85話 乾杯〜! 挿絵あり
「イベント終了おつかれぃ〜!!」
「お疲れ様です!!疲れた〜・・・。頭が・・・。今日はよく眠れそうです・・・。」
「ワシはもうやらんぞ!3日間張り付いて連続PVPとユニット管理なんてもうやらんぞ!」
「お疲れ様〜、結局何位だったの?秋ドンさん。」
「フッフッフッ・・・。」
「もったいぶるな稀人秋ドン。」
「王はんいけずやわぁ〜。と、言うても発表せん分けにはならん。順位は・・・、1753位や!上位入賞やで!少人数でボロ勝ちや!!」
「「「おぉ〜。」」」
幽霊になって最後を迎え、気になる順位は2000位以内。参加賞貰いの所を除けば稼働領地は概ね3万は超える。その領地数からプレーヤー数を考えれば多分10万人はアクティブユーザーだし、参加してないアクティブユーザーも考えるとVRMMOとしては30万人以上はプレーしてるかな。課金してもヨシ!国からの補助金貰ってるから潰れづらくてヨシ!なんにしてもかなりの高順位!
一旦LIVE配信は終了のお知らせを流し、後日順位は発表する形として今は参戦した仲間達との報告会。目標も達成出来たし明日ログイン時には入賞報酬も届くのでウハウハしながらオーランドの食事処で秋ドンさん持ちで宴会をしている。
こう言う時VRMMOだと混んでるか別の店と言う話にならなくて済むのよねぇ。普通に考えたらオリンピック終わって観戦した人が街に溢れて飯屋探してる構図だし。
「でも次はないで?おいさん全部資源もユニットも吐き出した・・・。」
「それ言ったら私もですよ。」
「寧ろ最後のゴーレム突撃で全部消し飛んだんじゃ・・・。」
「しゃあないやん。ラスト1分までプレーヤーは参加してるなら戦うんやで?足の遅いゴーレム突っ込ませるだけ突っ込まして大爆発とか・・・、素敵やん?」
そんな事を言いつつ運ばれて来た料理を食べる。データだけど味の再現はバッチリで肉が旨い!VRMMO様々でよく分からない料理も美味しく食べられるけど、これってどこの料理だろう?
「そんな事しとったんか・・・、ワシは別府とか言うプレーヤーと最後は殴り合っとったぞ?ツキさんのファンじゃろ?」
「あ〜・・・、ファンでフレ予約者でPVP相手?忙しくて見れてない所もあるかもだけど、夕餉とカリーとバルサミコスの間で騒ぎ起こしてる時に遊びに来た人。強かった?」
「どうじゃろう?弱くはない。ただ本来の獲物は分からん。」
「何にしても戦えば分かるか。」
「その人マッチョ?」
「アバターとしては細マッチョ?」
「範囲外だから私はスルーかな。篝火さんも秋ドンさんもアバターに筋肉纏わせてマッチョになろうね?お兄ちゃんは既に樽型マッチョだし、ツキさんは女の子だからそのままステイ!」
「嫌やわ!ウチはこのイロモノ感がええの。」
「れ、連動器具使ってるからリアルなら!そう言えば報酬何選びます?雀切りないのは残念ですけど、僕は銃選ぼうかと思います。」
「ほう?銃ならウチに聞きぃや。」
待ち遠しい報酬、それは金塊9千個に武器系統指定宝箱×5!後は戦地を駆け抜けた者の称号に肥料やら苗やら種。1位は騒乱を平定した者だったかな?なんにしても33連分の有料ガチャと選んだ系統の上位武器が手に入るならかなり嬉しい。1000番を切れば武器指定箱でコチラは個数が減る代わりに欲しい武器が確定で貰える。
何にしても貯蓄してもいいし直ぐに使ってしまってもいいしと悪いものではない。あえて文句言うユーザーがいるとすれば無料ガチャの最高レアリティの武器が含まれないとか?大麻は無料ガチャ産だしナインテールはイベント報酬だし、仮に使うなら御札狙うかなぁ〜。
「それじゃあ私はこの辺で。」
「ツキさんもう行くん?酔えんけどじゃんじゃん飲んでええんやで?」
「流石に病人なんで寝ますよ。後は楽しんで下さい。」
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「あ゛ぁぁ〜、やられた・・・。あそこで仲間いるとかセコいだろ!」
「落ち着くのでアール。俺は最後まで空にいた。グレイさんは最後まで領地に立っていた。そしてお互い死ななかった。それが結果で領地が機能停止が事実でアール。」
他の民にはカリスマ性を失うから愚痴る姿を見せたくないと今はグレイと2人で飲んでいる。そんなグレイがゴブレット『カンッ』とテーブルに叩き置く。適当な串焼きを頼み脳波でその味を感じるが中々・・・、塩っぱい。順位だけ見れば500位圏内と他の領地から見れば悪くないな。そう、悪くないがバルサミコス帝国としては過去最低で冷水を浴びせられた感じだな。
「はぁ〜・・・、よし。分析するか。スタートはどこだ?やはり空戦で一騎打ち許可した所か?」
「誤りではない。しかし、正解とも言えないのでアール。配信を徹底的に使われて我々は面子を取った。それが1番大きな所だろう。最後のツキさんとの戦い、あそこで他の指揮官を無理矢理にでも割り振れば・・・。」
「流石にそれは出来ないよ・・・。あそこツキさんに入念に殺すって言っちゃったし視聴者も3200人を超えていた。それはもう、今回の領地防衛戦の結末がそこにあると踏んだプレーヤー達の視線だ。無様は晒せないし何より本人が勝ちに来ると思っていた。」
「裏を突かれたな・・・。いや、今回の戦は全て裏を突かれたのでアール。領地全面を激戦区にされたのも、その隙に裏に回られてカリーと夕餉を煽って第2の激戦区を作られたのも・・・。確実にカリーを仕留めていれば裏の乱戦は多少マシだったか?」
グビリとビールっぽいデータを飲む。旨い・・・、本来なら勝利の美酒を憂いなく飲んでいるはずだが、今日のビールは苦い。まるで炭酸が飛んだ後の鉄錆の様な味がする。脳波か・・・、不味いものは不味く感情で作れるならわけはない。
「それも厳し。戦闘ログを見ればカリーとやり合った後に直ぐにプレーヤー達は雪崩混んできた。そんな中で1人のプレーヤーを探すのはナンセンスだし、何より外に出していた指揮官達はカリーとの戦いで疲弊している。背後に出兵させる案は?」
「無理でアール。あの時点で出兵させれば騒がれ様がいまいが夕餉が動く。そうなれば大規模領地を相手にしつつカリーに気を配り更には全面の激戦区を抑える必要がアール。流石にそれでは民も混乱する。やはり発見次第俺がツキさんを撃つのは?」
「駄目だ。散らばったプレーヤー達はどこに行くか分からない。面制圧を考えるなら1点に集中させてバリスタや大砲ですり潰す。流石に大規模一騎打ちコールなんて早々起きない。」
ゴブレットを置きグレイさんはそう答える。事実として余程のカリスマかさもなくば状況を作らなければ大規模な声など上がらない。なにせ乱戦しているのだ。罵声と怒号は聞こえてもそれは眼の前の相手に伝えるものであって、何が起きているかいち早く気づかなければ・・・、俺が飛び立ったと言う情報を得ていなければ上げても意味がない。しかし・・・。
「だがそれは起きてしまった。他ならぬツキさんが声を上げ、他の誰かも声を上げた。1人で叫ぶだけなら蛮勇だが人数が揃えばそれは正論。故に多数の侵入を許した。」
「う〜む・・・、アールさん。仮に食い止めるならどう思う?」
「仮になら俺達も配信者を仲間に引き入れるのでアール。但し、カンストプレーヤークラスの強者でなければ乱戦ですり潰され、更に言えば判断に迷えばそれだけで動きが止まる。」
「その物件多分ないよ!?」
「ないから考えるのでアール。と、言うかグレイはある程度思い浮かんでいるのではないか?」
「・・・、最善は見つけ次第潰す。次善は視聴者として誤情報を流す。その後を考えるなら・・・。」
「考えるなら?」
「決まってるだろう?コチラは面子を捨てて勝ちに行く。」
ニヤリとグレイさんが笑う。次にツキさんがいつ領地防衛戦に真面目に参戦するかは分からない。今回と同じ盤面が揃えられるかも分からない。蓋を開ければやられたのは局地的な戦術と心理戦で、それにまんまと俺達は乗せられた。だからこそ俺達は挫けない。帝国と銘打ったクランはその程度で潰れる程ヤワではない。
「来月は真面目に参戦するんかね?しないならアールさんのフレでしょ?傭兵参戦とかどうよ?」
「さぁ?暇で楽しそうなら来るのではないか?そもそもツキさんは仕事でフル参戦出来ないからほぼ参加賞狙い故、今回何故真面目に参戦してるかも配信者やってるかも分からないのでアール。」
「本当に狐じゃん・・・、一時の夢の様に現れて首を取ったら消えて行く。・・・、えっ?勝ち逃げされるの!?」
「さぁ?真面目な人ではアールがエンジョイ勢故分からないのでアール。」
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「ふぃ〜。疲れた・・・。さっさと寝よう?大先生まだいたの?」
「あん?いたも何も動けねーの。」
ログアウトして顔でも洗おうかと思って見回したら座敷童子大先生が鎮座していた。確かに三枝先生が置いて言ったんだけど、このまま泊まるのかな?何にしてもお供えしたお菓子は減ってないしつけていたテレビは消灯時間で消えてるし薄暗い中で喋る人形は中々に不気味。
「動けない・・・、普段どうしてるんですか?」
「普段は少し動ける。それこそ桃貰ったろ?」
「確かに。えっ?今はなんで?」
「多分波長が崩れてんだよ。俺は座敷童子で妖怪。そもそも生身なんてあったかどうかも忘れるくらい生きてる。うん、多分生きてた?何にしてもお前が境界跨いで切った張っただのぶっ殺されるだのしてるのはなんとなく分かる。」
「不思議だねぇ。だってゲームだよ?」
「逆だ逆。その世界が電気と脳波?だからなんとなく分かる。お前に桃貰ったろ?あれがまだこびりついてんだよ。」
「丸洗いすれば良くなると?」
「幽霊とか姿のない妖怪ってのは概ね意志のある電気精神体らしいんだよ。華澄とか木本が言ってたけどな。だからこっちに来るとまずいし、デカいのが来れば停電とかも起こる。ナノマシンだっけ?あれってお前の体の一部なんだろ?そんなもん食えば嫌でもお前が入り込む。」
「えっと・・・、誰かに食べさせるとまずい?」
「いや、既にまずい。よく聞けよ?お前はそのナノマシンとか言うもんを操れる。それがお前の法則でお前だけが持った法則だ。よく考えて行動しろよ?」
「う〜ん・・・、考える前に何が出来るんですが大先生!」
「それを考えろよボケ!なに荒御魂みたいなこと言ってやがる!」
「消灯時間過ぎたらかはお静かにね〜。」
「クソっ!これだから狐は・・・。そう言えば誰かから狐って言われなかったか?」
狐?う〜ん、多分相当言われてると思う。と、言うかこの姿を見ればそうでなくともゲームしてれば狐娘とよく言われる。なにせ狐の亜人としてキャラメイクしてるしねぇ。だからゲームデータ読み込んでズタボロの体治療してもらったら狐娘が出来上がったわけで・・・。
「多分相当言われてる。今回かなりトリッキーなオーダー貰って戦いまくってたし。」
「そうかぁ〜。まっ!俺には関係ねぇ話だからいいわ。じゃあ寝る。」
「?」
大先生は寝るらしいので俺も顔洗って歯を磨いて就寝。相変わらずうつ伏せで寝てるけど流石に慣れたと言うか、尻尾が覆いかぶさって温い。ただ人形ボディの大先生は目を開けたままなので寝ているのかの判断には迷う。
「・・・(そぉ〜・・・)」
「なにしてやがる?」
「横にした方が楽なのかなと。」
「別に・・・。いや、横にしてくれ。その方がお互い気にしなくて済む。」
大先生を横にして考えるけど・・・、桃ってヤバい?でも既にヤバいってなんだろうか?病室で色々と検査されてるけど何がどこまで進んでるのやら。なんにしても医者じゃない俺には分からない事が多過ぎるし、下手に考えてもどうなるか分からない。でもまぁ、今日くらいはいい夢見ていいかな?せっかく目標達成しね・・・。
「おはようございますトリックスターツキちゃん。」
「おはようございます敷田さん。なんか変身する魔法少女っぽい響きですね、それ。」
「ならツキは天下の周り者とかがいいですか?」
「いいですかも何もなんなんです?藪から棒に。」
「いや〜、LIVE配信するって急に言われてゲリラって形で告知して、合間合間に覗いてたんですけど最終的には3600人くらい視聴者して登録者も結構増えたんですよ。それで見てる側が勝手に言ってる名前とかです。」
「普通にツキとか狐巫女でいいですよ。下手に名乗ると尾ひれはヒレが付きますからねぇ。」
歯を磨いて病室にいたら三枝先生ではなく敷田さんが来た。多分今日は三枝先生が休みなのかな?LIVE配信の話をしつつ敷田さんが大先生を持ち上げてるし。
話を聞けば長丁場だったLIVE配信は戦局が動く度に視聴者が増えたり減ったりしながら最後まで視聴者ゼロになる事なく完走したらしい。まぁ、コメントに反応したりしてたからそれは知ってるし、現地と言うかゲーム内ではファンも駆け付けたしなぁ。
その人数が多いか少ないかを考えると、同時接続視聴者数が3600人と言うのはネット調べだと上位配信者レベルになるらしい。まぁ、簡単に言えばバズったと言う形だろうか?特に俺が企画して何かをしたわけではなく、VRMMOと言う土台があってからなのでこの先も見られるかは分からない。
実際領地防衛戦が終われば次のイベント告知までにはそこそこ日もあるし、マッタリと日常配信とかでもいいなぁ〜。流石に張り付きでゲームするのは結構疲れたし。
「この機を狙ってなにかします?顔出し駄弁り配信とか、高難易度ミッション攻略とか。」
「駄弁りはいいとしても高難易度ミッションって1人じゃ無理なんですよねぇ、ゲーム的に。なにをするかは別としてそこそこ認知度って上がったと考えても?」
「う〜ん・・・、それは微妙ですね。LIVE配信で必要な情報があるから見てるって層もいるでしょうし、駄弁りコメントで年齢やらも飛び出しましたけど、本人基準アバターで本人が姿だししてるってのはそこまで伝わってないと思いますよ?」
「やっぱりですか・・・。まぁ、急ぐ事もないからぼちぼちとやっていきますよ。それで、今日は何します?」
「三枝先生から言われたのは桃を貰ってくれって言われたんですけど、今出せます?」
みんなが桃と言うけど領地防衛戦が終わってから栽培してないのよね。仮にインベントリに入ってないから出せないと言うなら今も出せない。出せないけど他の物って出せるのかも気になりはする。でも、下手な事はしないと決めたから気軽に行動はしない。
「多分今も出せないですよ。必要なら栽培しますけど早急に必要ですか?」
「そうですね・・・、取り敢えずトラブルオンラインって色々な野菜とか武器とか肥料がありましたよね?一通り出せるか調べたいらしいので栽培してください。頑張れ!農家のマリちゃん。」




