58話 スタート 挿絵あり
そもそも病院側と宮内庁側・・・、妖怪を鎮めたり討伐したりする側と病院側が仲が悪いのは理由がある。それは事あるごとに病院側に責任を押し付ける立場にあるからだ。妖怪のスタートは奇形やそれに準ずるもの、そして本当に人とは違う成り立ちにある者達。
人の傲慢はどこまでも続く。それは人と言うコミュニティの中で実体しか認識できずにそれ以外を別の者と位置づけたからになる。そもそもな話だ、神秘医学と言うデタラメでありつつも現代医学に繋がるモノが作られた時まで医学とは祈祷や迷信が信じられていた。
例えば遣隋使の時代には船の安全を祈り続ける祈祷師を船に乗せ、成功すれば報酬を失敗すれば罰とすしていたし、高貴な者の出産時は大勢に安全祈願をさせていた。それは仕方がない。医学も未熟で薬も未熟で何もかもが幻想を主軸にした世界の中で人と妖怪は境界をある程度の範囲で決めて生きていた。
しかし、人はそれから進化してきた。神の雷は電気として手に入れたし、その前の火は神から授かったにしても人が恐れずに扱って来た。そう、知性という言葉便利であると同時に自分達で悪夢も引き起こす。
見えない者が見えないまま知覚も出来ずにイタズラする程度なら境界は揺るがなかった。だが、人は見えない世界を勝手に作り境界を破壊した。悲しい事にVRもARも医療も・・・、大多数の人は架空の世界だと考えているが、それはそのまま自身が架空の世界に入り込んでいるとも言えるし、五感に作用しつつ行動しているなら既にその世界の住人とも言える。
「主任どうかしました?」
「いえ、マリちゃんとの事で考えていました。彼女の身体に起きた現象はどれに該当するのかと。」
「該当ですか?」
「ええ。神隠しに迷い家に西洋ならチェンジリング。その他にも清めの炎やらと黄泉が帰り等々、人が何かしらの超常の力を得るには一度それに触れて持ち帰るか或いは、そういった者と深く関わる必要があります。その中であの医療ポッドとマリちゃんと得た能力と言うのは真新しいさ様に見えてなにか法則があるのではと。」
「法則・・・、異界から現世に作用する能力とか?」
「それでは足りません。異界からではなく現世で現世に作用しているのでそれは実体を持った怪異、それこそ医院長達よりもより強力な妖怪としてあるのは間違いありません。」
「確かにカボチャ出したり傷を癒やしたりしてますもんね。お腹がすぐとは言ってますけど。」
「それが代償なのでしょう。代償なのでしょうが支払い規模がどこまでなのかがネックです。」
自死するほどの代償を支払う場面があるのか?それが問題と言えば問題で、仮にマリちゃんが考えなしに何かをした時に歯止めが無いとしたなら、完全に自分自身の肉体を全て使って何かを成すとも考えられる。しかし、逆を考えるならお菓子袋でも持たせて食べ続けながら異能を使えば、その能力の限界がないとも考えられる。
目の前には切り分けられたカボチャの断片があり、経過観察として冷蔵庫にも入れずに置いているが、それは腐る素振りも見せずに水々しくある。刻んで遠心分離器に入れる、各種試薬で測定する、顕微鏡で表面観察をする。その他、考えられる各種検査を行えば奇っ怪な結果も出てくる。
少なくとも人体に悪影響はない。大元は確かにバイオナノマシンであると結果は出ているのだが、どうも変質はしている様だ。そもそもこのカボチャは召喚獣と言うか、敵を害する為に本来は呼ぶもの。なら、その変質にも何かの意味があるのだろう。そもそも巫女とは使え話し広める者でもある。
仮にマリちゃんが古い時代にあの姿、能力で産まれ落ちていたなら、伝説的な何かとして伝承が残っていたかもしれない。いや、逆なのか?現代だからこそ現代式の考え方と異能が使えるとも取れるが・・・。
「取り敢えず、栄養剤とか食べ物は多めに持っておかないといけないなですかね?」
「それもですが、バイオナノマシン濃縮液も作っておいて下さい。現時点までの結果として、マリちゃんが何かしらの魔法やスキルを使う時はナノマシンを介して使われています。なら、食べ物だけではなく、その根幹となるナノマシンも準備しておきましょう。」
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「周囲はどんな感じですかね?」
「マップ見た感じ森っぽい所に配置されたみたいやな。斥候出して周囲の領地炙り出すんと、早めに倉庫探して物資確保が目標やな。誰か行きたい奴おる?」
「なら僕行きますよ。1番レベル低いですし、見つかっても見逃していいと思われるかもしれませんから。」
「なら篝火さん頼むわ。取り敢えず兵士は3ユニット付けるとして、飛行ユニットは温存しつつ様子見から行こか。」
「サクラも行ってこい。それと篝火、見つけても手出しするなよ?発信機代わりのピンだけ撃ち込めば相手の領地も見えるからな。ワシは取り敢えず領地隠蔽用に葦束焼くか。いきなり交戦は面倒だろ?」
「フロムさん頼んます。バンバン焼いてええよ、どうせ後半は交戦ばかりやし最初は楽させてもらおか。ツキさんはどないする?」
「フロムさんが残るならリスクあるけど、飛行ユニット使って上空偵察と行こうかな?ここだと索敵能力は低いけど範囲は広いし。妖精王は領地防衛よろしくね〜。」
領地防衛戦が開始されて領地がマップに転送された。場所的には森の中で当たりと言えば当たりかな?広い広いマップは山あり谷あり平原に川に岩場とランダム転送されて、その地形に沿った行動が求められる。まぁ、あんまりだと思えば領地移動を選択するんだけど、移動すると30分はマップに強制表示されるから初手で選ぶ人は少ないかな?
今回は森と言う事で篝火さんみたいな徒歩での斥候が有効な反面、相手が見つけられず逆に見つけられて尾行やら発信機付けられると一気に襲撃されやすくなる。
逆に俺が言った飛行ユニットを使った索敵は森だから斥候を見つけにくい反面、索敵範囲が徒歩よりも広いうえに地上からの発信機取り付けは受け付けないので、そこそこ有効的なんだけどそのままドッグファイトになる可能性も・・・。
なんにしても目視で領地が暴かれれば周りも反応するし、交戦状態に入れば横槍やら漁夫の利やらを狙う所も出てくる。味方以外は全て敵で投降は内から、どちらかが潰れるまでやり合うしかないのよね・・・。
「さよか、なら単騎でええ?」
「いいですよ。数が多いとバレますからねぇ。では行ってきまーす。」
飛行ユニットに飛び乗って空へ。部隊引き連れてないから身軽でいいな。見つかれば銃弾やらビームやらミサイルが飛び交ってゆっくりと空から索敵する事なんて出来ないしね。ただ、あんまり高度を上げすぎると索敵能力は更に落ちるし、逆に低すぎると撃ち落とされる。
何より気を付けないといけないのは、気持ちいいからとガンガン飛んでいくことかな?ソナーのピコーンピコーンと言う音を何回か聞いてからゆっくり進まないと、いきなり目の前に敵が現れたりもする。基本的に交戦状態以外のユニットは目視や索敵でしか見つけられないけど、隠蔽用の葦束使ってると索敵成功度を下げられるのよね・・・。
『ツキさんツキさん、倉庫見つけたら先に教えてな。敵領地よりも先に大勢整えときたいねん。』
『いいですよ〜、優先する物資ってあります?』
『農民一揆やで?根こそぎ何でも貰うに決まってるやん。』
『おー、山賊山賊。領地からあんまり離れても運搬が難しくなりますし、今だと葦束使ってない領地も含めてピン立てしていきますね〜。』
隠蔽されてないプレーヤー領地はあまり美味しくはないものの、参加だけして放置されているとも取れる。なので、ある程度は安全に物資強奪が出来るから積極的に潰しに行く。
そんな事を考えながら領地周辺を索敵していると、領地が何個かあったのでピンを立てて情報共有しつつ、そのうちの1つに目星を付けて近くに降り立って徒歩で観察してみるけど、やっぱり参加だけ領地かな?
プレーヤーがいればそこそこ動きはあるんだけど、領地を守る様にユニット配置もされていなければ大砲やらバリスタが稼働している感じもない。1人参加でプレーヤーを誘い込んで決闘狙いとも考えられるけど、それにしては領地そのものが若い気もする。
『秋ドンさん、参加だけ領地っぽいのの近くにいて観察してますけど襲撃します?』
『倉庫とちゃうんやろ?今は辞めとこか。負けるとは思わへんけど、塩っぱい報酬の為に決闘しても損やし潰すなら兵士出した方が早いやろ。』
『了解で〜す。そこそこ偵察しましたけど私の方では倉庫は見当たらなかったですね。やっぱり徒歩の方がいいかなぁ・・・。』
『ツキさんは上空偵察でええよ。さっきサクラさんから倉庫見つけたって話来たさかい、そっちに一部の兵士ユニットを出して物資確保しとる。その間、どうしても見つかりやすくなるから頼むわ。』




