76話 侵入された 挿絵あり
サクラさんが幽霊として帰ってきた。時間的にはよくも悪くも夕食ローテ前だったのでそのままご飯に行ってもらい、残ったメンバーで領地寄りのラインをキープしつつ耐える。ドンドコ援護してるけど、どの領地もジワジワと動きは活発にって来るし、クッションとしていた領地の防柵も剥がれている。
思惑としては成功なのか先に動いていた俺達には突撃カマす事はなく、バルサミコスの方を警戒して部隊展開して防衛状態になってるけど、そのバルサミコスがコチラに意識を割くだけの余裕が出来ればもれなく背後から襲われるな。
出来ればバルサミコスと正面衝突は避けたい。避けたいけど陣地転換したとしても今度はどこに飛ぶかは分からない。そうなると意識誘導して今せめて来ている領地群と表面上の共闘を演出しつつ、バルサミコスからその奥の領地に挑むと言う構図を作りたい。
う〜ん・・・、かなり不確定要素は強いけどライブ配信しつつ演説して扇動して欲しいって言われてるしどうしたもんか。少なくともココにいるプレーヤーはゲームを楽しみ順位を上げようとしている。それこそ自陣のPTを見て厳しいとしても、投げ出すにはまだ早いと言う感じなのよねぇ。
『ユニットほぼ全損!かなり領地寄りにまで戦線が近づいてます。一度領地周辺まで戻りますね。』
『爆撃機は一度降りて爆弾を補給する。ちっ、ハエが煩い。対空砲火をしてくれないか。このまま降りれば落とされる。』
『ワシと篝火だけじゃ防衛ライン維持は無理じゃな。他も参戦して乱戦しとるからすぐにこっちに飛び火するとは思えんが・・・。流石に全体を見ながら生き残るのもキツイぞ?』
『爆弾補給はすぐできるさかい、対空維持はウチに任しとき。最悪王はんが生きとれば少数の損壊は目を瞑るで!』
「秋ドンさん私も領地から出ましょうか?指揮官無しでバリスタとか使うと全方位弾尽きるまで攻撃になりますけど、流石にユニットの残存数も少なければフロムさんと篝火さんが今死ぬのはまずい。」
「いや、ツキさんは残っといて。指揮官無しで一騎打ち発生したらウチが出る事になる。最悪篝火さんかフロムさんが戻らんと不確定要素が大きくてかなわん。それに侵入されても・・・。来たか。」
「前線もウチの領地寄り、乱戦率もマップで見れば高表示でプレーヤーとしてはそこそこ美味しい場所ですからね・・・。領地侵入して来るプレーヤーもいるでしょう。」
マップが狭まり乱戦状況が激しい所は少しづつ赤くなる。ウチの領地の周りは真っ赤っ赤で激しい乱戦が行われている事を示している。そりゃぁバルサミコスも乱戦してるし、そこに付け入りたいプレーヤーは俺達の領地を潰して先に行きたいし、戦いを吹っ掛けられた領地は応戦する。
ウチの領地がギリギリ潰されずに残っているのは虎の威を借る狐作戦のお陰で背後を気にしなくていいからだけど、それも18時には無意味になる。なにせギリギリまで防柵使っていた領地も動き出すし、クッションになっていた領地は既に防柵が取れて部隊も展開している。
戦果に飲まれて蹂躙されるのがウチの領地がある場所だけど・・・。流石にパヴロフの家の様に2か月最前線で包囲されても侵入を許さなかった奇跡のアパートとは行かないのよねぇ。
俺が残った理由。それは秋ドンさんという盟主を守り且つ、領地の機能停止を阻止する為。戦場の霧は深くて各領地が集団としてではなく個で動いているからノイズとして『倒せそうだから倒す。』と言う領地も出てくる。
だってウチ等って順位的にも低くないし機能停止に追い込めればPTも美味しい。それにユニットの投入数も多いから他からすれば『資源使いまくって中の守りは薄い。』と思われても仕方ない。大砲から離れつつリアルでは手近にあったゼリー栄養食で10秒チャージ!
先生が夕食といい出したら落ちるしかないけど、座敷童子大先生を検査してるはずだからもしかしたら遅れるかも。なんにしても延々と考えながらゲームしてると糖分も欲しくなるのよねぇ。
大砲から離れて領地の象徴であるビリケンの所に向かえば内部防衛ユニットとプレーヤーが戦っている。いい野菜燃料使ってバフ付いてるからそこそこ粘れるけど、無双ゲーと言うだけあって襲いかかるユニットをどんどん倒している。武器はハンマーか。両手武器である分火力は高いし、モーション習得状況次第ではかなり化ける。
デカいハンマーがパワータイプでウスノロだと誰が決めた?体型は確かにステータスにボーナスがかかる。しかし、重さと言う項目が武器や装備品にはない。つまり筋力を上げてスピードを上げれば振りは早くなるし乱打なんかのスキルを使えばボコボコ殴ってくる。
「ちっ!全方位援護射撃じゃない時点で考えていたが、やはり護衛は残していたか!」
「当たり前だろ!人の領地に入って来て生きて帰れるとは思うなよ!一旦ユニットは下がって周囲警戒!ソイツは私の獲物だ!」
体型は痩躯で身長は中程度。レベルは分からないけどスピードと防御力を両立させつつ神族特性で魔法防御も高めか。何にせよ倒さ相手である事には変わりないし、さっさとと処理しないと秋ドンさんの負担も増える。
「一騎打・・・。」
「狐火!させるかよ!乱戦のまま潰す!」
外に仲間がいれば一騎打ち連打が起こる。中を知られた上でそれをされると拒否限界に陥れば秋ドンさんが出る事になる。領地に侵入されて内情を知られると言うのはそれだけ危険なのよね。言い切られる前に遠距離から狐火で包囲!しかし、魔法防御の高さを利用してハンマーを盾に突っ込んでくる。
ヤバいな、時間を与えれば与えるだけこの人のチームメンバーが集まってくる!フロムさんと篝火さんは下がってきてるけどまだ帰還報告はない。しかし、突っ込んできたって事は指揮官PTを優先したんだよな?結構面倒だけど逃げ回りながらビリケンを壊せない事もない。まぁ、ユニットがいてプレーヤーである俺がいるからかなりシビアで、速度勝負に持ち込んでもかなり僅差になるし。なら注意が削がれる前に倒してしまおう。
「マッスルアップ!クロックアップ!大旋風!・・・、なに!?」
「はっはっはっ!坊やはご新規かい?草結び、エアバインド!ほら、その首置いてPTになって逝ってね!リピーテッド・ピアース!」
ナインテール、それの特性は9回のオートジャストガードと盾に見えない事!初期のイベント商品であり復刻もないから知っているのは古参か増えた盾を調べて探す人。その中でもナインテールって検索候補にも引っかかりづらい。なにせ9回のオートジャストガードは魅力的でも盾としての火力は低く、そもそもジャストガード自体はプレーヤーがタイミングさえ慣れれば出来る。
ダメージソースとして盾を考え出した瞬間、ナインテールは検索でもかなり下の方になり、元々背面のある盾と言う特性も合わさって扱いやすさも限定的になってくる。でも、そんな盾をどう使うかと考えてプレーヤーは尻尾出前に持ってきたりとしていた。
ハンマーを最大限活用する様に端を持ち回転しながら殴りかかって来た相手に、両手にナイフを持ち抱き着くように飛び掛かる。ジャストガードは発動し尻尾が千切れ飛ぶもそのまま内に入り込み魔法で拘束して首やら頭を滅多刺し!ここに来るまで流石に無傷ではなかったのか、そのままポリゴンになっていく。
普通にPVPするなら色々と組み立てるけど、速さ勝負なら多少雑でも即効性を考える。プレーヤーの弱点は首含む頭と心臓、そして心臓は防具で守りは硬いけど頭に関しては視界が悪くなる事を嫌って鉢金なんかを装備する人が多い。
このプレーヤーも乱戦から抜け出してきたから、フルフェイス装備ではなくヘルム装備で顔や首の露出は多い。上位プレーヤーならかぐやまで行ってフルモニター付与とかしてガチガチに固めたりしてる分、このプレーヤーのレベル帯も分かってくるのよね。
「流石に手際ええな。」
「どう楽しむかはその時その場で変わるからねぇ。流石に2人しかいないのに長引かせても不味い。でも、既にここの内情はバレたかなぁ・・・。」
「そっちは大丈夫や。フロムさん達も戻って来るし爆撃機も一部威嚇ん為に低く飛ばしとる。多分落とされるけど妖精王はんがその上に上がったさかい簡単には攻め込まれんで。」
「なら大丈夫かな?でも資源管理大丈夫?」
「結構キツイ。出したユニット全損はしゃあないけど、もう少し無事帰ってくると思っとった。まっ!ゴーレム多めに残しとるさかいそれを盾兼爆弾として・・・、遺産ゴーレムあるよな?」
「流石にバルサミコスが発掘してないって事はないでしょうね。日華に眠る遺産、発生クエスト探して得られる隠しユニットと言うなの暴力装置を。」
「あれん攻略は任すで。」
「まぁ、どうにかしましょう。最悪無視ですけどね。」
古代戦争で使われた戦闘ゴーレム。見た目だけなら普通のゴーレムより一回り大きく3mくらいかな?これがこれが暴力装置と言われると由縁は大きさも去る事ながら生産で来るゴーレムよりも固く早く、遠距離攻撃を持っているから。全体的なステータスを考えると硬さはゴーレム以上、速さは生産歩兵ユニットよりは遅いもののゴーレムよりは早く、散弾銃を連射して来る。
一応、エネルギー補給不可なのと対空攻撃出来ないと言う話はあるものの領地を防衛すると言う話ならこれ程心強い物はない。なにせ敵領地近くを飛行すればビーム砲が飛んでくるしねぇ。
プレーヤーとしても真正面から挑めば蜂の巣にされるから、距離を取って散弾銃によるダメージを分散したい。けど、最終局面ではそんな事も言っていられず相手領地に攻め込みたい。こうなってくるとユニット1体分のPTしか得られない古代ゴーレムを無視するか早めに倒すか、エネルギー減れを待つかの選択が迫られる。
「戻ったぞ!」
「領地は大丈夫でした!秋ドンさんから侵入の知らせがありましたけど。」
「さっさと処理しましたよ。それよりも外の状況はどうでした?」
「時間が押しとるからかなり盛んじゃな。最悪ワシは飯を遅くしてもええぞ?」
「僕も栄養ゼリーとかでもいいですね。こっちが気になってゆっくり食べれなさそうですし。」
「ツキさんどないする?」
「私は落ちます。手っ取り早く食べますけど先生が何を言い出すか・・・。メッセージは受付ける様に設定するから必要ならメッセージ飛ばしてください。」




