183話 年末配信前 挿絵あり
「ありがとうございました。」
「いえいえ。では、お願いします。」
ガガガ・・・。耳に残った音はその音で、マシンガンの弾丸が頭に吸い込まれる。はい、イベント当日だから5回目の死を迎えてるよ!誰も彼もがブレンドリーファイア対策で闘技場で死にまくってる中、俺もどうにか5回目の死を迎えられました。
いや〜・・・。普通金払って命を助けてくれなら分かるんだけど、今は金払うから殺してくれなのよね・・・。あえてフィールドに出てアサシンプレーヤー釣ろうとする人もいるし、仲間内で斬新大会やるところもあるんだけど、野良だからこの方法が1番手っ取り早い。
まぁ、それでも中々マッチングしないから、募集要項に検証手伝いとかコンボ手伝いなんかを載せて、殺してくれる人を釣る。普通にPvPしろって?時間制限付くと引き分けもあるし、互いに死ぬことが狙いなら、どうぞどうぞとスッピンで譲り合って時間を食うんだよ!
「あ〜・・・、5回死に完了!コレでイベントでアサシンサされない!」
「ツキよ。普通にアサシンに狩ってもらっても、よかったのではないか?」
「いやね。アサシンなりの美学なのか、獲物としてプレーヤー狩るのは良くても、さも殺してくれって自殺匂わせるプレーヤーは嫌うのよ。なにせ、しょっぱな一撃で終わる相手とか作業だし。」
それに付け加え、ナインテール外してもどう言うわけか尻尾が10本にゲーム内でもなってるから、下手に一撃で死ぬと不審がられるのよね・・・。う〜ん・・・、装備してる時はちゃんと千切れ飛ぶ演出出るんだけど、それでも尻尾ある感覚はあるんだよなぁ〜・・・。
まぁ、身体スキャンでそうなったから、ゲームとしては尻尾も耳も本人の体として認識されてるんだろうけどさ。新しくアバター作成でもしてみれば、尻尾10本アバターが作れるかは分かるかも知れないけど、今更そんなことしても意味はない。
「相変わらず稀人は難儀なものだな。」
「いやいや、次はブライトの番よ?」
「我は死にたくないのだが?」
「でも連れて歩くなら、死んだらどうなるか検証はいるんだよ。そこんとこ、どうなるか教えてくれる?」
領地防衛戦で死んだら幽霊になって領地にいた。なら、普通の戦闘で死んだらどうなるのか?ロボなら全損すれば領地に帰る。帰還指示でも帰る。帰ったら修理してまた出撃出来る。
それがメインコア使ったらどうなるのか?流石にそこは怖くて試せてないのよね。コアぶっ壊れてロボに戻っても事だし、修理=療養ならまだいいけど、それの回復時間どうなる?なんて問題もある。
魔法やらにクールタイムはないし、1日1回限定のアーツやら魔法もない。1日と言う時間を捧げるからロマン見せろなんて話は、既に大魔法の詠唱と舞の組み合わせとか、アーツなら特定のアーツを呼吸法やら歩法使いながら全部繋げろとかになってくるのよねぇ・・・。
「むむむ・・・。」
「雑に死ぬ?今から私が首切ってもいいけど。」
「やめぬか!いや、闘技場でも死にたくはないのだが・・・。少し考える。」
「あいあい。適当に座ってジュースでも飲んできますね〜。」
考えるってことは、システムにアクセスしてる?う〜ん、どうなんだろう?1番ありそうな質問なんだけどなぁ・・・。闘技場で適当な席にブライトと座って注文したライチジュースをゴクリ。爽やかな甘みとライチの果肉の白さが炭酸ジュースの中で舞って花吹雪のようだ。
「死んだらどうなるか、だったな。」
「そう。今日の18時からイベント始まるし終了は1/2。交換期限は1/3日まで。グローバル時間採用なら邪神は出続けるか、居座り続けるんだろうけど、そうなるとどこかに制限は入ると思う。つまり、離脱されると痛い。」
全世界展開してるもんだから、オープンフィールドでイベントやるなら時間的な制限は入る。例えば1日何体までとか。サーバー分けなんてないもんだから、下手に出現を止めると海外勢は狩れなくなるのよね。
それに医療提携型と言うこともあって、睡眠時間は8時間が推奨されてるし、そのあたりをAIが連携して連続ログインし続けるとドロップ率が極端に落ちるなんて噂も・・・。
「我は今のところ稀人に近くなった。」
「稀人に近くなった?それってつまり死んでも復活するし、フレンドリーファイアも避けられると?」
「違う。半減しているだけだ。1日の内、一度だけモンスターから殺されても死の悪夢から目覚め、その場で立ち上がり再戦する。稀人からの攻撃も半減はするがダメージはもらう。それでも死んだら領地で5時間ほど寝込む。」
「ふむ。落としどころはそこにしたのか。」
要はナイトメアキャッチャー標準装備な代わりにフレンドリーファイア自体は受ける。と、言うかプレーヤーからの攻撃は全て半減でダメージが入る。
確かにブライトがフレンドリーファイア不可やらアサシンに倒されないとなると、置き逃げがいくらでもできるようになるんだよなぁ。その代わりプレーヤー操作じゃないから壁としては使えるようにHPが8倍くらいあると・・・。
「・・・、攻撃半減って稀人からだけ?」
「当たり前だ。我は外から来たものではない。」
「あ〜・・・、了解。対人では高性能な壁で、モンスター戦では一緒に戦ってくれるお助けキャラ的な位置づけね。確かにロボを落とし込むとそうなるのか。」
「ロボは知らぬ。我はブライトだ。」
「そうそう、ブライトさんだよ。って、あっぶな。下手に首切ってたら寝込んでたじゃん!」
「だから、よさぬかと言った。」
「それは確かに。まぁ、イベント開始までもう少し時間あるからゆっくりしといてよ。私は一旦稀人郷へ帰るから。あっ!後で配信するからAR表示で神社に呼ぶからね?」
「桃をよこせ。」
「嫌!じゃ、そう言うこと・・・、でって言う前に。」
「なんだ?」
「神社に喋る雪だるまがあるけど、適当に話は合わせてね。」
「スノーマン?」
「いや、スノーガール?スノーウーマン?とにかく、男だと言うとブチ切れるかも。」
「まて!なんだその厄介な雪だるまは!名はないのか!」
「ない!だから雪だるまだよ!」
そう言い残してログアウト。下手に妖怪とか電気精神体とか言うと、それはなんだって騒ぐだろうし、AIマスコットにしても、変な言動をした時にどこのメーカー?と調べられても困る。だから、そういう者として扱ってもらった方が多分自然だろう。
「で、なんでまた華澄は来てるの?」
「クリスマスプレゼントを持ってきたの。遅れてしまったけどね。」
「いや、時間は問題じゃないし気持ちはうれしいよ。」
渡された大きめの紙袋をガサガサと開けてみると、黄色いモフモフした物が。なるほど、多分パジャマだ。通販で買ったりもしたけど、今の俺は圧倒的に服は足りないし、パジャマも下手したら患者依着て寝てたりもする。
「コレは・・・、犬!」
「狐よ?」
「・・・、狐娘に狐の着ぐるみパジャマってニッチ過ぎない?」
「逆に真利は犬になりたいの?飼うけど?」
「いや、それは勘弁願いたいかな?て、なんでそんなに期待した目を?」
「当然着るのを待ってるのよ?プレゼントしたんだから、私にはそれを見届ける義務がある!」
「いや、まぁ、着て見せるくらいいいんだけどさ。どうせ調整いるかとかも知りたいんでしょ?」
尻尾出し用の穴もあるし、フードの耳も立体的に作ってあって差し込めるようになっている。多分、既存のパジャマ買ってバラして縫い直したんだろうな、ありがたいことだ。
シャワー室に入ってガサゴソ着替えけど、サイズ的にも穴的にも耳的にも特に窮屈を感じることはない。相変わらず器用と言うかなんと言うか・・・。
「そう言えば座敷童子大先生の服は作らないのー?」
「嫌がるから作らないわよー。」
「好きそうなのにねー。」
「こけしスタイルがいい見たいよー。」
妖怪的なアイデンティティだろうか?確かに着物を脱がすと、座敷童子というよりもドール的ななにかに見えないこともない。そのあたりは本人の感覚だから俺からは何も言えないかな?
「ほい。どう?」
「・・・、持ち帰っていいのよね?」
「いや、駄目だと思うよ?」
「なんで!」
「一応、退院してないから?」
なにげに退院手続きはしてないし、雪女やら姫子さんがいるから病院を離れられない。それに何より、今は年末で帰れる患者さんは帰ってるし、それに合わせて病院にいる人自体が少ないのよね。
「退院したらいいじゃない。お酒も飲めるわよ?」
「それには惹かれるところがあるけど、姫子さんがなぁ〜。」
「それは木本さんに任せなさい。」
「いや。やった責任があるから駄目。それに、雪女の件も聞いたでしょ?」
「聞いたわよ?雪だるまになって奉公しに来たとか。」
「そうそう。いつもいるのかは知らないけど、最悪なにか説得してもらったり話をつけるなら、姫子さんがいる方がいいんじゃないかとね。」
同族だし話が通じそうではある。その代わり嫉妬の対象だからマウントを取りに来る可能性もある。まぁ、一応、巫女さんとか巫女殿と呼ばれてるから、ふざけ合うことはあっても、無茶はしないと信じたい。
「そう言えば、真利は岩戸 千穂って知ってる?」
「・・・、黙秘。」
「仕事関係で?」
「仕事関係で。辞職はするけどまだ籍は残ってるからね。だから、黙秘。」
「分かったわ。ただ、彼女、貴方のことを結構買ってたわよ?」
「そうなの?特別なことはしてないと思うけど・・・。てか、知ってるの?」
「仕事柄ね。」
「なるほど、仕事柄か。木本さんも岩戸さんのこと言ってたし、深くは突っ込まないよ。」
「そう?聞いてもいいのよ?」
「その罠には引っかからないよ。引っかかるときは、先を知りたいときだしね。さて、そろそろ面会時間終わるし、LIVE配信の準備始めるけどどうするの?」
「帰るわよ。帰って、真利のLIVE配信見ながら賽銭を投げる!」
「ほどほどにね?と、言っても上限越えれば打ち返されるけどさ。」
「毎日投げればよくない?いや、毎日LIVE配信してくれれば!」
「いや、それってもう。普通に電話してるのと変わらないから。」
「くっ!なら電話するからね!何時間でも、1日でも!その姿を愛でながらお喋りを!」
「残念、真利は撮影をしていた!」
「仕事中なら仕方ない。まぁ、適当な時に電話するわ。」
「あいあい。まぁ、外で撮影するならと言うか、黒服として配信にも出てるから、気が向いたらオブジェとして立っててもいいよ?」
「いやよ。無言の真利を眺めるなんて。イタズラしたくなるじゃない。」
「それはもう、妖怪なのでは?」
「違う!夫婦よ!夫の気を引こうとして何が悪い!その夫が可愛いのがいけない!可愛いのがいけない!!」
「はいはい。帰るときは気をつけるんだよ〜。」
拳を握りしめる華澄を送り出し、代わりに敷田さんが入ってくる。年末だし今日から時短勤務とかになるらしい。まぁ、医者が24時間体制で働いていたのは昔な話で、今なら呼び出しがなければ静かに休みは過ごせるし、医療ポッドのおかげで『私は専門じゃない』なんて言う屁理屈というか、専門じゃないから対応できないと言うのはかなり減ったしね。




