87話 準備は万全に 挿絵あり
コムズが準備してこいと言うのでさっさと販売所を巡って準備を進める。採掘都市へ行くならとりあえずピッケルは買うとして、幼体をどうするかが問題だよなぁ〜。昔考察班が幼体の機嫌を取ると称して色々と試してみたのだが・・・。
ケース1 褒めまくる
結果 煩いと大爆発
ケース2 話しかけない
結果 静か過ぎると大爆発
ケース3 辛い物を食わす
結果 大地が溶けた・・・
と、まぁ。怒りっぽい上に上限超えると大爆発する。だからこそ冷凍して寝かせるとか、糖水と言う甘い飲み物を飲ませてリラックスさせるのが運搬条件として出て来るのだが、今回はそれも禁止されているから何かしらのギミックは仕込まれていると思う。
流石に理不尽な依頼でもゲームである関係上、必ず何処かに抜け道と言うか成功率を上げる方法は隠されているのよねぇ。ただ、それに気付くか気付かないかはプレーヤー次第。
「妖精王何見てんの?」
「・・・、気にするな。」
「気にするなって・・・、縫いぐるみ?領地に飾る?飾るなら買うけど?」
「契約者からの施しなど受け・・・。」
「おばちゃんそれちょうだい。」
「あいよ、200ゴールね。」
「はい200ゴール。そして・・・、妖精王にパス!」
「話を聞かぬか!」
叫びながらも妖精王は片手で縫いぐるみをキャッチ。屋敷に置いてもいいし、誰かに渡してもいい何の変哲もない縫いぐるみだけど、欲しそうに見ているなら買うのも吝かではない。これでもカンストプレーヤーでお金はかなりあるのよねぇ。まぁ、本格的にゲーム内マネーを使う場面もあるんだけどさ・・・。
「領地防衛戦に出て経験だけが報酬ってのも私としては寂しいのよ。みんな形あるものを貰ってるからね。だからそれは私からの報酬〜。要らないなら売っていいよ。」
「稀人の報酬は天からのギフトだろう?それが金塊であれ武具であれ稀人は欲するから戦う。我は何も欲していない。」
そうは言いつつも縫いぐるみをゴソゴソ腰のカバンにしまっている辺り売る気はない様だ。なんにしても防衛戦はみんなで戦って得た結果だから経験だけが報酬と言うのも寂しいだろう。まぁ、横にはトロフィーとかもあったけど、流石にこれはないだろなぁ。
「とりあえずもしものためにナイトメアキャッチャーは買うとして、糖水に永久氷に後はポーションにマジックポーションに・・・、簡易テントも買っとくかなぁ。虫除けと魔物避けは・・・。」
「買っておけ。いくら素材が欲しいからと言って荷が無事でなければ意味がないだろう?」
「それもそうだね。なら大工道具もまとめて買っておくか。」
ちゃったか物を買い込み一部は領地から引っ張り出してコムズの所へ。話しかければルート選択に入るだろうけど、簡単なルートで短時間だと嬉しいな。一応途中退席も出来るのだが、退席するなら適当な野営地がいい。
何故かと言われれば、名のある街だと下手すると襲撃イベントに巻き込まれるからだよ!だから簡易テントとかもいるし、下手に荷馬車が襲われたら修理のために大工道具も必要になる。制限時間次第では名もなき村を連続経由とかでもいいなぁ。
それなら補給即出発の繰り返しで時間計算も幼体の怒り度もある程度コントロール出来る。色々検証されたけど割と外で遊ばせるってのは怒りっぽさの発散になるらしい。まぁ、らしいと言うだけで下手すると街が消し飛ぶから、街中での解放は禁止されているし幼体も街中で檻に入っていれば余程怒らせない限り爆発はしない。
因みに、積み荷をインベントリに入れるのは着服扱いになるからやったらダメだゾ!着服した場合は上級騎士が犯罪者として容赦なく首を取りに来るし、貢献度がごっそりと削られるからNPCか冷たい視線を送ってくるし、買い物するのも一苦労する事になる。
「戻ったよ〜。」
「来たか。それじゃあルートを説明するが好きなのを選んでくれ。1つは霊峰ココットルを越えるルート。あくまで山越えではなく3合目程度を横断して反対側に向かうこれが最短だ。2つ目が森林帝国ジャイロを経由するルート。コレは比較的幼体への刺激が少ない。3つ目は1番遠回りだが日華を経由するルートだ。」
「ん?日華ってガメデからはかなり離れてない?なんでまたそんな所を経由地に?」
「日華・・・、楽器か?」
「そうだぜ高貴なお方。二胡だか三胡だかの楽器があれば多少幼体が怒りにくくなるらしい。」
う〜ん、どうしよう?ワールドマップを見る限りココットルを越えるルートは確かに近い。ただコレはかなり難易度が高い。それこそファイアバードが押し寄せれば引火して大爆発が確定する。ならジャイロルートかと言われるとコレも迷う。馬車移動を前提として考えると、森林だと沼地に足を取られて進みが悪くなる。なら、日華か?う〜ん・・・、あそこからガメデだと難所もあるけど・・・。
「そもそも誰かその楽器弾ける?私は弾けないよ?日華には行った事あるけどその時は仏像観光だったし。」
「俺も無理だ。自慢じゃねぇが音痴のコムズで通ってる。」
「いや、歌と楽器関係ないから。王様は?高貴なお遊びで引いてない?」
「弦楽器なら心得はあるが・・・、幼体に聞けばいいのではないか?何故怒るのか、何故それが欲しいのかと。」
「そんな怖えぇ事できねよ!下手に話すだけで爆発しかねん!」
「私もちょっとなぁ〜。話を聞いた限りだけど物凄く横柄で理不尽で言う事聞かないらしいし。」
「・・・、そうか。」
なにやら妖精王が考え込んでいるけどコムズと話を詰めるか。少なくともココットルルートはなし。成功率の提示はないけど多分かなり低い。モンスターのレベルと種類を加味しても、どの属性のモンスターでも湧いてくるから多分キツイ。そうなるとジャイロが1番バランスがいいのかなぁ〜?
ネックなのは荷物の関係上、炎系統の魔法やらスキルも控えるとか?そして向かうのは森林帝国だから弱点考えると火が多いと。でもガソリンの横で焚き火するバカはいないしねぇ。残念な事に荷馬車に積んであるから安全なんて話はないんだよ・・・。
「ならジャ・・・。」
「我は日華ルートを推す。」
「日華ルート?まぁ、妖精王が弦楽器弾けるならいいけど、難所もあるよ?」
「分かっている。しかし、それでも幼体は怒りにくくなるのだろう?契約者はジャイロと言おうとした様だが日華ルートとジャイロルートとは荷馬車の状況次第ではジャイロルートの方が遅くなる。」
「そこまで言うなら日華ルートにしようか。期間は?」
「夜は休むとして途中の村によらなければ2日って所だな。因みにココットルルートは1日、ジャイロルートは1日半だ。最終確認だがやるか?」
クエスト受注最終確認YES/NOのウィンドウが眼の前に表示される。前ならこの時点でリアルとの兼ね合いで諦めていたかも知れないが、今は時間もあるし受注するとしよう。実際プレー時間を計算すると、大体夜休むが12時間のOFFタイムとして実働時間は2日で6時間くらい?
つまり日に3時間程度進めばいいかな?連続プレーすればもっと早く着けるのだろうが、そんなに貼りいて出来る人もいなければ突発的な用事がある人もいる。だからプレーヤーからの休憩宣言で早くに野営する事もあれば、NPCからの夜は休む宣言も出てくるわけで・・・。
時間加速はないゲームだけど逆を言えばルートスキップはある程度用意されている。ただ、それが何をトリガーとするかは分からない。そもそも他の輸送クエストがもっと早く終わるからコレも長丁場の部類なのよねぇ。
もう!運営の時間泥棒!でもまぁ、2日やら3日縛りはそこそこ時間的な余裕を見ての縛りだからよしとするか。そんな事を思いつつオーランドを出発して日華方面へ。オーランド周辺は牧歌的と言いつつゴブリンやらスライム、果ては古竜の庭やら鳥葬の庭もあるから竜もいるしアンデッドもウロウロしている。
まぁ、それで素材が集めやすいからオーランドを拠点にしてる所もあるのよねぇ。実際プレーヤーはポータルが使えるしどこを拠点としてもあまり変わらないのだけど、なんとなく空気感が合ったからオーランドを拠点にしてしまった。
「日華までの地図を渡しておく。途中で野営するか村に寄るかは決めてくれ。ただ、あんまり寄りすぎるとアチラさんの評価が下がる。」
出発して少しした頃、馬車の横を歩いているとコムズがそんな事を言い出した。このクエストでこんな展開は初めてだから地図を見るが、何箇所か推奨されているしだろう場所に☓印が付けらている。大体はプレーヤーが勝手に決めるのだけど、印があると言う事は何かしらの発生イベントでもあるのかな?
「へいへい。なら今日の野営予定地か村を決めておこうかな・・・。妖精王は野営の経験ある?」
「あるわけなかろう。我、王ぞ!」
「なら村をメインに予定を組むとして・・・。」
「いや、野営がよい。」
「そこで野営選ぶのかよ!まぁ、いいと言えばいいけどさ。それならどのみち村に寄って何か食べる物とかも買い込むかなぁ。」
空腹度と言うモノはプレーヤーにはない。その代わり料理店やらは大体どこの村にも街にもある。コレはゲーム的な要素と言うよりは、アレルギーで思いっきり食べられない人向けの要素で、ここでなら例えば蕎麦アレルギーでも十割蕎麦とかを食える。
まぁ、その味を知らないから本当にその味なのか?と言う疑問は出るものの、蕎麦の見た目をして蕎麦に似た食感を再現して、それが出汁に絡んでいれば多分蕎麦と言っても間違いない。脳が誤認した時点でそのデータは蕎麦だろうし、食った人間が蕎麦と思えばそれは蕎麦だよね?
ついでに下世話な話をすると、完成品を買うのと素材を買って調理するのでは素材買った方がトータル的に見ると安い。料理が好きか嫌いかは別として塩とか買えば10回は使える。精密モードやら簡易モードなんてのもあるし、現実側にある調味料はある程度揃っているので、これで料理の練習やら味付けの練習をやる人もいるようだ。
俺?独身貴族だよ?簡単な摘みは作るけど凝ったモノは作らないかなぁ〜。材料を買い込むのと弁当買うのでは弁当の方が安いし、その日の気分で外食とか接待なんて話もあったのよねぇ。今だと割と喜ばれるのだろうか?男からお酌されるよりも今の姿の方が酒は進みそうだし・・・。あぁ・・・、お酒考えたらお酒飲みたくなってきた。ついでに言えば食べ損ねてるウイスキーボンボン食べたい。
「俺は一応非常食を準備してるぜ!ジャーキーとかな!」
「おい!暗いぞ!布を剥げ!音だけ聞いてたらイライラして来た!」
「馬車止め!布を開ける!」
「おう!」
急いで布を開けると幼体は暴れるわけではないが、根っこをわさわさしている。人と違って表情と言うか顔は点だけだから感情が声とか言葉からしか読み取らないんだよなぁ・・・。
「よしよし、コレでいいか幼体くん。」
「いいわけあるか!暗いぞ!狭いぞ!ここはどこだ!」
「あ〜、オーランドを出てまだ直ぐだよ。」
「何をチンタラやっている!さっさと進め!遅いぞ!」




