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4話 爆発炎上

「お疲れ様です川端部長、納期に間に合って本当に良かた。ありがとうございます、これはつまらない物ですがどうぞ。」


 コンビニで買い込んだどら焼きと缶コーヒーを手渡しながら労いの言葉をかける。仕様変更して間に合う間に合わないの瀬戸際だったが、問題が発生しなかったのが最大のご褒美だな。


 これでシステムやポッドに問題が発生していれば、間違いなく納期には間に合わずクライアントに頭を下げる事になる。別に俺の頭に価値はないから下げて済むならいくらでも下げるけど、それで料金を値切られたり次の仕事が回って来なかったら目も当てられない。


「そう言う契約だからな。既にバイオナノマシンは外付けタンクの中に満たしてあるし、あちらから送られてきた動物実験のデータも入ってる。そして、これが制御デバイスだ。」


「これが・・・、思ったよりも小さいですね。」


 タンクの中のライトグリーンの溶液には目に見えないものの大量のバイオナノマシンが入り、それを制御するデバイスを渡されたが大きさ的には3cm大のボタン電池ぐらい。基本的にはポッドに入りこのデバイスを胸に貼るか置くかすればいい。


 そうすれば後はナノマシンがデバイスを体内に沈めていき、心臓の鼓動による運動エネルギーを使い半永久的に稼働してくれる。再度このポッドに入る時があるとするなら、それはナノマシンのデータを弄るくらいだろう。


 フラットな状態の今は外傷的なモノを内外問わず身体データを元に治療する様にプログラムされているらしい。そして、その外傷は先天的な欠損も外傷とみなし治療してくれる。タンパク質、されどタンパク質。人の身体が細胞の集合体とするなら、その一部がタンパク質で作られたバイオナノマシンに置き換わっても問題ないのか?


「そう言う仕様書で送られてきて作った。実際これも外角はセルロースで出来ていて必要なのは中身のバイオナノマシン。高分子電子顕微鏡やマニピュレータとのにらめっこは当分御免被ってナノサイズからせめてセンチサイズの物を依頼して欲しいよ雁木君。」


「いやぁ〜、これが期待通りの働きをするなら更に受注がありますよ。それに再生医療だけじゃなくで美容医療からもお声がけがあったとかなかったとか・・・。」


「あったんだろう?美と健康は切っても切り離せない。ナノマシンによるアンチエイジングはどこでもやっているし、これを使えば永遠の若さなんかにも手が届きそうだ。まぁ、あくまで外側のと付くがね。」


「内面は心の美しさですからね川端部長。」


「綺麗事だな。内側もナノマシンによる全身クリーニングだろう?昔は人間ドックなんて言葉があったが、今は文字通りドックに収まれば次の日には綺麗な身体でいられる。そして、そのドックに入るのも面倒になってこう言った物に作る。」


「まぁ、確かにですね。」


 ナノマシンによる治療は何も投薬だけじゃない。元がタンパク質なのでそれを利用して病巣があれば病巣を自壊させつつナノマシンがその部分を補填して入れ替わる。そして肉体が自己治癒すれば剥がれ落ちて排泄される。流石に脳への治療は難しいものの緊急時には認可される。


 最新の医学誌では野球ボール大の脳腫瘍でさえ半日で治したと言うのだから、そのうち一般化もしてくるのだろうし、今扱っている新型バイオナノマシンはこのデバイスで半永久的に治療をしてくれるので、うまく行けば再生医療や投薬治療ともおさらば出来る。


 まぁ、そんな新型バイオナノマシンだからこそ若くありたいと願う女性からは早く完成させろと言う声が大きいし、これを開発したチームの人間には女性が多い。クライアントなので一度顔合わせしたが、お肌の曲がり角に立つ様な歳ではないと思ったが・・・。


「さてと、デバイスを返してくれ。納品には私も立ち会うが君はポッド本体の乗るトラックに乗って欲しい。何もないとは思うがこのトラックの荷台は特注品で精密機器輸送用に頑丈に作ってあるから移送でポッドが壊れる事はないと思うが、あちらで調整が必要かもしれないので納品先で対応出来る様に工具を載せた別のトラックで私は部下と行くよ。」


「分かりました。自動運転ですけどご安全に。」


「あぁ、ご安全に。」


 中型トラックの運転席に乗り込むが目的地を言えば自動運転で勝手に走り出す。本当はこうして運転席に座る必要もないのだろうが法律上、自動運転でも運転席に運転手を乗せる事となっている。だから未だに車の免許は無くならない。しかし、いくら免許があってもいつ運転したかなんて覚えている人はほぼいないだろう。


 かく言う俺も教習所で運転して以来ハンドルは握っても操作する事はない。寧ろその教習所でさえ卒業する時には『趣味で運転する人もいると思いますが、そうではなく自動運転を使うなら手は膝に置いておく事。車種によってはハンドルが旋回する物もあるので邪魔にならない様にして下さい。』と言う始末だ。


 まぁ、自動運転システムが故障すれば自分で運転しなければならないので、たまには運転した方がいいのだろうがわざわざレンタカーを借りてまで運転するかと聞かれると迷う。それに・・・。


「大半の人が運転じゃなくて別の仕事をしてるしなぁ〜・・・。」


 隣の車を見れば運転席に座りつつもスマホを操作しながらたまに首を動かして口を開く。多分ネットにダイブして資料整理と音声打ち合わせでもしているのだろう。今の時代運転席はデスクと変わらず仕事空間だ。それでも事故リスクがあるので俺はもっぱらバスを使うし、会社としても公共交通機関を使う事を推奨している。誰も加害者なんぞになりとうない。


 前を走る小型タンクローリーと一定の距離を保ちこのトラックも進むが暇だな。目的地までは高速を使っても片道2時間半、既に1時間半ほどボケ~っと運転席座っているが、やる事と言えば精々ARで並走するツキを見るくらい。川端さん達は何台か後ろを走って来ているし、パーキングエリアに入る時は指示をくれるとも言っていたが、多少の雑談はするもののこの感じだとパーキングエリアには寄らないのだろう。


「自動運転システム停止、手動運転を開始してください。You have control.自動運転システム停止・・・。」


「えっ・・・、えぇ!?ちょっ!」


 高速の降り口でこれから減速と言う時に突然自動運転システムが警告音出して止まった!? なんだなんだ!最近よくあってた停電の影響か!?自動運転システムはGPSと電子マップの複合で動いてるから、停電すると電子マップデータが送受信されなくて使えなくなる。


 慌ててハンドルを握りゆっくりとブレーキング。目の前を走る小型タンクローリーも減速しているしこのまま流れに乗れば大丈夫か?手動運転なんて本当に久々だぞ!


「雁木君大丈夫か!?」


「なんとか運転してます。久々の手動運転ですよ・・・。もう直ぐ料金所なので止まって精算しますね。」


 高速と言うものにはETCやら料金所がある。そして停電したならETCは使えず手動で支払う事になる。まぁ、普段から自動運転を使い車の中でもイヤホンして音声会議してる様なら、止まった車に突っ込んで来るよなぁ!?


 俺はブレーキを掛けて止まった。小型タンクローリーも俺の前で止まっている。しかし、この車の後方車は警告もブレーキも踏む気はなく突っ込んで来たのだろう・・・。身体を押し出される様な衝撃を受けて首が痛み、前の小型タンクローリーに突っ込みながらエアバッグが作動して顔を覆われ息が出来ない。一瞬の静寂は永遠を思わせ微かに鼻腔に香る臭いはガソリ・・・。



________________________

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄



「雁木君は無事な様だ・・・、が!」


「前の方で事故って、爆発した!?えっ!部長・・・、アレって雁木さんじゃないですよね?」


「雁木君!雁木君!聞こえてるなら連絡・・・。」


「熱い!熱い!!俺の両足が!腕が!身体が!燃えてる!!」


「深く息をするな!気道熱傷で窒息死するぞ!直ぐに外に出ろ!」


 雁木君との付き合いは割と長い。彼が新人の時に前の担当者に連れられて来てからだから大体8年くらいか?変に高圧的な所もなく仕事のパートナーとしても気遣いが出来、互いの利益を考えて動いてくれるから私としても付き合いやすい。確かに今回の様な無茶を言ってくる事もあるが、それは何処の現場でも下請けでも似た様なモノだろう。


 そんな雁木君が今焼かれている。急いで駆け付けて見ればトラックの荷台は無事だが突っ込んだ車のボンネットはひしゃげ運転手は額から血を流すに留まる。こちらはいい。料金所横のセンターから担架を持った人が出てきている。それよりも運転席だ!タンクローリーの自動消火システムが作動し既に炎は消え始めているが、雁木君が出て来た様な姿は見えない!


「雁木君!来たぞ!まだ中か!」


「・・・、・・・、・・・あぁ・・・。」


「っ!!」


 ギィと言う音共に半開きの運転席からドサリと黒い何かが力なく落ちる・・・。多分シートベルトが焼き切れて支えがなくなって落ちたのだろう・・・。その席に座っていたのは間違いなく雁木君だ・・・。事故のせいか両膝から下はなく皮膚は黒く焦げ顔の一部しか判別もつかない。


「雁木君!」


 急いで駆け寄って見るが胸は動いている!腕と言っていたが両手の指はなく爆発で全身を熱せられたせいか、身体が丸々様に縮こまっているが、そのなくなった手で顔を覆ったおかげか口元と目元は比較的火傷が軽い。そんな中で宙を掴む様に腕がり私の肩に落ちる。


「・・・、み・・・、ず・・・。」


「頑張れ!まだ助かるぞ!」


「部長!」


「また息がある!荷台を開けろ!」


「分かりました!」


 幸いウイング式の荷台はせい手動で正常に開いた。中には医療ポッドがある!これを使えばどうにか助かるかもしれない!寧ろ助からないなら私たちは一体何を作ってきたと言うんだ!日々技術は進化し骨折だろうと癌だろうと免疫不全だろう治せる様にしてきたのだろう!?


「そこの貴方!今レスキューチームが向かってます!危ないから離れて!」


「それじゃ間に合わん!私達は医療ポッドを扱ってる者でこのトラックの荷台には最新の医療ポッドがある!」


「それは!私達に出来る事は!?」


「出来る事・・・、電気!発電機でも何でもいいから電力を!それと、私はこれからポッドの準備に入るからこの人を荷台まで運んで欲しい!」


 既に荷台のウインクは開かれている。爆発のせいか野次馬はおらず直ぐに準備に取り掛かれるが荷台の中は大丈夫か?先に準備する様に言ったが、爆発の衝撃や追突の衝撃もある。


「準備は!?」


「システム立ち上げ中です!ただ雁木さんの生体データなんてありませんよ!」


「それは問い合わせる。」


 会社になら生体データがあるだろう。健康診断のデータでも個人に宛てられたデータでも。それを使えば元の姿に治せるはずだ。寧ろそれが雁木君の設計図として機能する。最初から欠損しているなら数値計測をしてからとなるが、雁木君は健常者として生活してきているのだし。


「もしもし!柳田君か!」


『もしもし?川端部長ですか?どうされました?もうクライアントの東亜メディカル技研に到着している頃だと思いますけど。』


「それどころじゃない!雁木君が事故に合って大変だ!今から医療ポッドと新型バイオナノマシンを使うから生体データを!」


『えぇっ!医療ポッドは・・・、前に被検体同意書を書いてもらったので大丈夫だと思います。使用の件は私の方からクライアントに連絡しておきますが生体データは停電で時間が・・・、いや!この前健康診断を受けてそのデータをスマホとスマートレンズに保存しているはずです!』


「スマートレンズ・・・、わかった試してみる。しかし大丈夫かわからないから生体データの入手も大至急頼む!」


 通信を切って部下の八幡を見る。スマートレンズと言う言葉が聞こえたのかそちらから引き出せる様に調整している。しかし、パスワードはどうだ?スマホにしろスマートレンズにしろ個人がパスワードを掛ける。あの状態で話せるか?いや、生体認証されているならまだ目はある!


「どうだ?」


「予備バッテリー残量が少ないです!ギリギリまで充電してましたけど本来なら搬入後にフル充電する予定でしたし・・・。」


「それは・・・。いや、ないものは仕方ない。一応発電機は手配した。多分小型発電機だろうがないよりはマシだ。システムは?」


「中身は多分大丈夫です。でも動作確認までは・・・。」


「最悪スキャンシステムとナノマシンが漏れてなければ大丈夫だろう。」


「連れてきました!」


「発電機はここでいいですか!動かして接続します!」


「彼をポッドの中へ。発電機はそこに接続して下さい。」


 担架で運ばれて来た雁木君は知っている雁木君より遥かに小さい・・・。それは両足をなくし両手も焼かれ、縮こまる姿勢のせいもあるだろう。彼が生きているというのは漏れ出る荒い呼吸音声くらいでしか分からない。


 そんな雁木君をポッドの中に横たえて制御デバイスを胸に置き蓋を閉め、八幡に頷いて合図を送りポッドを起動すればナノマシンの注入音が聞こえてくる。先ほどからピーピーと連絡が来ているが知らないアドレスだ・・・。今はそんなモノに構っている暇はない。


『全身スキャンを開始します。・・・、・・・、重篤な症状を多数確認。症状はログを確認して下さい。バイタルの低下を確認。医師による判断をして下さい。生体データが見つかりません。欠損部分を再生するならデータの入力を行って下さい。』


「医師による認証システム・・・。八幡、解除は?」


「無理です。今は東亜メディカル技研の三枝研究医しか登録してませんが、彼女の認可なしでは・・・。」


「分かった、先ずは出来る事をしよう。生体データについては患者のスマートレンズを参照。」


『指示を確認。・・・、・・・、・・・、・・・、生体データと命名されたフォルダを確認。内容を参照・・・、不明な部分を検出・・・、不明な部分を検出・・・、不明な部分を検出・・・、不明な部分・・・。』


「部長・・・。」


「まさかシステムエラーか?と、さっきから誰だ!もしもし?」


『もしもし?ようやく繋がった、東亜メディカル技研の三枝です。事故で医療ポッドを使用すると柳田さんから言われ、医師認証の事でお電話したのですが。』


「おぉ!今ポッドに事故被害者を入れて治療指示をしている所です。バイタル低下と出ていますが、その先の治療に移るには登録医師の認証が必要でして。」


『分かりました。現状、患者の状態は?』


「症状のログを視覚共有する。このままで大丈夫か?」


『ええ・・・、これは酷い。レスキュー隊は?』


「まだ来てません。」


 スマートレンズを視覚共有し、見たものをそのまま相手に表示させるがスキャンデータは酷い物だ。両足欠損、胸骨骨折に右肩脱臼及び両手首脱臼及び両手指全欠損。更に火傷は全身におよび軽くて2度、深ければ3度。3度の火傷と言えば皮膚の再生は期待出来ず移植が必要になる。


 それがほぼ全身レベルで酷いのは背面や尻だ。座席が焼けシートが燃え、それに炙られて火傷を深刻化させたのだろう。ショック状態になって気絶しなかったのが功を奏したから出て来れたが、気絶していたならそのまま死んでいた。しかし、それは現在進行系で死にかけていると言える。


『分かりました、一刻を争うので治療実行認証コードを送ります。その後は生体データが使えると思うのでポッドはそのまま起動させて速やかに私の所へ。被検体契約も結ばれてるのでバイオナノマシンの使用を許可します。』


 届いた認証コードをポッドに読ませるとエラーが止んだ。多分医師による認証がなされたからだろう。予断は許さないが多分これで助かると思いたい。しかし、さっきのエラーは何だ?流石に足や指が無ければ不明な部分とはじき出すのか?生体データはスマートレンズにあるはずだが・・・、爆発の衝撃で破損した?


「レスキュー隊です、状況は?」


「今しがた医師による認証を受けて医療ポッドが動き出しました。運ぶ先は東亜メディカル技研でお願いします。そこの三枝医師しか今の所登録されてませんから。」


「分かりました、このままそこへ運びます。」


 荷台をそのまま運ぶ事は出来ないが幸いにして私達は作業用トラックで来ている。すぐに八幡に指示して牽引ロープを持ってこさてレスキュー車と繋ぎ出発する。発電機は借りたままだが後から返せばいい。今は電力が失われる方が怖い。


 救急車に牽引された荷台とポッドを監視する私はそのまま進み、八幡はトラックを運転して東亜メディカル技研へ。医療ポッドはプライバシー保護の為に外から中は見えず、ログだけが治療の進み具合を知らせてくる。読み取れば雁木君は死んでいない。バイタルは安定し満たされたナノマシンにより荒いが呼吸もで来ている様だ。


 牽引されて東亜メディカル技研に到着したのか荷台の扉が開かれる。そこから降りると医療チームが待っていた。その先頭に立つ若い女医の名札には『三枝』と書かれている。良かった、これで取り敢えず安心出来る。今更ながらに震える手で手摺りを握りながら降りる。まだ私の仕事は終わりじゃない。


「荷台からポッドは降ろせますか?」


「不可能ではないでが電力確保は?」


「停電は復旧して確保出来ますが、再接続時にエラーが出る可能性は?」


「大丈夫です。再接続段階で進行中のシーケンスが停止する事はない。」


「分かりました、ポッドと彼はこちらで引き取ります。技術者として八幡さんをお借りしますね。」


「いや、私が・・・。」


「失礼ですが川端さんにはカウンセリングを受けて頂きます。眼の前で知人が焼かれ、それを助ける為に行動したのは称賛出来ますが、貴方もまた心的外傷を負っている可能性があります。」


「ですが・・・。」


「川端さん、服と臭い。分かりますか?」


 そこではたと気づく。服は汚れ臭いは・・・。酷い死臭が・・・、火葬場で嗅いだ臭いがする。鼻にまとわりつき胃がムカつきすぐにでも吐き出してしまいたい。これは間違いな雁木君が焼かれた臭いだ。興奮状態だったのが指摘されて一気に頭が冷える。


「わ、私は・・・。」


「川端さんは懸命に出来る事をされました。だからこそ、雁木さんは生きてここまでたどり着いた。医者の私が言うのもおかしいですが、若ければレスキュー隊に推薦したい程ですよ。では、私は八幡さんと共に雁木さんの治療へ向かいます他のチームのみんなはポッド運搬後、川端さんのカウンセリングや雁木さんの会社とのやり取りをお願いします。」



________________________

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄



 人の生命力はどれだけ強いのだろう?医療技術は発展し薬学もそれに呼応する様に発展し、大凡人の病気と言う物は治療出来る様になった。それこそ過去には不治の病とされたHIVも癌もマラリアやデング熱と言った風土病も遺伝子疾患さえも治癒出来る。


 それはすべてナノマシンと言う、技術の粋を集めた小さな目に見えない医者が治療をするからだ。人の医者の仕事と言えば大半は問診とカウンセリングそれに技術開発と言う中で、これほど酷い患者のデータを前にしても心は動かない。いや、医者と言う生物は元から変人しか成れないのだろう。


 死ぬかもしれない相手に対して絶対ではない方法を試す。内科や皮膚科、耳鼻咽喉科は診察し薬を処方して効果がなくともいきなり死ぬ事はない。それに高かろうがナノマシンを使えば完治する。しかし外科医や脳神経外科医は事前に何度もチェックするとは言え人を切り刻んでから仕事をする。


 その過程で数ミリでも手元が狂えば人は死ぬか、或いは何かしらの障害を持つ様になる。それを改善する為に新型バイオナノマシンを作り、欠損部位や切れた神経を繋げ再生医療に新たな変革をもたらそうとした。


 既に事故等で怪我をした動物を使った験は終了し、残るは人体での治験となっていたが、こうも早く試す機会が来ようとは・・・。不謹慎だと言う事は重々承知していたとしても心が踊る!ポッドの運搬は完了してチームのみんなは所定の行動へ。残るは私と電気系統技術者と連れてきた八幡さんのみ。さてと。


「八幡さん、先にログを見せてもらえますか?これからの方針を考えたいと思います。」


「医療ポッドに向かって話してもらえれば音声認証でモニターに表示してくれます。僕はこれから接続作業に入りますが、この部屋でいいんですよね?」


「ええ。ナノマシンもポッドも試作機だから一般向け病棟に置けませんから。本来ならここで少しづつ試して行って、結果が良ければ来年を目処に一般公開する予定だったんですよ。」


「ポッドそのものの設計データはウチにあるので、一般化したらご贔屓に。そうしたら雁木さんも喜ぶと思います。」


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