61話 やりたい事やろうぜ
「取り敢えず篝火さんとツキさんで葦束燃やしといて。ウチは歩兵ユニットつこうて周囲警戒やるで〜。サクラさんと王さん帰ったらまた忙しゅうなるしな。」
「壊されたユニットの増産どうします?飛行ユニットは私が1個廃棄したしサクラさん達が連れて行ったのも全滅でしょう?」
「増産はサクラさん達が帰ってからやってもらうで。」
「あの〜、またよく理解出来てないルールがあるんですけど、聞いてもいいですか?」
「ええよ。と、言うかツキさんそれ生配信やないよね?」
「作戦筒抜けで勝てるとは思ってませんし、そこまで奢ってませんよ。悪い狐なので誤情報配信とかも面白そうですけどね。アップするのは後日か、最悪作戦内容話してる時は『コーン』とでも音鳴らして知られないようにします。さて、ならココからは分かりにくいかもしれない領地防衛戦のレクチャータイーム!と、言ってもざっくり言えばシミュレーションゲームなんだけどね。」
「違う所があるとすれば普段からユニットが練兵とかで鍛えられる所やね。篝火さんは大戦略とかロボットのやつとかやらへん?」
「寧ろ好物ですよ。ただ、色々とやり方が違ってるんで・・・、そもそもこの葦束だって一回燃やしただけじゃ駄目なんですよね?」
「いかんよ?もしかして篝火さんは・・・。」
「秋ドンさん、篝火さんはクローズドゲーム派でトラブルオンラインが初VRMMOなんですよ。どのゲームでもってわけじゃないけど、トラブルオンラインのシミュレーション部分は全部時間と確率がでてくるの。例えば葦束を燃やせば最初は95%の隠蔽率が不要されるんだけど、そこから時間経過でどんどん隠蔽率が下がっていって2時間でゼロ。しかもたちが悪い事に隠蔽率の現象速度は最初がトップで後から緩やかになる。」
「ボンボン葦束燃やしとるんはそないせんとすぐ見つけられるからやな。そもそもトラブルオンラインは特別な時以外は確率100%をプレーヤーにくれへんしとかは80%は信用ならん数字やで。」
「体感すると80%って6割くらいの成功率しかありませんしね・・・。それに、領地防衛戦はコマンド一辺倒じゃなくてプレーヤーが動いて作業しないといけないんだよなぁ・・・。葦束燃やすのだってあそこのビリケンさんっぽいのに投げ込まないといけないでしょ?」
ウチはでは大木だけど秋ドンさんの領地ではカスタマイズされてビリケン人形が鎮座している。その前の台に野菜やらを葦束やらを運ぶのはプレーヤーの仕事でユニットは手伝ってくれない。山程備えればいいじゃないかって?燃料系ならそれでいいけど、時間や確率を確認して使う物は一気にお供えしてもいいけど、次の分は時間や確率がゼロになるまで使ってくれない。
最初から来る者を全員叩き潰すつもりなら隠蔽やらも気に着なくていいんだろうけど、そんな事が出来るのは更にプレーヤーを集めた大規模領地の盟主だけ。そんな盟主でさえ1日目は葦束を燃やす。因みに1領地につき葦束100個で2時間と言う暴利である。戦争とは資源の浪費とよく言ったものだ。
ウチは今回5人プラス妖精王の6人で同盟を組んでやっているものの、妖精王は指揮官であってもプレーヤーではないので500個の葦束で足りる。そう考えるとメインコアが中々でないのも頷けるな。
「なるほど、リアルタイムシミュレーションなんですね。ならやっぱり今からユニット増産した方がよくありません?」
「ユニット増えると燃料が減るんよ。いやらしい運営はんはね、ユニットに燃料入れるんもゼロからなら10分って時間制限付けとるし、稼働してるユニットが多ければ多いほど領地の総燃料からどんどん減ってく。増産したら燃料満タンで出てくるから直ぐに作るんは勿体ないし、まだまだ寝かせてるユニットはぎょうさんおるで。」
「因みにユニット作成時間は20分ね。こう言った所はソロとかで実際にやってみると分かりやすいかな?プレーヤーが死亡したら復活アイテムじゃなくて防衛戦だと3時間のクールタイムで復帰するか、野菜やらを5万消費して半減させるかになるよ。ユニットのコストはユニット毎だから後から確認するのがいいかな?」
「結構実践的ですね。なら、サクラさんが死んでた場合って・・・。」
「放置だね。」
「放置やな。死んだら半透明になって領地にはおれるけど、発言禁止で領地から出られへんから大概ん人は別の事しとるんやない?場外乱闘とか、場外情報収集とか。」
「やっぱり放置ですか・・・、僕が死んでも放置してくださいね?弱いんで。」
「状況によりけりかな?今日は初日で時間的にも余裕があるから放置だけど、最終日だとそうも言ってられないよ。なにせプレーヤーってノーコストで索敵も戦闘も指示出しも出来るチートユニットだし。」
「せやな。それに一騎打ちはプレーヤーだけしかでけへんから大型領地をフルボッコしにいくなら必要や。篝火さん、コレはようでけとるけどゲームやで?勝てんと悔しいんは分かる、ウチもプレー間隔空きまくりプレーヤーやし、もっと野菜とか集めれたんちゃう?と思う事もあんねん。でも、自分の手札は今あるものだけやからそれで楽しく乗り切るしかないんよ。と、言うか篝火さんシミュレーションゲーム大好物なん?」
「RPGとかも好きなんですけど、どうしても主人公に感情移入出来ない所とかあるじゃないですか。特にVRで主人公になりきって旅とかしてるとその選択肢はどうなの?とか。その点シミュレーションゲームは自分が艦長とか参謀長やれるんで思った通りの行動が取れるんですよね。」
「ほう。篝火さんは参謀プレーが得意と?」
「ええ事聞いたな。」
「ええ事ですか?」
「私達ってば基本的に野良でやってるから匙加減的なモノってあんまり気にしないのよね。例えば敵のユニットと指揮官見つけたら自死覚悟で殴りに行くとか。」
「あるなぁ。死んでも誰にも迷惑かからんから1交戦に3時間支払えばええやんって感覚ん時もあるし、死んだら死んだで参加賞貰うだけでええかと思うて放置したり・・・。篝火さん良かったら参謀やる?ツキさんが副盟主やけど、権限譲渡すれば色々いじれるし内情が分かるで?」
「いいんですか?僕なんかで。」
「いいんじゃない?領地防衛戦はなにもガチンコで戦うだけが全てじゃないし、ユニット同士の戦いなんてのも多いからね。」
「たっだいまー!!いや~、ごめんね見つかっちゃって。回収した資源ユニットごと結構壊されちゃった。」
「戻った。あの狼藉者はなぜこのタイミングで我々を襲う?ユニットも稀人も領地に戻ってから倒せば全て簒奪出来ただろう?」
「その全てを倒すのが不可能なら破壊して相手の手に渡らない様にする。嫌がらせとしてはチープだけど効率的で、相手が防衛戦に勝つと言う目的じゃなくて、上位陣との戦を望むなら領地防衛戦は格好のイベントだよ。」
カンストプレーヤーが何人いてどれくらい強いのか?マスクデータと言うか武闘祭に参加してPVP1位の人が強いのは間違いないんだけど、全員が全員参加しているわけでもない。俺だってPVPは疲れるし時間縛りがあるので見送る。そんな中で領地防衛戦は参加賞が美味しいのでアクティブプレーヤーなら大体参加しているし、個人で栄えている領地を持っていればそれだけ長くプレーして高レベルと言うのが見て取れる。
闘争を求めるプレーヤーほど、最初の数時間は走り回って領地を探して上位プレーヤーに一騎打ちを申し込むし、断られれば領地を壊して復帰用の物資を現地調達する。中にはアサシンじゃなくて情報売る汚い忍者なんてのもいるけどね。
「それで?何の話?葦束焼いてないから隠蔽率かなり落ちてるよ?」
「ヤバいやん!ちょい焼き行ってくるさかい篝火さんとツキさんでさっきの話し決めといてな!」
秋ドンさんがビリケンの所に走っていく。どんな選択でも受け入れると言う事だろうな。確かに秋ドンさんがいてカンストプレーヤーの俺がいたら初心者の篝火さんは中々やりたいとは言えない。だからあえて自分で動いて少しでもフレ歴の長い俺に話を預けたのだろう。
「ツキさんどうします?」
「えっ?もう権限譲る気マンマンだったけど?空でアールさんも見かけたし、バルサミコスが攻めてくるなら俯瞰してユニット指示してる暇もないし。」
「僕で大丈夫ですかね?シミュレーションゲームは好きですけど勝てるかは分かりませんよ?」
「そこを支えるのがプレーヤーだよ。死ぬのも遊びなら負けるのも遊び。やりたい事あるならやった方が楽しいし、今経験しとけば次の機会にはもっと色々思いもいつくかしれない。それにね、カンストプレーヤー2人にレベル230の秋ドンさん、レベル150くらいのサクラさんに、物珍しい妖精王まで指揮できるって中々ないよ?」
「我は指揮されて死にたくないが?」
「私は死んだら休憩かなぁ〜。ちょっとマチョ成分補給とかしたいし。ハヤトさんっていいアバターよね。」
「そこのマチモスは黙っとれ。」
「あら、おかえりなさいフロムさん。アサシンは?」
「空爆で消し飛ばしたわい。ついでに巻き込まれたユニットも何体かいた、多分近くにバルサミコス以外にも稼働しとる領地があるぞ?で、誰か死んだか?秋ドンさんの姿も見えんからまさか・・・。」
「流石にないってフロムさん。今篝火さんに副盟主権限渡そうとしてる所ですよ。」
「篝火に?良かったな、資源との兼ね合いはあるが派手にやれるぞ?と、言うかサクラ。どれくらい資源運んた?」
「取れるだけ取ったけどユニット壊されて王様と私の個人回収分だけ。でも、倉庫には半分くらい資源が残ってたかな?」
「半分?」
「焼くか罠ですよね。ユニットだけで探索してる様なクランなら打撃は与えられますけど・・・。」
「それって待ち伏せに使った後に回収とか出来ないんですか?後は罠の解除とか・・・。」
「出来るけど・・・、そう言えばプレーヤーが今回は多いんだった!妖精王、仮に罠とか作って設置したら解除とか出来る?」
「作る過程を見れば。ただ、あまり込み入った罠だと失敗するかのせいもある。」
「なるほど・・・。やっぱり篝火さんに盤面を任せるよ。私だといつもの癖で相手の手に渡るくらいなら燃やしたりしそうになるし。」
「分かりました、謹んで拝命します。」
「エゲツない作戦を頼むぞ篝火。実行するのはワシ達だがな。」
「えー、私は真正面からの筋肉フェスに参加したいんだけど?」
「それは・・・、ここって移動します?」
「今は森の中だけど確実にするよ。2日以降は領地資源ゼロだとプレーヤー復帰時間が倍になるし、そしたら脱落って考えていい。それに森って地形はありがたいけど、逆に相手も罠とか設置しやすいしねぇ。」
罠罠言うけど、その罠もプレーヤーが設置する。簡単な罠なら振り子みたいな丸太が飛んでくるとか、少し手が混んだものなら穴を掘ってベアトラップとか。サバイバル試練やら罠試練もあるから齧ってればより設置は楽に!この辺りは学習系の部分かな?テコの働きは〜とか慣性の法則は〜とか言うし。
「ならサクラさんにはその時頑張って貰いますよ。権限を貰ったから領地の状態を・・・。かなり充実してますね、ただ稼働ユニットは少なくと。」
「戻ったで〜。権限は篝火さんに渡したんやな?よっしゃ!ならツキさんを馬車馬に出来る!」
「飛行ユニットで空戦とかしましょうか?ゴーレムで電撃戦とかでもいいですけど。」
「その前に索敵しないと。相手の領地の場所とか分からないじゃないですか。」
「あ〜、ならワシから1つ。サクラが見つけた倉庫に寄ったが中身はからだった。多分他の領地の奴等が持って行っとる。ピンを見ればワシ等の領地から北へ約4マスの所、コレが倉庫なんじゃが空爆後に見に行ってユニットも指揮官も見とらん。と、言う事は・・・。」
「少なくとも倉庫の地点より更に北側、或いは左右に誰かの領地がある。いや、会話ろぐから考えると倉庫を中心に2マスの空爆が合ったら・・・。フロムさん、相手のユニットがどう倒れてたとか分かります?」
「ん?ランダム爆撃だから信用度は薄いが、更に北側に多かった様に思うぞ?」
「なるほど、なら左右ではなくてやはり倉庫の先が怪しいですね。飛行ユニットでツキさんが索敵してたのはこの領地を中心とした場合南側でしたし。」
背中を押すつもりで副盟主譲ったけど、どんどん共有マップにピンが刺されていく。ここが怪しいとかこの部分に空爆とかアサシンと接敵とか。ソロでやってると共有も何もないから倉庫くらいしかピンは刺さないし、農民一揆よろしく壊れる前提でユニットも運用してしまう。
だって壊してもいい分しか投入したないし、更に続けようと思うならユニットに割り振らずに自分を生き返らせるし。でも、篝火さんはちゃんとシミュレーションゲームとして領地防衛戦を楽しもうとしている。うん、俺よりもきっといい副官として秋ドンさんを助けてくれるな。
「秋ドンさん、提案なんですけど・・・。」
「ええよ。索敵して領地壊しに行くんやろ?相手がバルサミコスやらなら辞めとけ言うけど、そこそこな領地なら腕鳴らしにちょうどええやろ。」
「なら私索敵行ってくる!アサシンに追われた恨みを私は走狗となってやり返す!」
「お〜、八つ当たり八つ当たり。」
「葦束はちゃんと持ってけよ?じゃなければいい的として撃ち落とされる。」
サクラさんが飛行ユニットを引き連れて索敵に飛び出し、残された俺とフロムさんは領地周辺の索敵を歩兵ユニットと行う。流石に索敵に言っている間に領地がなくなったとか笑うに笑えない。いや、ソロなら爆笑なんだけどね。相手の領地をズタボロにした!自分の領地もズタボロだった!とか。
「ツキさんありがとよ。」
「ん?なにがです?」
「篝火副盟主の件。彼奴は引っ込み事案な所があってやりたい事も中々言い出せんかった。そんな篝火が副盟主やるんだろ?ちゃんと自分のやりたい事が言えたんだなとな。」
「いやいや、話の流れですよ話の流れ。シミュレーションゲーム好きって所から秋ドンさんと私が何となく話が合って譲ろうかとね。秋ドンさん的にも私を副盟主として残すよりは外に出したかったんじゃありません?どんなプレーヤーが潜んでるかもわかりませんし。」
「それでもだ、いいチームやら話を聞いてくれるチームじゃないとそう言う雑談も出来んし、勝ちに拘る奴ならワシをサクラの救援に出すよりは、その場で戦い抜いて貰って勝ってもらうか3時間待機を選ぶ。人と離れられんVRMMOじゃからこそ、人と関わる術を見つけるにはちょうどいい。」
篝火さんはフロムさんがゲームに誘ったと言ってたけど、それはリアルも含めての知り合いだからかな?何かしらの事情なんてものは人には無数にあるし、それに踏み込む踏み込まないは自由だけど踏み込んだなら付き合わないといけない。それがアバターと言う仮面を被ってリアルとの境界が曖昧なVRMMOでは軽い。
「ならいい出会いだったんでしょう。私を崇めなさい、美少女か一緒にプレーしてるんですよ?お稲荷さんとかお供えしてくださいませ。」
「本当に狐だの。と、ユニットが近くをうろついとるな。」
「そのユニットは私の敵だ。と、『ユニットが近くにいますけどどうします?』」
『通り過ぎるならスルーしましょうか。葦束焼いるから見つかる確率は低いですし、ユニットが撃破されたら領地なりプレーヤーがいるってバレますから。発信機頼めます?』
『了解了解、発信機使って相手の領地を炙り出すぜぇ〜。』
吸盤銃で発信機を歩兵ユニットへペタリ。指揮官がいれば発信機には気づくけど、ユニット単体なら領地に帰って整備しないと発信機は見つからない。コレも良し悪しでユニットを無駄にしたくないなら発信機を壊すけど、潤沢な資源を揃えているなら稼働時間ギリギリまで索敵させて適当な場所で廃棄する。
ウロウロしているユニット達はユニット単独なのか、あまり大きな動きはしない代わりに立ち止まったりしながらゆっくりと動いている。嫌な感じだな・・・。ソロなら気にしなかったけど集団でプレーするなら如何にして隠れながら有利を引き出すのか?も考えないといけない。
「あんまり動かんな。」
「完全に索敵部隊として運用してるんでしょう。5%が引ければ出費はある程度チャラにできますし、相手が分かれば作戦も立てやすくなりますし。最悪攫います?適当に石でも投げて釣れば何マスかは連れてけますよ?或いは無理やり押し出すか。」
「強制移動はいかんだろ?移動速度でも見つけられる様にわざと遅く歩かせとるんだろうし。」
「う〜む・・・、流石一時期自衛隊とかが参戦してただけの事はある。ユニット半壊させて運べばまだ行けるかと思ったけど、指示受け付けない時点でなんかされてるってバレるしなぁ・・・。」
プレーヤーが思考するチートユニットだとすると、普通のユニットやらは一般兵である。それこそ指示を出せば愚直にこなす。燃料切れで餓死するまでそこにいて索敵しろと言われればするし、囮になって蜂の巣にされても文句は言わない。その代わり指揮官の指揮以外の行動は異常として直ぐに報告と言うか、命令外行動と表示されるし、死んだその地点に死亡と言う表示が出る。
駒は駒でも無能な駒じゃなくて素直で優秀な駒なのよね。ただ索敵には時間がかかるとか、発信機を仲間のユニットが見てもなんとも思わないとかはあるけどさ。
『こっち来たらどうする?』
『領地がバレるよりはマシなのでキルですね。ツキさん達がいるのがちょうど領地から1マスギリギリの所なので、それよりも先に来るなら少し時間置いてキルしてください。即刻キルすると通りかかりの辻キルとも思われませんから。』




