73話 大事?
寝て起きて歯を磨いてもきゅもきゅと朝食を食べる。なんと言うか上げ前下げ膳自堕落ゲーム三昧だとモル狐を否定したのが悔やまれる・・・。まぁ、病室から出られない以上、モル狐である事にはかわりないかな?
王道ファンタジーで攫われる姫様って案外こんな自堕落生活してるのかな?だって部屋からは出られないだろうし、魔王と話す事もないだろうし、待ってれば王様がどうにかしてくれる。そうなると食っちゃ寝しつつ暇つぶしするくらい?
そうか・・・。魔王よ、姫様に足りなかったのは多分娯楽だぞ?暇つぶし出来て楽しかったらここにい続けてもいいかなぁ〜って心揺らぐし。姫としての責任がー!とか言いそうだけど、攫われた時点で責務は果たしている様な・・・。
「朝食にライスバーガーってどうなんですかね?」
「パンよりは腹持ちがいいので悪くはありませんよ?それに血糖値の上昇もパンよりは米の方が緩やかで気になるのは脂質くらいです。しかし肉をパティーではなく鶏の生ハムにする事と、野菜やピクルスを多めにする事でトータルバランスとしては問題ありません。」
「なるほど・・・。最初に食べた病院食は味がなかったですけど、こう言うのが食べられるなら嬉しいですね。他の人も食べたりしてます?」
「いえ。マリちゃんの献立も研究の一部なので間食含め全て記録しています。因みに今のマリちゃんをモニタリングすると正常な血糖値上昇が見られますね。」
バッリバリ監視されてるよ!まぁ被検体なので仕方ないのかな?何にせよ調べる為にここにいるのも確かなので特に文句はない。まぁ、部屋に監視カメラとかあったら流石に困るけど、桃出した時も飛んでこなかったしなぁ・・・。
食事を済ませて一段落ついたらヨガマットを引っ張り出してヨガ〜。動画を見ながら色々とやってみるけど、運動かと言われるとちとゆっくり過ぎる。なので動画を切って独自アレンジ。耳を意識してピコピコ動かしつつ尻尾をバラバラに動かしてみる。尻尾を両手の指先を合わせる様にして上から順にぐるぐる回す。脳トレにはいいらしいけど、背面で見えない尻尾を回すのは意外と難易度が高いな。
「器用なものですね。」
「ゆっくりしか回せませんよ。それにコレよりも尻尾スクワットとか尻尾グーパーの方が楽と言えば楽ですね。」
尻尾の上に座り体を上下するのが尻尾スクワット。体に巻き付けて揉みもするのが尻尾グーパー。何かの本で動かすなら大きい筋肉と書いてあったので尻尾筋を動かしてみている。腰辺りから温もるので結構いい運動になってるかな?
「ん・・・、華澄さん達が来た様ですよ。断られなかったのですか?」
「午前中は時間が作れましたからね。一応、忘れ物とか探しましたけど何もなかったし、メッセージや電話連絡では話しにくい事なのかも知れません。特に心当たりはないですけど。」
あるとすれば本当に今後の事とか?付き合っていて別れたと言うのはいいとして、その後より戻していきなり同棲と言うのは・・・、華澄ならありそうだし元々結婚欲求と子供欲しい欲求は強い。う〜ん・・・、今の状態だと子供云々は完全に後回しにして本当に結婚だけとか?
流石にこれだけ姿が変わってしまってDNA的にもどうなっているやら・・・。いや、個人データが使えたから問題のある遺伝子でもなければ俺の遺伝子と言っても間違いはないのだけれど、流石に尻尾と耳の生えた子供が生まれるのは酷だろう。
「おはよ真利。」
「おう、昨日の今日で邪魔するよ。」
「あら?邪魔するなら帰って〜って、木本さんも来たんですか?」
「来たくはなかったけど来ねぇと不味い事も合ったんだよツキちゃんよぉ。先生は・・・、いてくれ。」
扉から入ってきた2人は昨日の焼き写しの様に黒いビジネススーツを着てるけど、何やら赤ん坊が着る様なお包みを木本さんが抱いてる。えっ?もしかして子供がいるアピールとか?狐の窓で見られたけど何かしら子供と言うか赤ん坊が関係あるんだろうか?
特に泣き声は上げてないけど寝てるのかな?結婚して子供作った後輩とかは可愛い可愛いと言うけど、俺としてはどうもこう・・・。予測出来ない行動を取られ続けるとストレスを感じてしまう。それが子供だと言われると納得するしかないんだろうけど、泣き声で要求を理解しろって難しくない?
嫌いと言うわけじゃないけど今まで自由に生きてきた分、自分の時間を削られたり生活スタイルを大幅に変えられるのは結構辛いし、それが分かってるから独身貴族を謳歌していた。
「よろしいのですか?一応警察関係者と言う事で信用はしていますが。」
「信用云々の前にな・・・。」
「もういいか?なぁ、ツキもそこにいんだろ?ならいいだろ?」
「座敷童子大先生も来たんだ、コレと言ってお菓子ないけどいい?」
「いいぞ~、昨日いっぱい食べてちょっと胃もたれが・・・。」
「それは・・・。」
三枝先生が言い淀むけどどの感情だろう?多分初対面の三枝先生と座敷童子大先生。お包みの中から覗かせる顔は人形の様に整っていてと言うか、人形だから綺麗に作られてる。でも、なんか前よりもこう・・・、生き生きしてるとか?
前に目を見た時はガラス製なのか人の目の様に見えても作り物っぽさがあった。でも、今はそんな感じもないし、まぶたも人っぽくより作り込まれて継ぎ目が見えない。
う〜ん・・・、狐の窓で見られたしその結果何かしら合ったのかな?でも、その時大先生はいなかったし何があるっていうんだろう?と、言うか普通に大先生食事出来たんだ。人形だからお腹に入るだけで胃もたれとかないと思ってたけど・・・。
「なんですか?」
「座敷童子大先生ですよ。ぱっと見、対話型AIを搭載したお喋りロボットとか?他部署か老人向けに販売したりしてたなぁ〜。顔の部分をモニターにしてお孫さんの顔が見えて、音声も合成音声で似せて身ぶり手ぶりしてくれるやつとか。医院長の同族?さんです。」
「いえ、マリちゃんそう言った問題ではないんです。なんでその体表にバイオナノマシンが塗布されているんですか?流石に無断で持ち出したと言うなら我々としても黙ってはいられません。そのナノマシン自体はまだ研究中と言う話で世には出回っていな・・・、まさか!」
「流石医者先生、頭の回転が速くて助かる。」
「華澄なにがあったの?」
「真利から貰った桃を食べたらこうなったのよ。あの桃って一体なんなの?こう・・・、実ったって言葉が正解だとは思うけど、また出せる?」
「いや・・・、昨日出そうとして桃は出せなかったんだよねぇ〜。」
「それはいい事聞いたが余計分からなくなった。でもツキちゃんよぉ、なんかわからねぇか?俺達としてはこの事態を黙って見過ごす訳にもいかねぇし、上に報告するにしてもある程度の情報がいるんだわ。」
チラリと三枝先生を見るけど、三枝先生も考え込んでいてどうするか考えあぐねている様子。推測しろって言われても自分で自分の事がよく分かってないし、周りからは置いてけぼりを食らってる状態なんだよなぁ・・・。
「当たってるか外れてるか分からないですけど、それでもいいならいいですか?」
「おう。正直言って俺達にはお手上げだ。この際何でもいいから話してみてくれ狐巫女のツキちゃん。」
「なら・・・、私の魔法と言うか神通力?は今してるゲームが土台にあるっぽいんですよね。医療提携型VRMMOでタイトルはトラブルオンライン。精神含め障害者に対して一定数のリハビリを行います。例えば足が不自由なら電動車椅子の操作をより円滑に行える様に習熟させたり、長期的寝たきりだった人とかには体を動かす感覚を取り戻させながらに他のマシーンを使って筋トレの補助をしたり。」
「あ〜、それは分かる。そんな話は世間一般でも有名だしゲーム会社の1つの目標としてよくよく掲げられてる。話はそこじゃないんだろ?」
「ええ。三枝先生どこまで話しても?」
「この際協力者としていてもらいましょう。」
「なら・・・、名前を知っているから事故の事も知っていると思いますし、この姿がゲームアバターの姿だと言うなも知っていると思います。そこでなんですけど、どうにもアチラで出来る事がこっちでも出来るみたいなんですよね。そこでなんですけど、今ってインベントリ内に桃はないんですよ。」
「インベントリに桃がない?俺は知らねぇが、重要なアイテムかなんかなのか?」
「違いますよ木本さん。桃は食べ物で銃弾です。」
「そういやぁお前もやってんだっけか柊。変な桃だが特段重要なものでもないと。なら何でねぇんだ?」
「イベントで使っちゃいまして。インベントリって財産目録とか在庫って意味じゃないですか。在庫がないものは取り出せない。だからこっちでも取り出せない。かなり荒唐無稽ですけど、コレなら筋は通るのかなーと・・・。」
「それってつまりアレか?ゲームにあるなら無理くりでも取り出せるって事だよな?」
「多分ですけど・・・。」
「ならやめろ、そのゲーム即刻辞めて狐娘だけなら・・・。」
「やめろ木本!それはダメだ、今度は全く制御出来なくなるぞ。」
「制御?座敷、なんだその制御ってのは。」
「だってマリは百鬼夜行出来るだろ?それはつまり魑魅魍魎を呼び出し悪さして最後に空亡呼び出してすべてはご破算。俺達は別に構わねぇ〜けど、本来百鬼夜行ってのは勝手に妖怪が・・・、虐げられた俺達が憤慨してやる一揆だ。それを無理矢理発生させる大妖狐、今は巫女って自分で名乗ってあちらでもそう思われてる。だから人と妖怪の境界に立つだけで済む。でも、それが今壊れればいくら強くても赤子がいい様に扱われるだけになる。」
「座敷・・・、俺ちょっと吐いてきていいか?」
(華澄、空亡ってなに?一応ゲームなら出せるのは出せるんだけど。)
(百鬼夜行の最後に出て来て全てを終わらせる者。だけど本来は四柱推命などで使われる天が味方しない凶運期の事よ。つまり何をしても上手くいかない、どう動こうと成功しない。つまり勝ち目がない相手ね。)
「吐いてもいいけど、なんも変わらねぇ〜ぞ?」
「ちょっと待って下さい。流石にそこまでマリちゃんの身体が保つとは思えませんが?それに座敷さん・・・。」
「好きに呼んでいいぞメガネの先生。一応、俺も調べて貰う為に来てるしな。」




