8話 感謝 挿絵あり
ストックラスト!
次から文章量が多分落ちます
霊峰ココットル・・・。山頂が雲に覆われた雄大な山々で山頂までに10個のポータルが設置され、それぞれに何合目と記載されている。あと、連なった山脈が鶏のトサカに見える。登り方次第では激ムズにもそこそこの難易度にもなるけど、ここの最大の特徴は定期的に発生する落石と飛行系モンスターの多さ。フリークライミングの様に登るルートでは片手使用禁止制限が発生して銃か魔法を半強制的に使わされつつ鳥を撃ち落としたり、別のルートではランダムクレバスを探りながら登ったりと、装備や種族やルート選びで難易度がガラリと変わる。
普段なら魔法で一掃するか、さもなくば両手持ち重火器を使う。亜人族は攻撃押せ押せタイプだけど銃の命中率と言うか、不器用なので結構弾がハズレるし、なら近寄って撃てばいいじゃないと思うかもしれないが、めり込むくらいのゼロ距離でも今度は銃が偶にジャムる。
悪意ある運営はモンスターの額に銃を押し付けてるのに『カチン』と言う音と共に『Miss fire』と表示が浮かべば、カッコつけてた亜人は笑い者の道化に・・・。このゲームねぇ!弾数制限とかないんですよ!ジャムとか悪意だろ!
そんな銃不適合な亜人にとって重火器だけはパワー依存で撃てるので安心して弾が吐き出せる。まぁ、乱射出来ないのが玉に瑕だけど、1発が重い感じのゴツい装備なので好きな人は結構いる。
「普段は大型グレネードか重機関銃使うけど、リハビリだから双剣で行くかな。」
雀切の様な対空モンスター装備もあるけど、それじゃあリハビリにはならない。インベントリから店で買える攻撃力の低いベノムエッジを取り出して両手に持ち、チャイナドレス風衣装でスピード重視に足は・・・、1本鉄下駄でいいか。頭に黄色安全ヘルメットを付けていざ鳥狩りへ!
「ジャンプからの跳び蹴り!からの回転スラッシュからの跳び蹴り!って、酔う・・・。」
トラブルオンラインが格ゲーと言われるが由縁がコレ。割とジャンプしたり落下していたら不利な体勢判定されるゲームが多い中、トラブルオンラインは何を思ったか三半規管を鍛える方向に舵を切った。俯瞰視点ならそこまでないけど一人称視点だとジャンプしてからの横移動飛び蹴りまではいい。しかし、回転スラッシュで高速スピンして目が回り、けど襲ってくるファイヤバードやらワイバーンは容赦なくブレスやら羽根を撃ってくるから、飛び蹴りで更に他のモンスターを目指して蹴り込む。
「うっぷ。フレイバーテキストがバカにならねぇ・・・。なんだよ目指せ秒間200回転とかってモーター基準?ミニ四駆じゃないのよ?それに俯瞰視点じゃないから手元と足元しか見えないから、どんな体勢かの把握もやる気も・・・。」
俯瞰視点なら目の前でアバターが3回転トウループしようが高速スピンしようが、アバターが回るのを見るだけなので関係ないけど、一人称のFPS視点だと一緒にぐるぐると回される。えっ?フロムさんとかコレに慣れてるの?脳波判定だからマイルドだろうとハードだろうと目は回るんだけど・・・。
「取り敢えず飛び蹴りで仕留めていくか・・・。重機関銃とかグレネードがいいけど身体を使う為に来たしな。」
ステータスゴリ押しが出来るのは多分2合目か3合目まで。そっから以降は装備変えたりギミック理解しないと無理!寧ろプレーヤースキルで攻略する事を念頭に置くと如何に運営の悪意を読み解くかによる。なにせ新作じゃなから小さな変更アップデートはあるものの変な縛りさえしなければモンスターの弱点も分かる。
けどリハビリするとなるとプレーヤースキルに括る所が出て来る。なにせ苦手なFPS視点でカンストプレーヤー、小銭稼ぎになるかも知れないし動画も撮影しとくか。後から見返して変な動きしてればそれが身体との乖離した部分と分かりやすいし、客観的に自分の動きを見るのはリハビリでも推奨されている。現実基準で身体は上手く動かせないし、脳に覚えさせるにはうってつけだろう。
ファイヤバードやらアクアバードを蹴り落としつつ、ダブルスタンプエッジで急降下して背中やらを刺してアクティブモンスターを排除、ナインテールのオートジャストガードが発動して尻尾が3本程千切れ飛んだけど、高速再生のおかげでちょっとずっと生えてる気がする。と言うか、尻の辺りがムズムズする気がする。今までそんな事ってあったっけ?
一人称視点はより脳波操作をダイレクトに感じるとは聞くけど、見えない部分を保管する為に脳に誤認やら立体錯覚させるプログラムを走らせていると聞く。まぁ、昔の遊ぶだけのゲームならいくら金があっても制作費が足りないのだろうけど、医学とリハビリにリンクしたおかげで正式に認められれば補助金も出るとか。
「確かシステム画面から・・・、あったあった。REC機能とか初めて使うけどコレを押すだけで録画出来るんだったかな?取り敢えずドーモ=視聴サン。オーランドでたまに見かけたり捕獲される巫女狐のツキです。配信するかは分かりませんが、とある理由でリハビリする事になりました。カンストプレーヤーですが、リハビリの為に慣れないFPS視点を使うので超絶プレーを期待する人はスルーして下さい、と。」
録画なのでコメントも付かないし挨拶くらいでいいだろう。実際エンジョイ勢力程度の実力だし、配信やらがお手軽に出来る分、溢れかえった動画の中でわざわざ俺の動画を選ぶ奇特な人も少ないだろうし、弄っているとしても豊富な無料パーツの範囲内で後は目の大きさやら声を変えたくらい。
「さて、鳥どもを毟ってやんよ!と、その前に双剣は酔うからナックに装備変更っと。」
店で変える籠手を改造して魔法使える様にするのはマスト!供物族ならマシンガン内蔵したり、神族なら弓やらを内蔵するんだろうけど残念な事にどちらも亜人は外す・・・。ゴブリンの弓はガードか緊急回避しないとボコボコ当たるのに!
まぁ、ゴブリンの弓が外れまくるとゲームバランス的に存在価値がなくなるから仕方ないか。腐ってもモンスターとして攻撃してくるんだし。
「おさらいと言うほどでもないですけど、飛行型モンスターは最初に対空技かジャンプしないとダメージ判定が出ませーん。石投げて中級のグリフォンを一匹釣ってからの飛び蹴り!そして数点掌!更に飛び蹴りからのフットスタンプ!」
そこそこ大きいグリフォンを一匹引っ張って来て視認マーキングしてから飛び蹴りで空へ。ある程度の追尾補正のおかげで蹴りがモンスターに当たり、そのままランダムに殴る乱打を打ち込み、怯んだ所に飛び蹴りを入れて頭上を取ってフットスタンプで地面に落とす。
飛行系モンスターは空にいると速度やら耐久力に補正がかかる分、地面に撃ち落とせればその補正が軽減される。でもその分撃ち落とすのは難しく、面倒と感じる人は某髭のおっさんの様に背中を取ってストンピングし続ける。
空中に足場はないけどモンスターを踏む=足場判定なので格闘戦を好む人も安心して飛行系モンスターと対峙出来るんだけど、主流的には銃火器やら魔法やらかな?MP管理がそこまで厳しくないとは言え、銃弾1発=1MPなに対してジャンプは別として飛び蹴りやらはMPをそこそこ消費する。
上手い人は延々と空中戦出来るけど、ストンピングやらを外すと急降下で地面に落ちダメージは負わないもののモンスターにどんどん追撃されるし、フィールド次第ではそのまま穴に落ちてリスポーンなんて事も・・・。
「さて、叩き落した鳥の羽を本気で毟る!皮膜じゃないから羽根採取祭りだ!」
指をワキワキさせながら前転緊急回避を挟みつつ鳥に近近付いて翼の中へ手を突っ込み羽根を引っこ抜く。採取が攻撃ではないと、いつから錯覚していた?部位破壊可能なこのゲームでは毟れる物は採取するのが1番手っ取り早い部位破壊方法だったりもする。けど、デカい奴ほど効果が薄くなるんだよね・・・。ダメージも採取はあくまで毟っているだけなので1だし、尻尾なんかを採取するなら切り取る必要がある。
ウインドウに羽根×23やらと表示されて、モンスターの飛行力を奪いつつ補正を消しつつ途中で羽根を広げて旋回やらをしてきたので、側転緊急回避を挟みつつ飛び蹴りからのフットスタンプで地上戦へと引きずり込む。割と指のリハビリにはなったかな?部位破壊まで行かなかったので時間経過で羽ばたける様になるけど、流石にもう空へは舞い上がれないだろう。
「そろそろトドメと行こうか!巫女なので覚醒大麻!からのファイヤパレット、狐火、ドーンファイヤ、イフリートハンマー、ファイヤパレット!」
チャイナドレスのままだけど覚醒大麻は合法!炎に弱いグリフォンにドンドコ火属性魔法を叩き込みポリゴンへ。身体を動かすと言う面では・・・、身体の動かし方を脳に覚えさせると言う意味では格闘戦はいいし、トドメを魔法で刺せば流石にこの辺りで負ける事もないかな?
何気に武器仕様ランキングで上位に入るのはただの鉄剣だったりヴェノムエッジだったりする。それはやり込みプレーヤーやらトッププレーヤーがガンガン使うからで、なんでそんなモノを使うかと言えば練習のため。
強い装備でモンスターをガンガン狩るのも楽しいけど、PvPやらを想定すると装備だけでは押し負けてしまう。その為に動きの練習を繰り返したりする為に、あえて弱い装備でモンスターをいじめ抜いて自力を上げたりするし、脳波判定なので文字通り身体に覚えさせる為には反復訓練するのがいい。
「ゲームの中なら双剣でジャグリングとか岩場を1本下駄でジャンプしながら進んだり出来るんだけどねぇ。ゲームで練習したら現実世界でもお手玉は上手くなったし。」
ポンポンとベノムエッジをジャグリングしてみるが、最初の頃は鉄剣ナイフで切ったりもしたな。発生シナリオでサーカスに潜入と言うモノがありそれっぽいアーツを鍛えたけど、割と身体は覚えてくれた。
学生とかは宿題のデータを読み込んでゲーム内で解いたデータをタブレットに反映してから提出するなんて事もあるし、外で実際に会って一緒に勉強する事が難しい人はゲーム内でやり取りする事も多い。そんな事を思いながらリハビリに勤しみオーランドへ。
鶏肉や羽根、他にも素材は手には入ったけどレアドロップはなし。採掘ポイントと言うか山肌やら石やらを砕くと確率で水晶やら石英なんかが手に入るけど、今回はひたすら掘るだけだったな・・・。一応ピッケルやらを使うので腕を動かす練習にもなるし、上の方に行けばいいものも出やすい。
ゲーム的には採掘ポイントを設定しない代わりに、火山に行けば火山石やらのそのフィールドに合った素材が掘れる。なので必要な時は遠征したり、採掘出来るモンスターを探したりと割と素材集めは大変だな。一部は買えたりフレンドとトレードしたりして揃えるけどさ。
「買い取りお願いします。」
「査定します・・・、2000ゴールド貢献度が40蓄積されました。」
「ふむ・・・、今貢献度が高い素材は?」
「流通的には値段は据え置きですが鉄が高い様です。」
店員のNPCに話しかけてお金を貰う。鉄と言うと領地戦様に集めてる人が多いからかな?誰が売らないとNPCショップのラインナップは売り切れになるものの、初期以外で売り切れは中々表示されない。それはイベントに参加しない組が売ったりもするから。イベントにも好みがあるからね。
「鉄かぁ・・・、自分で使うから売り払うのは辞めとこ。」
その後はラインナップを見つつ掘り出し物はないかと探すけど、これと言ったものはない。露店をチラリと見ると若干鉄の買い取りは高めに設定されてるけど、露店売りだと貢献度は入らないのでお金に困ってる訳でもないしスルーかな。
デイリーミッションを見つつギルドに移動すると武器召喚所の掃除クエストがあったので受注者し、召喚所へ行き大麻を振り振り。掃除と言いつつ武器を振り回しているが、これが掃除なので召喚所を一周しながら大麻を振る。町中で武器を振るうのはマナー的にはよろしくないけど、頭上には掃除中と表示されているし他にも何人か武器を振り回しながら歩き回っているので、表記がない状態で傍から見ると変な集団だろう。
「ツキさん?」
「あら?フロムさんお久しぶりです。何時もより早いですね。」
「最近色々あって仕事を定時で上がってるからな。残業なしで暇だからこの時間でもIN出来とる。逆にツキさんの方が珍しい。INしてない訳でもないなかったのに姿を見らんかったぞ?」
「私もゴタゴタしててソロモード使ったりしてましたからね。一応復帰?と言うか普通にゲーム出来るんでいいですけど、これからは変な時間にINする事があるかも。」
「なんだ?仕事辞めて巫女に転職か?篝火さんから聞いたぞぉ?覚醒大麻でニヤけながら魔法ぶっぱしてたって。」
「神職故、祝詞を唱えれば物欲センサーにも勝てるだろう・・・。武器振りジンクスで大麻出たから本当に稲荷神社で巫女にでもなろうかな?」
「ここも和風モチーフの街だが巫女するなら日華方面だな。やたらと仏像っぽい物が多いだろ?」
「設定的には古代戦争のゴーレムらしいですけどねぇ。噂では起動出来れば領地防衛戦で助っ人に出来るとか出来ないとか。」
「噂も何も発生クエストだろ?ガチで勝ちに行くなら探した方がいいとは聞くな。なんだ?次の領地防衛戦は全力で挑むのか?」
「いや、エンジョイくらいかな?どんなに装備整えても札束ビンタされるとかなりしんどいし、始まってから戦況見ないとなんとも言えない。あっ!でもフレンドの秋ドンさんは頑張るかも知れない。」
「秋ドンさん?知らない奴だが時間が合わん奴なんだろうな。ワシは今回不参加で篝火さんがやるなら助っ人当たりだし、領地経営して何個か後のイベントにでも出るかの。」
「グル転イベントで貰えるのはお金と金塊と名誉の称号だからねぇ。やると面白いけど、頭から最後まで張り付くのは・・・、今なら出来るけど、どの道廃人やらプロには負ける。」
廃人は別としてプロはプロゲーマーやらプロ配信者とか。要はゲームでお金稼いで生計立ててる人はプロと言う括りになる。なので自分の不自由な身体を晒した上で、スーパープレーする人なんかはプロとして色々なVRMMOに引っ張りだこだし、その人が太鼓判押すゲームは同じ様な障害を持つ人も楽しめると一定の収益も期待出来る。
そう言えば俺は健康だけど、尻尾と耳は傍から見るとどうなのだろう?まだ身体が上手く動かないから座れないけど、普通の椅子に座ったら尻尾が邪魔だろうし帽子も被れない?日常的に狐娘のコスプレしてる痛い人と言われればそれまでなんだろうけど、尻尾も耳も作り物には見えないしなぁ・・・。
「勝ち負け気にせず参加賞で金を貰うのもいいが、誰かの助っ人しとる方がワシにはあっとるしな。ツキさんがやるならそっちに合流するのもありか・・・、篝火さんの領地は殆ど初期じゃし。」
「う〜ん・・・。領地防衛戦出るかもまだ分からないし、出来そうなら合流もありかな?と、言うか私のフレって殆どが野良だから領地防衛戦も殆どソロなのよね。」
クラン機能はあるけど社会人には時間的な制約があるので入ってはいない。カンストプレーヤーなのでお誘いそのものはたまにあるけど、飛び入り参加の助っ人だけして抜けたりする事が多いな。一度ガチクランに穴埋めで助っ人お願いと言われたけど、殆ど棒立ちと言うか後方からバフ掛けに専念して討伐やらは任せきり。
それはそれで面白いけど、どうにもゲームしてる気にはならないし、役割分担が必要だと言う事は分かっていても個人的な楽しみとしてはイマイチだった。イベントが終了してからそのクランからは離脱してそのまま。フレンドは多分そのクランに残ってるけど、拠点が別の街に移った様で最近は会ってないな。
「ん?その秋ドンさんは?ソロでも勝ち抜けるくらいやり込んでるんだろ?」
「いや、どうだろう?領地テコ入れ報酬を最近受け取ったくらいだし。」
「あの更新後初めて領地に行くまでは加速するって言う、毎日INしてるプレーヤー泣かせだったあれか・・・、なんだ復帰勢か?」
「復帰勢と言うか、いる期間といない期間がはっきりしてる人かな?さて、今日は私も落ちるけどフロムさんは今からでしょ、楽しんでいってね!」
「おつ〜、篝火さんも後から来るしワシの方は発生シナリオ探しだな。雀切手に入れて剣系のアーツが欲しいと言っとったし。」
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ログアウトした時間は17時半、特に呼びかけもなかったので現実世界では何もなかったのだろう。そう言えば親とか見舞いはどうしてるのだろう?意識が戻るまでは面会謝絶でもおかしくないけど、意識が戻ったら親にも連絡が行ってるよな?
特段変わった事のない普通の両親の元に生まれたわけだけど、この姿を見られたらなんと言われるか・・・。息子がリアル亜人化したらどうする?俺は妻子持ちじゃないし子供もいないから想像しか出来ないけど、相当な葛藤はあると思う。
流石にいきなり勘当は・・・、ないといいけどそもそも俺を俺と受け入れられるか・・・。治療経緯なんかはログが残ってるとは思う。でもそれはあくまでログデータだし、医療ポッドを運んでる時は・・・、運んでる時は川端さんとかいたよな?
そう言えば誰が医療ポッドに俺を入れてくれたんだろう?病院まで運ばれて三枝先生が入れたのか?いや、素人目に考えてもそれじゃあ助からないと思う。
コンコン
「どうぞ。」
「マリちゃん夕食を持ってきましたよ。固形物ですが最初は消化に悪い物を控え温野菜やお粥と言ったものになります。スプーンは持てそうですか?」
そう聞かれて手を動かそうとするけど、指先や手首は動くもの腕を持ち上げるのはもう少しかかりそうだ。結構ゲーム中でも身体は動かしたからなんとなく感覚が掴めそうな気もするんだけどな・・・。と、それよりも。
「事故後誰が私を医療ポッドに?」
「・・・、それは感謝からですか?それとも恨みからの質問ですか?どちらにせよ解答は控えさせてもらいますが。」
「それは・・・、口ではなんとでも言えるからですね。分かりました、誰とは聞きませんけど感謝だけ伝えてもらえませんか?どんな形だろうと私は生きて感謝していると。」
「よろしいのですか?それを伝えない限り恨みを抱いて弱音を吐く口実にも、見知らぬ誰かのせいにし続ける事も出来ますが。」
「それは・・・、どうなんでしょうね?まだよく分からな事が多いのは確かですけど、1つだけ確実な事もあるじゃないですか。」
「確実な事?」
「ええ。私を助け様とした人は私が生きる事をあの時望んでいた。だから私は望まれて今生きている。これが事故を起こした張本人が助けたと先に言われてたら素直に感謝も出来ませんからね。誰がどんな状況でどんな判断をしたかなんて私は何1つ知りませんし。だから生きてると言うけじめとして、感謝を伝えて下さい。」
寝て起きて会社行って、帰ったらお酒を飲みつつゲームをする。そんな日常は崩れてしまったけど、崩れたからと言って死んでしまった訳じゃない。問題は山積みだけど、どうやって生きていくのかは俺の問題で、その問題を解決するには先ず生きていないといけない。
「分かりました、伝えておきましょう。」




