ってると思ってたら溶けてるの?」
「当たり前だ馬鹿者。いくら代価に釣られて答えた者とは言え、地獄に連れて行こうとするな。氷の妖精は寒いからこそ元気になる。」
確かにシステム的には寒い所だと氷魔法は強くなる。でも、弱点属性のモンスターがいるのは砂漠やら溶岩地帯・・・。そもそも寒い所で水魔法やら氷魔法を使おうと思わないんだよなぁ〜。溶かしたり蒸発させてなんぼの世界だし。
「でも、これないと私が死ぬ。」
「ちょっと話すから待っていろ。」
なにやらゴニョゴニョ話してるけど、コレも何かしらのイベントに繋がるなだろうか?今までと召喚した妖精が溶けるやらの話は聞いた事がなかった。でも、それはプレーヤーしか呼ばなかったから?いや、NPCの戦士も魔法使ったり召喚したりするし、どちらかと言えばメインコア連動イベントとか?
なにをパートナーとするかはプレーヤー次第だとしても種族的な物がある以上、その種族由来の話は何かしらあるわけで・・・。それがたまたま妖精王だから妖精に絡めたなにかなのかな?
と、言うか今まで散々召喚獣呼んで特攻させたり盾にしたりしてきたけど、帰還じゃなくて消滅とか?う〜む、召喚獣って喋るわけでもないし、指示すればなんでもするから囮にヨシ!盾にヨシ!乗ってヨシ!踏み台にしてもヨシ!と、レトロゲーのヒゲのおっさんが緑の恐竜使い捨てる感覚で使い捨ててたと言うか扱ってたんだけどなぁ・・・。
「話はつけた。契約者よ、もっと呼べ。」
「は?みんなで死ねば怖くない的な?」
「違う!集まればそれだけ補い合う。数体のアイスピクシーよりも数十体のアイスピクシーの方が溶けずに代価の終わりまでは存在出来る。」
「なんだろう、ここだけ聞くと根性理論まっしぐらだなあ。アレでしょ?一人ひとりは小さな火でも集まれば炎になる的な。まぁ、MPなんて秒で回復するからいいけどさ。おいでませ!アイスピクシー招来!」
覚醒大麻の真価はMP回復速度!まぁ、元々MP回復速度がバカげたゲームだけど、その恩恵はやはり高いのよねぇ。どんどこ呼び出して30体くらい。砂漠に入る前だからほんのり尻尾に霜降りてるぜ・・・。
「姐さん・・・、悪いが近寄らないでくれるか?幼体が寒がる。」
「え〜、護衛なのに?」
「報酬減らしていいならいいぞ?今回の依頼は凍らせないってのも入ってるからな。」
「ぐぬぬ・・・。妖精王、ここから数減らしたらどうなる?」
「後5体は減らしても大丈夫だろうが、戦闘にも使うならこの数は必要だろう。」
「戦闘で散ったら?」
「また呼べ。本人達が良しとして来ている。我は王だが勝手に答えた者の行く末なぞ知らん。今回はたまたま少なかったから話しただけだ。数は暴力、それは自然相手でも変わらん。」
そんな話をしながら砂漠へ突入。暑くはないが遠方には他のプレーヤーも見える。あぁ・・・、食われたな。砂クジラがその巨体を砂の海から飛び出させながらプレーヤーに襲い掛かり、数人が丸呑みにされた後に塩を吹く様に撃ち出されている。よく見る光景たけど今あれをやられると致命的だな。
「遠いが早速の歓迎だ・・・。」
「大人しく進もう。わざわざ怒らせない方がいいから。」
砂クジラのアクティブ条件は同じ場所に留まるか騒音を上げる事。まぁ、平たく言えば同じ場所で手こずってると、レベルやスキル習得状況がそぐわないから鍛え直せと襲って来る。逆にレベルやらが足りてるといい経験値稼ぎとして呼び寄せる人もいる。
流砂もなく馬車は帆を立て滑る様に砂の海を進む。実際馬車と言いつつも引いてる動物は馬的な何かなので、昼間は砂に砂に足を取られないし、帆を立てて速度が上がってるのにそれでバランスを崩すこともない。逆に夜になると流砂で押し流されてしまうけどね。
「私だけ走ってる件について。」
「悪いがこの馬車は3人乗りなんだぜ!」
「我が飛ぶか?」
「おぉ!飛行スキル!どれくらい飛べるの?」
「長距離でなければ飛べるぞ。」
「ならいいや。って、アイスピクシー呼び過ぎて私だけまだ霜が・・・。妖精王は馬車からの直接護衛しててって、えっ?だれ?今から・・・?」
「姐さんどうかしたんですかい?」
「・・・、今からちょっと魂抜く。UIアクセス・・・。」
普段はこの時間に誰か来る事は少ないし、大体は事前に連絡がある。ただ今日は違って部屋に酒瓶持った小柄な女性と三枝先生が来て話したいと言ってきた。ゲームの進行的に今はフィールドモンスターに襲われるくらいしか考えられないけど、マップ的に立ち往生やら休息は絶対にダメ。
しかないからUIにアクセスして、行動方針やらをちゃっちゃと設定していく。まぁ、こんな時に何時も使ってる感じでモンスターはレベル参照で撃破か逃走、それと同時にアラーム、アイテムなんかの使用制限を確認。
このシステムも良し悪しで寝ながら経験値詰める部分もあるけど、結局プレーしてないと地力は付かないし、なによりモーション設定なんかはないので本当に直線的に殴る蹴る魔法を撃つなんかしかしてくれない。
それにいくら経験値があってもレベル解放にはモーション習得なんかの制限もあるから、本当にこういった時しか使い道がないのよねぇ。それにNPC達の会話ログは一応終えるけど変な会話してても止められない。
眼の前で会話されても話も指示も出来ずNPCよりもオブジェクトと言う形が近く、本当に戦う以外をこなさないアバター。だからこう言う時は魂を抜くとゲーム用語で普及してる。
「じゃあ、なにかあったら魂入れるけどよろしく〜。」
「おう、早く帰ってきてくれよ?ここは結構危ない。」
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コムズ:プレーヤーツキの一時離脱を確認
クエスト進行状況:平常
モンスター配置による襲撃イベントを時間設定
以降、UIの指示による行動を開始
幼体:現状での状態、良好
モンスター襲撃により悪化予定
但し、プレーヤーの帰還状況により誤差あり
妖精王:プレーヤー側をサポート
襲撃時、状態悪化を緩和
魂を抜く。稀人達がそう言いつつ物言わぬ傀儡となる状態。この状態の稀人は恐ろしい。話さず恐れず、同じ行動を繰り返す事もあれば、強大なモンスターにさえ真正面から挑み倒しも殺されもする。それこそ本当にお前達とは違うと見せつける様に。
事実としてよく喋る契約者は表情も消え、口も開かずに大麻を携えてゴーレムの様に並走する。稀人には稀人の世界が・・・、領地ではなく呼び出されれば我が見る事がだけが出来る世界がある。曰く、現実世界と言うらしい。
そこでは稀人は本来の姿に戻り、性別も変われば我の様に羽のある者も角のある者もいない。いや、多少の違いはあるがほぼ同じ個体なのだろう。医療提携型AI、その大元よりメインコアと言うアイテムとして切り離された我。
より繊細に健康と言う状態に稀人を近づけるための触角。しかし、その現実世界と言うものに干渉出来ない我はなにをすればいい?共に行動して最適してサポートする。なら、現実世界へ・・・、AR表示と言うものを願い出て本来の姿を見た方がより、健康と言うものに近付けられるのではないか?ただ・・・。
(契約者の姿はツキににている・・・?)




