84話 終結
「そこを退け!!」
「秋ドンとエンジョイプレーヤーズはバルサミコス攻めに向かう者を今は追わん!そして背後からも撃たん!その代わり、我々に挑むなら・・・、PTとなって死ね!」
「ゴーレム!前へ!来るなら来い!」
「えっ!あっ!はい・・・。」
(なんでゴーレム展開して睨んでんだよ!)
(攻めろよあそこの領地もプレーヤーも・・・。)
(ここ硬いよな・・・。)
(あ〜、俺バルサミコス目指すわ。この領地に挑んでも指揮官とゴーレムにすり潰されるし・・・。)
ヒソヒソと私達の領地付近で話し込むプレーヤー達がいる。バルサミコス真横に領地転換した時点でプレーヤーの波はうねりとなりバルサミコスを目指す流れとなった。しかし、はぐれ者は必ずいる。だからこそ領地周辺を残りのゴーレムと飛行ユニットで防衛する。
秋ドンさんがバリスタやらを撃ち出せば領地の資源はすぐに枯渇するだろうし。盟主自らのバリスタやらの発射指示は、指揮官がいなければ全方位になるしな。近場で篝火と威圧しながら戦況を見ているが正面のサクラが戻れば私もバルサミコスに突撃しよう。
後を任せる3人にはまだ仕事も残っているから、フリーとして動けるのは私くらいだ。流石にツキさんが内部撹乱を行いプレーヤーが取り付きやすくなったとは言え、大規模領地の盟主とだけあってまだ外はコントロールを維持している様に見える。
最悪の一手はバルサミコスの領地転換による逃亡。その際侵入したプレーヤー諸共転換されて、じっくりと狐狩りをすると言う手もある。しかし、それの実現性は低い。空き地に飛ぶと言うならここからそこまで離れられはしないだろう。背後は私達より背後は抑えまだ領地は残り入り込む隙間は少ない。
「フロムさん・・・、かなり流れを固定出来ましたね。」
「篝火と秋ドンさんの采配じゃろ。ワシは戦うだけの老兵じゃて。」
『空から見るにカリーも夕餉も飛行ユニットを出しているが、今ひとつ制空権を取れずにいる。我も向かった方が?今なら横から殴りつけられるだろう。』
『あかんで王はん。あそこには修羅化したアールさんがおるはずや。ツキさん仕留められんで鬱憤溜まっとるから、今乗り込んだらいい的や。ウチ等は何食わん顔でこっち来るなって威嚇し取ればええ。』
『ですね。バルサミコスが機能停止したらそこが攻め時。どこもかしこも疲弊して機能停止で糸が切れた瞬間に僕達が攻める。だからこれだけ管理してユニットも残してますし。』
『ただツキさんが機能停止出来るかだよねぇ〜。実際行けそう?』
『分からん。カンストプレーヤーとて死ぬ時は死ぬ。しゃが、その確率を下げる事は出来る。だからこそワシ達はここで踏ん張って威圧してプレーヤーをバルサミコスに送り込んどる。』
『おっ!ツキさん攻めるらしいで?配信に暗号でた。』
『ならワシも侵入を試みかの。中枢へのルートは・・・。』
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>> ツキちゃん何してんの?真っ暗よ?
>> あえて配信の映像切ってるな、おしゃべりタイム?
たまに音声も飛ぶけどさ
>> でも最後は砲手潰ししてたから場所割れてんじゃない?
>> さぁ?領地って普段招待される以外中身見れないし
>> あれって酷よなぁ〜。
小中規模ならそこまで気にしないけど、大規模領地だと
傭兵やらスパイまで気にしないといけないんだろ?
>> そうそう。フレ集めても厳しいなら勝ちたい人集めて
領地形成する事もあるし、そこにスパイいると地獄よ?
ツキ>> いや、長いから夜食を少々・・・
>> 夜食なに?
ツキ>> プロテインバーと生姜焼き丼×2
>> ガッツリやん!?
ツキ>> 育ち盛りなんですぅ!
>> 育ち盛り(30歳)
>>老女〜、胃もたれすんぞ〜w
ツキ>> 脳を使うと腹減るんよ!
コメント返信しつつこれから突撃すると連絡。いや〜、流石に突入します!とか宣言してからの突入とか、配信しながら突入したらボコボコにされる。だから砲手潰ししたら適当に逃げ回りつつ合間合間で配信切って居場所も撹乱した。多分、盟主のグレイさんはアールさんから話を聞いたなら配信見てるんだよなぁ〜。
既に中枢に向かったプレーヤーもいる。でも機能が停止していない以上、この領地はまだ稼働している。最後の最後は突入して盟主も指揮官も無視してシンボル破壊しないといけないけど、それが1番のネックで難しいから莫大なPTが手に入る。
流石にここで一騎打ちはない。あれは領地外から叫ぶから発生するのであって、領地内なら通常戦闘しかない。だから潜り込んで落とすのもスニーキングするのもダメ。だからこそ内部構造を探りつつ歩き回って、ルートを見定めつつ巡回していた指揮官を他の侵入して来たプレーヤーに押し付けていた。
でも流石に潮時なのよねぇ。夜食の話をしだしたら突入合図。最初に侵入した場所に戻り侵入して来たプレーヤー達に『中枢までのルート知ってるから一緒に行こうぜ!突入までの共闘だけどどう?』と言って人数集めたけど、血の気が多いのかルートだけ教えろって人もいたし、もう待てないと言う声も配信で拾われないくらいの声量で上がっている。と、言うか別府さんしぶといな。先に一騎打ちしてたから侵入時間はかなり長いはずだけど・・・。
「さて遊びに行きますか!」
「・・・(コクリ)」
俺を先頭に領地内を走る!時折聞こえる『カチッ』と言う罠音を気づいたら取り敢えず立ち止まるか、ジャンプして対処するけど、いやらしい事に2重に仕掛けてる所とかもある。ただ、罠の密度が上がれば上がるほど中枢に近づいている証拠で、後ろの侵入したプレーヤー達も大人しい。ただそれが崩れる瞬間もあるわけで・・・。
『カチッ』
「っつ!!ヒール!ヒール!罠貰った!この先が中枢!ここまで来たなら先行って!行くなって言っても止まらないし!!」
「・・・、本当にダメージ貰ってるな・・・。」
「時間もないから俺は行くぞ!」
「早いもの勝ちだ!」
「この人数ならどうにかなる!」
「ウチの領地からかなり一騎打ちが発生したって連絡来た!」
「退け!ウチが機能停止ボーナス貰う!」
やんややんやと話しながら走り去るプレーヤー達を見て最後尾ゲット。確かに10人くらいのプレーヤーがいるけど、中枢だと考えるとプレーヤーを集めてるよねぇ・・・。砲手は減らせないにしても巡回してた指揮官にもここに来るまで会わなかったし、一騎打ちが連続発生しているなら、指揮官を巡回に回してバラけさせるよりも罠で対処しつつ、中枢籠城作戦の方が理にかなっている。
「それで別府さんはなんで残ったの?」
「そりゃぁバカじゃないから?あのプレーヤー達もバカじゃない。それだけ腕に自信があって勝てると踏んだから突入に向かった。でも、俺は臆病なくらいがちょうどいいと思う。それに、ファンがいないとツキちゃん寂しいべ?」
「あら?ご親切にどうも〜。ちょっと離れて幸運大麻を振っておきましょう。近寄ったらダメージでますからね〜、フリフリと。それで?共闘かここでPVPかですけどどうします?」
「う〜ん・・・、共闘して機能停止してPVP?抜け駆けありありで。どう?」
「乗った!乱戦中に首はねても事故ですからね?」
「おう!乱戦中に盾にしても事故だかんな?」
>> 麗しの戦場友情?
>> ツキちゃんファンって頭のネジ外れてんの?
推しを盾にするとか
>> 盾にされたくらいで死ぬか?
>> あ〜、あえてダメージ貰って逃げそう
>> 背中合わせで語らいとか好物なんだが?
>> HP計算して死なないなら自分の腹ごと相手を刺すだろ?
>> しない=判断が遅い!
>> PVPバーサーカーがここにも・・・
>> そんな事よりもう中枢じゃね?
最後尾をゲットして別府さんと歩く。既に配信は切らずに垂れ流してるから小型マップを見れば眼の前が中枢だとすぐに分かる。そう、いよいよ突入である。閉じたドアの中は色々と叫びが聞こえる辺り、先に入ったプレーヤーはまだ元気に暴れているようだ。
「スリーカウントで入りましょう。1・・・。」
隠して出した指は4つ。カウントをするごとに折り曲げていき1になったら扉を蹴破る!やっぱり両サイドに指揮官配置してたか!空を切るプレーヤーの剣!その隙に首を狙って差し込む大麻!背後でも同じ様に動いただろう別府っさんは気にせず周囲と閉まらない扉を見る。
「あれか!」
戦う侵入者と指揮官、その奥にあるバルサミコス帝国と書かれた旗。あれがこの領地のシンボルであり打ち壊すべき物!あれさえ壊せれば機能停止に追い込める!あれさえ壊してしまえれば大量のPTがゲット出来る!
「よく来たねツキさんと・・・、誰?」
「別府八湯。ちょっと推しに誘われて共闘して来た。」
「潰せ!侵入者は排除しろ!」
「残りの指揮官はツーマンセル!潰しに行くぞ!相手は手練れだ!」
「うるせぇタコ!ひこっこんでろ!今いいところなんだよ!俺が遊んでやる!」
侵入に気づいた指揮官達がコチラにも割り振られてくるけど、それを別府さんが掻っ攫う。この人薄々強いとは思ってたけど、かなり強い。もしかしてカンスト組かなぁ・・・。やっばPVPしたら瞬殺されるかも・・・。と、それは後々!
見下ろすように立つ盟主グレイさん。なぜ盟主は高い所が好きなのか?実は好きじゃなくて俯瞰して見たいから。ええ、ここはそんなに広くはない。広くはないけど乱戦出来るだけの広さはある。なら、高い所から威圧して見下ろして流さないと見せ付けた方が多分お得だから。
「突撃リポートしてたら・・・、見てくれ~!バルサミコス帝国の中枢だぁ!迷ってたらてとんでもないものを見つけてしまった!どうしましょう!?見逃してくれる?か弱い狐なので乱戦終わるまで隠れときますから。」
「そんなわきゃない。ここまでしたんだから入念に殺すよ?」
>> ド正論w
>> 見逃したら旗壊すだろ?ツキちゃんw
>> この期に及んで及んで楽しようとしない!
>> いや、このセリフってアレのオマージュ?
>> オマージュならなんか仕込んでるかも
>> ここまで来たら本人が勝ちに行くだろ?
「あ〜、やっぱり?はい。視聴者さん、盟主に殺す宣言されたので乱入なしのガチバトルが始まるようですよっと!」
「相変わらず小賢しい!私は盟主で勝つだけの理由があるんだよ!速やかに侵入者を排除してコチラに注力!それまで抑える!」
グレイさんの剣と大麻が激突!こんな所で銃を取り出す奴はいない。メインとして確かに銃は使いやすいでも、流れ弾がみんな怖いんだよねぇ。そりゃあ5回死亡のPK対策なんてのも出来るけど、射撃音で周囲の音は聞こえづらいし、指揮だしながらMP管理とか泣けてくる。
オーソドックスな剣と盾装備品のグレイさん。ただ、その剣も盾も課金装備でかなりの攻撃力を備えている。無闇矢鱈と斬りかかればジャストガードでダメージ貰って、下手すればノックバックで壁はめされるかも。
「狐火!更に狐火!もう一丁おまけに狐火!」
周囲の被害?美味しいPTだろ?別府さんには既に寝首を掻く宣言はしてるし、どのプレーヤーも手を抜かずに戦いっている。そこで盟主から指名受けたならやるしかない!
「視界を奪って切り込むつもりかい?いや、それでも私はここから動かない!マジックガード!アストラルパーツ!シールドバッシュ!演武、回転斬り!」
殺到する狐火はシールドバッシュと剣で切り裂かれ、更に迫る狐火もガンガン撃ち落とされる。それでいい、アチラが止まってコチラが動く構図に持ち込めればまだ勝機はある!
「飛翔斬撃6連!ちっ!」
「ぐぁっ!」
「この体は早いんですよ!」
そう。物理と魔法火力が元から高い亜人族で速度を求めたこの体はすばしっこく捉えにくい。既にここにいるのは全員敵で誰が誰を盾にしても巻き添えにされても文句は言えない。指揮官と侵入者の間を縫う様にして盾代わりになってもらい、更に魔法で攻める!
「サンダーバレット!」
「DPS理論最高とは言え豆鉄砲で私が倒れると思うかい?召喚はルール上使えないとしても、私がここにいて時間さえ過ぎれば勝ちだ!何を積もうとどんな策を練ろうと、もう終わりは見えているよ!」
チラリと見る時計は既に23時15分!
確かに後15分で終わる!だが焦るな!まだ焦るな!ここで焦れば何も残らない。それこそ負けたと言う事実さえ薄くなる!盟主を旗から引っ剥がせ!でもそれはまだ・・・!
『来たぞ!』
「狐火!」
「どうした?攻めあぐねているぞカンストプレーヤーツキ!その程度で勝てると踏んでここまで来たのか!?」
「最初に言ったでしょう!迷い込んで来たって!だから・・・、一緒に死んでくれる?ほら!こんなに怖がって尻尾もパンパンですよ!マッスルアップ!クロックアップ!打刀:影打ち!」
「焦れたか!?ならば死ね!五月雨斬り!」
真正面からの最高速度による影打ち、抜刀の構えのまま突進し大麻の柄で腹を突く打撃技。グレイさんの高速連続斬りにより広げた尻尾が切れ飛びHPもどんどん削られていく。でもそれでいい。勝つのは個人じゃなくて領地。だから・・・、技を出しているならほんの少しでも・・・、隙はある・・・、よね?
「マッスルアップ!粉砕無骨!HP火力転換!天地轟雷いぃぃ!!」
「くっ!計ったな!」
防御無視、筋力アップ、そして振り上げからの盛大な振り下ろし。フロムさんは振り上げと共に飛び、目隠し兼盾になった俺と攻撃しているグレイさんを飛び越え一気に旗にハンマーを振り下ろす。あの人ドワーフでチビだけど、樽型体型にしてHPだけは相当高いんだぜ!
ポリゴンになり消えていくさなか、最後に見えたのはフロムさんの一撃によりへし折れた旗。機能停止はここに完了した。残り時間で急変した順位もギリギリ持ちこたえられるだけの時間にした。ならこれで・・・。
>> ・・・、どうなった?
>> ツキちゃん死んでもうたん?
>> そりゃぁポリゴンなったし、死んで今幽霊だろ?
>> あれって焦って無謀突撃?
>> 最後美味しい所持ってたの誰だよ
ツキ>> ウチの領地民!イェーイ!膾斬りにされて死んだぜ!
>> あ〜、多方面に喧嘩売った?
ツキ>> えっ?そんな怖い事してる人が・・・?
>> 無自覚装うツキちゃんw
>> まぁ、戦場のトラブルだしなぁ
>> チートも違反もしてないしなぁ
>> 最後のカリオストロ?
ツキ>> ルパンは刺される運命なのさ!




